経理/簿記試験

パソコンの勘定科目や仕訳はどうなる?金額で変わる点に注意!

テーマ
パソコンの勘定科目や仕訳
監修
簿記マスター

仕事をする上で必ずと言っていいほど使用するパソコンですが、金額によって、経費計上もしくは資産計上と会計処理に違いがあります。そして、資産計上する場合には、減価償却をしなければなりません。そのため、仕訳が複雑で苦手に感じている方もいるかと思います。ここでは、パソコンを購入した時の勘定科目と仕訳、減価償却についても詳しく説明します。

パソコンの勘定科目は取得金額で変わる

取得価格とは、パソコンの本体、メモリーの増設、キーボードやマウスなどの購入価格と送料などの付随費用との合計金額となり、その取得価格が10万円を境に勘定科目が変わります。パソコンの購入価格ではないところに注意が必要です。

消耗品費(取得価格が10万円未満)

勘定科目「消耗品費」とは、使用可能年数が1年未満(短期間で消耗する物)か、取得価格が10万円未満のものに使用する勘定科目です。そのため、取得価格が10万円未満のパソコンは「消耗品費」を使用します。損益計算書の「費用」勘定ですので、仕訳時は借方(左側)に記帳します。

工具器具備品(取得価格が10万円以上)

「工具器具備品」とは、取得価格が10万円以上の工具等について使用する勘定科目で、固定資産となります。貸借対照表の「資産」勘定ですので、仕訳時は借方に記帳します。

工具器具備品の具体例は以下のものです。

  • 取付工具、検査工具
  • 家具・家電
  • パソコン
  • 観賞用の植物 など

固定資産は、「減価償却」をする必要がありますが、これは次で詳しく説明します。

減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得費用を耐用年数(使用可能な期間)で割って、毎年経費計上することです。つまり、取得時は全額資産で計上していたものを、毎年、減価償却費の分だけ、費用に振り替えていきます。耐用年数とは、実際に使用する期間ではなく、省令で定められています。

国税庁のページに耐用年数表があります。ページの真ん中らへんの【参考1】を参照ください。

ここによるとパソコンの耐用年数は4年です。電子計算機 パーソナルコンピューター(サーバー用のものを除く。)と記載されています。つまり、パソコンは4年で減価償却していきます。

なぜ、このような面倒な処理が必要か、疑問に思われた方いると思います。

まず、会計処理には、「費用収益対応の原則」があり、原則、会計年度期間に発生する収益と費用とを対応させなければなりません。それは、取得した固定資産は、何年もの間、会社の収益を生み出してくれる設備です。しかし、取得年度に全額費用計上してしまうと、その次年度以降は、費用は発生しないのに、収益だけが発生してしまい、この原則からずれてしまいます。そのため、耐用年数で分割して費用(減価償却費)計上する必要があるのです。

さて、減価償却費額の算出方法はいくつかありますが、ここでは代表的な「定額法」と「定率法」の2種類を説明します。

定額法

定額法とは、減価償却費が毎年一定となる方法です。計算方法は、固定資産の取得価格を耐用年数で割ることで算出します。

例えば、200,000万円のパソコンを耐用年数4年間定額法で減価償却すると、減価償却費は、以下のとおりです。

200,000円÷4年=50,000円

ここで注意点があります。50,000円を4年間、費用計上すると最終的には資産が0円になります。しかし、資産自体がなくなるわけではなく、物はまだ残っています。そのため、固定資産台帳から消さないために、備忘価格として1円残し、4年目の減価償却費は49,999円となります。

定率法

定率法とは、取得価格や期末残高に一定の割合を掛けて減価償却費を算出する方法です。償却率の一覧は、上記の国税庁のNo.2100 減価償却のあらましの【参考2】を参照していください。

例えば、200,000万円のパソコンを耐用年数4年定率法(償却率0.5)で減価償却すると、減価償却費は、以下のとおりです。

 

1年目:200,000円×0.5=100,000円

取得価格に償却率と掛けます。

 

2年目:(200,000円-100,000円)×0.5=50,00円

取得価格から1年目の減価償却費を引いた額に償却率を掛けます

 

3年目:(200,000円-100,000円-50,000円)×0.5=25,000円

 

4年目:25,000円-1円(備忘価格)=24,999円

定額法と同じく最終年度は備忘価格として1円残します。

 

あと、減価償却の仕訳方法として、「直接法」と「間接法」があります。これは、後で仕訳を切りながら説明します。

10万円以上のパソコンの会計処理には例外がある

10万円以上のパソコンは固定資産となり、毎年減価償却が必要なのが原則ですが、それには例外があります。ここではその例外について説明します。

一括償却資産

「一括償却資産」とは、取得価格が10万円以上20万円未満の資産について、耐用年数で減価償却するのではなく、耐用年数に関係なく3年間で償却することを選択できる制度です。通常、固定資産については、固定資産税を払う必要がありますが、一括償却資産は、固定資産の申告から除外することができるため、固定資産税が少なくなります。

また、通常の減価償却費は、年度途中で取得した場合、月割計算をしますが、一括償却資産は月割をしません。

一括償却資産の一部を3年待たずに廃棄や売却する場合、通常ならば、1つずつ除却処理をしますが、一括償却資産は、個々の資産管理をしていませんので、除却の処理は行わず、3年かけて償却します。

この制度を選択するかどうかは、事前の申請等は不要で、1つの資産ごとに決めることができます。

少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例とは、取得金額が10万円以上30万円未満の固定資産を全額費用計上することができる制度で、年間300万円までの上限があります。

誰でも適用されるわけではなく、中小企業や個人事業主などの青色申告の場合に限られます。

令和4年度の税制改正により、適用期間が2年間延長され、令和6年3月31日までに取得したものが対象なりました。

実際に仕訳を確認しましょう

取得金額が10万円未満のパソコンを購入した場合

80,000円のパソコンを現金で購入しました。

借方科目 金額 貸方科目 金額
消耗品費 80,000 現金 80,000

10万円未満のパソコン購入時の勘定科目は、「消耗品費」を使用します。これは費用勘定なので、増えるときは借方に記帳します。相手勘定は、資産勘定である現金が減るため貸方に記帳します。

取得金額が10万円以上のパソコンを購入した場合

200,000円のパソコンを現金で購入しました。

借方科目 金額 貸方科目 金額
工具器具備品 200,000 現金 200,000

10万円以上のパソコン購入時の勘定科目は、「工具器具備品」を使用します。これは資産用勘定なので、増えるときは借方に記帳します。相手勘定は、資産勘定である現金が減るため貸方に記帳します。

決算時に減価償却費を計上しました。パソコンの耐用年数は4年です。減価償却費の算出方法は定額法とする。(仕訳方法:直接法)

借方科目 金額 貸方科目 金額
減価償却費 50,000 工具器具備品 50,000

減価償却費は200,000円÷4年=50,000円となります。この場合の勘定科目は、「減価償却費」を使用します。これは費用勘定なので、増えるときは借方に記帳します。相手勘定は、工具器具備品を直接減らすため、「工具器具備品」が貸方に計上されます。2年目以降も同様の処理を行いますが、最終年度の4年目の金額49,999円になります。

決算時に減価償却費を計上しました。パソコンの耐用年数は4年です。減価償却費の算出方法は定額法とする。(仕訳方法:間接法)

借方科目 金額 貸方科目 金額
減価償却費 50,000 減価償却累計額 50,000

上記の直接法は、工具器具備品を減らしましたが、間接法の場合は、減価償却費と同額を「減価償却累計額」に勘定科目に計上していきます。

この2つの違いは、直接法は、取得価格から減価償却費を引くため、現在の資産価値がすぐ確認できます。一方、間接法は、取得価格から引くわけではなく、減価償却累計額に計上するため、取得価格とこれまでの償却額がすぐにわかります。

一括償却資産の場合

一括償却資産には、「決算調整方式」と「申告調整方式」があります。

150,000円のパソコンを現金で購入しました。(決算調整方式)

借方科目 金額 貸方科目 金額
一括償却資産 150,000 現金 150,000

一括償却資産の場合の勘定科目は、「一括償却資産」を使用します。これは資産用勘定なので、増えるときは借方に記帳します。相手勘定は、資産勘定である現金が減るため貸方に記帳します。

決算時に減価償却費を計上しました。

借方科目 金額 貸方科目 金額
減価償却費 50,000 一括償却資産 50,000

一括償却資産は3年で償却しますので、減価償却費は150,000円÷3年=50,000円となります。この場合の勘定科目は、「減価償却費」を使用します。これは費用勘定なので、増えるときは借方に記帳します。相手勘定は、一括償却資産が減るため貸方に記帳し、2年目、3年目と同様の処理を行います。

減価償却の説明の時に、最終年度は備忘価格1円として残すと説明しましたが、一括償却資産と次に説明する少額減価償却資産は残しません。全額費用計上して最終的には0円となります。なぜなら、この2つは、会計上は資産ではなく消耗品等として認識されているためです。

150,000円のパソコンを現金で購入しました。(申告調整方式)

借方科目 金額 貸方科目 金額
一括償却資産 150,000 現金 150,000

上記、決算調整方式と同様です。

決算時に減価償却費を計上しました。

≪仕訳なし≫

申告調整方式では、確定申告時に調整するため、決算時に仕訳は発生しません。

少額減価償却資産の場合

150,000円のパソコンを現金で購入しました。

借方科目 金額 貸方科目 金額
工具器具備品 150,000 現金 150,000
減価償却資産 150,000 工具器具備品 150,000

少額減価償却資産の場合は、一旦「工具器具備品」を勘定科目で、資産に計上して、すぐに減価償却をします。

まとめ

パソコンを購入したときの勘定科目は、金額によって、消耗品費や工具器具備品に変わります。また、工具器具備品は固定資産ですので、決算時には資産から費用にするための減価償却という作業が発生します。さらに、一括償却資産や少額減価償却資産のように、単純に金額では判断できない例外もあります。複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ確認していけば、さほど難しいものではありません。苦手意識を持たず、取り組んでいきましょう。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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