経理/簿記試験

意外と知られていない?簿記の工業簿記で出てくる伝統的原価計算とABCを解説

テーマ
伝統的原価計算とABC
監修
簿記マスター


みなさんは、伝統的原価計算、そしてABCというものを聞いたことはありますか?伝統的原価計算というのはあまり聞いたことがないかもしれません。簿記の工業簿記・原価計算を学んでいる方はある程度分かるかもしれません。では、ABCと聞くと…簿記を勉強していない方にはただのアルファベットの並び、と思われるかもしれません。ですが、これもれっきとした簿記の項目です。今回は、その伝統的原価計算とABCについて一緒に学んでいきましょう。

伝統的原価計算・ABCとは?

では、まず伝統的原価計算について学びましょう。すでに工業簿記を学んでいる方にはおなじみですが、商品を製造する際にかかる製造間接費、というものの配賦(はいふ)方法ですね。まだ学んでない方のために、一度おさらいしましょう。

そもそも、商品を製造する際には、様々な要因のコストが発生しています。材料費、電気代、給料…これらをまずは、商品に直接関係している直接費と、間接に関係している製造間接費というものに分類します。

直接費というのは、材料費、製造にかかわる人員の賃金などです。製造間接費は、それら直接費以外のこまごましたものです。たとえば水道光熱費、物件の賃借料、減価償却費や修繕費などと様々です。出来上がった製品の原価を計算するためには、これらの製造間接費も製品に配分しなければなりません。その配分方法は2種類あり、それが伝統的原価計算とABCです。

伝統的原価計算とは?

次に、伝統的原価計算とABCの違いについてです。

伝統的原価計算は、掛かったすべての製造間接費を同一の指標で計算しています。例えば、その製品の製造にかかった時間で割り振っていきます。ですが、この伝統的原価計算には問題がありました。製造間接費はこまごましていますので、それらの製造間接費は製品と直接に関係のないものも混入してしまっている可能性があります。これでは、正確な製造原価の算定ができなくなってしまいます。少数の種類の製造を行う場合は、直接費の割合が高くなる傾向にあるため、伝統的原価計算を採用してもさほど問題はありません。しかし、多数の品種を生産している場合、伝統的原価計算では正確な計算ができません。

そこで、生まれたのがABCです。

ABCとは?

ABCはActivity-Based Costingの略です。日本語に直すと活動基準原価計算です。これは、発生した製造間接費を、それら個別に見合った基準で配賦をします。計算は伝統的原価計算よりも大変ですが、より正確な計算が可能となりました。計算の方法としては、まずは発生した製造間接費をコスト・プールという場所にそれぞれ種類で分け、それに応じた基準で各製品に割り当てていきます。

また、このABC(活動基準原価計算)を用いて、コスト管理の視点から活動を管理するABM(Activity Based Management:活動基準管理)という経営手法もあります。

では次に、実際に問題を見て身に着けていきましょう。

▼『工業簿記で覚えるべき仕訳と要点』は、別の記事にまとめました

伝統的原価計算とABCを解いてみよう

最後に、問題を解いてみましょう。初めての方は、まずは解答を見ながら一緒に解いてみましょう。

例題①

ZX株式会社は、AA製品とBB製品を製造・販売している。各製品のデータは以下の通りである。また、期首における在庫は存在しない。

【基本データ】

AA製品 BB製品
販売単価 4,000円 6,000円
直接材料費単価 400円 700円
直接労務費単価 300円 700円
当期製造数量 500個 450個
期末在庫数量 25個 10個

【製造間接費データ】

活動ドライバー 金額
製品設計 製造指図書発行枚数 600,000円
段取費 段取替えの回数 120,000円
出荷 出荷回数 280,000円
雑費 部品発注回数 300,000円

【製造データ】

AA製品 BB製品
製品指図書発行枚数 7枚 13枚
段取替え回数 4回 6回
出荷回数 7回 7回
部品発注回数 2回 4回
直接作業時間 1個当たり2時間 1個当たり5時間

以上のデータを踏まえ、伝統的原価計算を採用した場合の各製品の売上総利益と、ABCを採用した場合の売上総利益を計算しなさい。伝統的原価計算を採用した場合、直接作業時間を基準として配分すること。また、端数が出た場合は、最終的な売上総利益の段階で四捨五入をすること。

解答・解説

伝統的原価計算を採用した場合の売上総利益

AA製品 BB製品
1,187,500円 1,144,000円

では、解説に移ります。この問題のメインは製造間接費の分配なので、まずは製造間接費から解きましょう。

まずは、伝統的原価計算です。今回は直接作業時間を基準として分配する指示がありますので、最初に各製品の直接作業時間を計算しましょう。

  • AA製品 2時間×当期製造数量500個=1,000時間
  • BB製品 5時間×当期製造数量450個=2,250時間

製造間接費を時間で割り、時間単価を算定しましょう。

  • (製造間接費の合計600,000+120,000+280,000+300,000)÷(1,000+2,250)=400

そして、先ほど計算した各製品の直接作業時間に掛けて計算しましょう。

  • AA製品 400×1,000=400,000
  • BB製品 400×2,250=900,000

これで、製造間接費の計算ができました。これを使って売上総利益を算定します。

{(材料費単価+直接労務費単価)×当期製造数量+製造間接費}÷当期製造数量×(当期製造数量-期末在庫数量)=売上原価

売上単価×(当期製造数量-期末在庫数量)-売上原価=売上総利益

  • AA製品 {(400+300)×500+400,000}÷500×(500-25)=712,500
  • 4,000×(500-25)-712,500=1,187,500
  • BB製品 {(700+700)×450+900,000}÷450×(450-10)=1,496,000
  • 6,000×(450-10)-1,496,000=1,144,000

ABCを採用した場合の売上総利益

AA製品 BB製品
1,094,400円 1,239,822円

では次に、ABCです。

製造間接費データの表に、製造間接費の種類が載っています。また、真ん中の列に活動ドライバーとありますね。この指標と右列の金額を使っていきます。そして、その活動ドライバーの製品別の数値は下の製造データにあります。まずは、一番上の製品設計にかかわる製造間接費です。

金額÷(製造データの両製品の指数)×各製品の製造データの指数

・製品設計

  • AA製品 600,000÷(7+13)×7=210,000
  • BB製品 600,000÷(7+13)×13=390,000

・段取費

  • AA製品 120,000÷(4+6)×4=48,000
  • BB製品 120,000÷(4+6)×6=72,000

・出荷

  • AA製品 280,000÷(7+7)×7=140,000
  • BB製品 280,000÷(7+7)×7=140,000

・雑費

  • AA製品 300,000÷(2+4)×2=100,000
  • BB製品 300,000÷(2+4)×4=200,000

では、各製品で掛かった製造間接費の合計額を算定してみましょう。

  • AA製品 (210,000+48,000+140,000+100,000)=498,000
  • BB製品 (390,000+72,000+140,000+200,000)=802,000

この数字を使い、伝統的原価計算でも行った売上総利益の計算を行いましょう。

そうすると、解答が出てきます。伝統的原価計算とABCでは、金額がかなり違ってきますね。

 

いかがでしたでしょうか。この2つの計算方法の違い、そしてどのような特性があるのかを理解できましたでしょうか。基本的な原価計算の1つであるので、学習を積み重ねていきましょう。ぜひ、頑張って下さい。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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