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WACCとは?計算式・構成要素・企業価値評価への活用までわかりやすく解説

テーマ
WACCとは
監修
Big4社員

皆さん「WACC」という言葉をご存じでしょうか。通常の経理業務では聞きなじみがない言葉ですが、WACCは企業価値を計算するための重要な要素になります。ただし計算式が複雑でよく分からない方も多いと思うので、今回は一緒にWACCの計算式や使い方を勉強していきましょう。

WACC(加重平均資本コスト)の意味と基本的な考え方

WACCとは、加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital)の略で、株主資本コストと有利子負債コストを加重平均したものです。企業が事業を行う際に、主に2つの方法で資金調達を行います。1つは株式を発行することで株主から資金を提供してもらう方法で、その際にかかるコストを株主資本コストと呼びます。もう1つは社債や借入を行う方法で、その際にかかるコストを有利子負債コストと呼びます。資金調達に必要なこの2つのコストを上回る利益率をあげなければ、手元に利益が残らないことになるでしょう。

 

まずは言葉の定義を確認してみましょう。

 

株主資本コスト

出資をしてくれた株主に対して支払うコスト、言い換えれば株主の期待するリターンを表します。

  1. キャピタルゲイン:株式を売却することで得られる利益
  2. インカムゲイン:配当など株式を保有することで得られる利益

 

有利子負債コスト

資金を貸してくれた債権者に対して支払うコストを表します。

  1. 借入をした銀行に対して支払う利息
  2. 社債を購入した債権者に対して支払う利息

果たします。

 

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WACCの計算式と各構成要素(負債コスト・資本コスト)の求め方

WACCは次のように計算することができます。

WACC=

株主資本コスト(%)×株主資本÷(株主資本+有利子負債)+有利子負債コスト(%) ×(1-実効税率)×有利子負債÷(株主資本+有利子負債)

かなり難しい式に見えますが、計算の趣旨は株主資本コストと有利子負債コストの加重平均です。一点補足ですが有利子負債側の計算のみ(1-実効税率)という式が追加されています。これは負債の節税効果を考慮しているためです。例えば売上と売上原価が全く同じA社とB社を仮定しましょう。A社は借入を行っておりませんが、B社は銀行から借入を行っているため利息が発生しています。

 

この時の両社の税引き後利益は下記のように計算されます。

項目 A社 B社
売上 100 100
売上原価 50 50
支払利息 0 10
税引前利益 50 40
税金(30%) 15 12
税引後利益 35 28

B社は利息を支払った分税金が安くすんでおり、これが負債の節税効果になります。

 

それでは下記の前提条件を元に実際にWACCを計算してみましょう。

 

  • 株主資本コスト:10%
  • 有利子負債コスト:3%
  • 税率:30%
  • 有利子負債:150万円
  • 株主資本:50万円

 

まずは株主資本コスト側を計算してみましょう。

 

株主資本コスト(%)×株主資本÷(株主資本+有利子負債)

=10%×50÷(50+150)=2.5%

 

次に有利子負債側を計算してみましょう。

有利子負債コスト(%)×有利子負債×(1-税率)÷(株主資本+有利子負債)

=3%×(1-30%)×150÷(50+150)=1.6%

 

2.5%+1.6%=4.1%がWACCになります。

 

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WACCを使った企業分析・投資判断の実務的な活用方法

会社経営の健全性の判断基準

冒頭に述べたようにWACCを上回る利益率をあげなければ、手元に利益が残りません。

つまりWACCと利益率を比較すれば会社経営が健全かを判断することができます。

利益率を計算するときはROIC(投下資本利益率)を使用しましょう。

ROICは投下資本に対してどれだけ利益を稼いだかを表す指標で、次のように計算することができます。

ROIC=税引き後利益÷投下資本(有利子負債+株主資本)

 

先ほどのA社を例にすると、

ROIC=35÷(150+50)=17.5% になります。

ここでROICとWACCを比較してみると、

ROIC17.5%>WACC4.1%なので、A社は健全な経営ができていると言えるでしょう。

ROICを使用するメリットは複数の事業を行う企業にとって投資規模や収益構造が違う事業同士の成績も公正に評価できる点です。

企業の投資効率を図るKPIには、ROICの他にもROA(当期純利益÷総資産×100)やROE(当期純利益÷純資産×100)があります。

ROAはすべての資産を使ってどれだけ利益をあげたかを表し、ROEは株主の出資に対してどれだけ利益をあげたかを表しますが、どちらも総資産や純資産をベースに計算するため、数字を簡単に操作できてしまうというデメリットがあります。例えば自社株買いを行うことで自己資本を圧縮し、比較的簡単にROEを改善できてしまいます。

一方ROICは投下資本をベースに効率性を評価するため、ビジネス自体を見直さない限りROICを良化させることはできませんし、投資家に対してもROICに着目する経営手法をROIC経営と呼び、近年ROICを開示する企業が増加しています。例えばオムロンはホームページ上で直近のROICの推移を開示していますし、キリンホールディングスは中期経営計画で「24年度にROIC10%以上」という目標を掲げています。

 

企業価値評価

M&Aを検討する際には企業価値を評価する必要があります。代表的な計算方法として、DCF(Discounted Cash Flow)法がありますが、ここでもWACCは使用されています。DCF法は企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を計算する方法ですが、現在価値に割り引く際にWACCを使用します。具体的な計算は次のように計算できます。

将来3年間、キャッシュフローが毎年100万円発生すると仮定しましょう。

WACCは先ほど計算した4.1%を使用します。

  • 1年目の割引現在価値:1,000,000/(1+4.1%)=960,615円
  • 2年目の割引現在価値:1,000,000/(1+4.1%)/ (1+4.1%)=922,781円
  • 3年目の割引現在価値:1,000,000/(1+4.1%)/ (1+4.1%)/ (1+4.1%)=886,437円

この場合の現在価値は960,615円+922,781円+886,437円=2,769,833円になります。

実際に企業価値を計算するときは、もう少し細かい前提条件が必要になりますが、まずは簡単なイメージがもてればよいと思います。

一方でWACCを使用する際の注意点も存在します。WACCは資本構成の変化を織込めないという点です。WACCはある一時点での株主資本と有利子負債の構成比率を元に計算されますが、その構成が将来継続するわけではありません。実際は追加の借入や返済、新規株式の発行等により、構成割合が変化する可能性が大きいでしょう。そのため将来の株主資本と有利子負債の構成が変化しない前提でWACCを使用するようにしましょう。

 

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まとめ

いかがでしたでしょうか。WACCは企業価値計算で使用することが多いですが、ROICと比較することで経営判断のKPIにも活用できます。

計算が複雑で苦手な方も多い分、一度マスターできればあなたの職務価値も高まるでしょう。

インターネット上には資本構成や利率を入力するだけでWACCを自動計算してくれるサイトもあるので、計算が苦手な方はぜひお試しください。

 

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Biz人 編集部

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