ブックレビュー

【要約】マッキンゼー ホッケースティック戦略 | 経営戦略を実現させるには何が必要?

テーマ
マッキンゼー ホッケースティック戦略
監修
読書マニア

企業の中途半端な経営計画と未達に終わる経営実績を繰り返す様子を表したホッケースティックとヘアリーバックという言葉をご存じでしょうか?

期初には、営業利益がV字回復する計画を立案するものの未達に終わり、次年度には新たにV字回復する計画を立案する。そのひとつひとつがホッケーのスティックのような形をしており、繰り返された計画を並べてみると、まるでハリネズミの背中のように見えることを皮肉しています。

企業に属する方にすれば、多かれ少なかれ共感する部分もあるのではないでしょうか。本書では、なぜホッケースティックとヘアリーバックという現象が起こるのか、それらを回避して経営戦略を実現させるには何が必要なのかを解説しています。

 

【著書情報】

タイトル マッキンゼー ホッケースティック戦略
著者名 クリス・ブラッドリー著/マーティン・ハート著/スヴェン・シュミット著/アンドレ・アンドニアン解説/野崎大輔監訳
出版社 東洋経済新報社
ページ数 366ページ
発売日 2019/11/7

【章立て】

INTRODUCTION:戦略策定の現場へようこそ

CHAPTER1:戦略策定の現場で駆け引きが生じる理由

CHAPTER2:戦略策定の現場を開かれたものにするためには

CHAPTER3:ホッケースティックという理想、ヘアリーバックという現実

CHAPTER4:成功確率はどれくらいか?

CHAPTER5:ホッケースティックを現実のものにするには

CHAPTER6:変化の兆しを見極めるには

CHAPTER7:〝大胆施策〟を正しく実行に移すには

CHAPTER8:戦略ポテンシャルを発揮するための8つのシフトチェンジ

EPILOGUE:戦略策定の現場の新しいあり方

なぜ経営計画がうまくいかず計画で終わるのか

「直近では多少の投資が必要ですが、将来的には大きな利益が見込めます」というホッケースティックな理想は、直近での予算獲得のための儀式のようなものだと指摘する経営者もいます。

問題の元凶は、戦略策定に外部の視点が含まれておらず、このような社内政治によって戦略策定のプロセスが進められている点にあります。

外部の視点を取り入れるのに有効な道標として「エコノミックプロフィット」が本書では提案されています。

エコノミックプロフィットとは、資本コストを差し引いた後の総利益額を表す指標、つまりある企業の市場に対する勝利の度合いを示したものです。

エコノミックプロフィットにより、キャッシュフローも含めた形で利益率とその規模、推移を定量化することで、事業戦略に「外部の視点」を取り入れることができるようになります。

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エコノミックプロフィットのパワーカーブ

本書では、2010年から2014年における非金融の売上大手2393社のデータ解析から、エコノミックプロフィットには以下の2つの特徴があることを見出しています。

  • 事業規模に対してエコノミックプロフィットをプロットすると、事業規模の上下限20%でエコノミックプロフィットは急激に上昇・下降し、それ以外の中間領域では、エコノミックプロフィットはほぼ一定で、パワーカーブを描く
  • 業界平均をプロットすると、業界のエコノミックプロフィットにもパワーカーブがある

まず、自社の事業が属する業界が、パワーカーブのどの位置にあるような業界なのか(ソフトウェアのようにエコノミックプロフィットプロフィット高い業界なのか、電力のように低い業界なのか)を把握することが、「外部の視点」を取り入れる第一段階です。

ヘアリーバックという現実

ホッケースティックのような経営計画が現実のものとならずに、またその翌年には同じような経営計画を策定する。繰り返されるそれらの計画を並べた時に、まるでハリネズミの背中のような様子になることを揶揄したのが「ヘアリーバック」です。

そして、このヘアリーバックという現象が起きる要因について、多くの企業には共通点がみられます。まず、ホッケースティック的な経営戦略の策定が予算を獲得するための儀式のようになっていないか?という問いかけです。

具体的に言うと、まず「知らないのに知っていると思い込んでいること」が一つ目のバイアスです。

例えば市場の需要増加について、本当にその予測が正しいのか?という検証です。競合他社の動きも含めると実は需要に対して供給量は十分で、想定したほどの市場の伸びは期待できないといったケースもあるのです。また、「積極的な施策よりも既知な事実や確実性に価値を置くこと」が二つ目のバイアスです。前年度までもそうであったから、という説明が聞く側もする側も一番ラクなものです。また、数回に1回は未達になるようなストレッチゴールの設定を目指していても、実際はほぼ確実に達成が見込まれるような目標設定に落ち着きやすい傾向があるかもしれません。

ローリスクハイリターンな「大胆施策」

前述のようにヘアリーバックのような現実になることも多いものですが、実際にホッケースティック的な経営計画が実現し、大きく業績を向上させるケースもあります。

本書では、その成功確率向上に相関性の高い要因を統計的にピックアップして解説しています。

その中でも、どの業界にあっても企業努力が可能なものとして「大胆施策」を例に挙げています。

大胆施策とは、「M&Aおよび事業売却プログラム」「リソース再配分」「設備投資」「生産性向上」「差別化の促進」の5つの項目です。

この大胆施策が企業のパワーカーブ上下に及ぼす影響度は全体の45%であって、この5つのうち3つ及び4つを実践した場合、企業のパワーカーブが全体の中間層から上位20%以内に向上する確率は40%、100%でした。

2つ以下の場合は16%であったのに対して、大きな伸びをみせています。

また、この大胆施策の面白いところは「設備投資」を除いて非対象であるという点です。実施すれば実施した分、エコノミックプロフィットを向上させるようなリターンは増加する一方で、下振れする確率の増加は大きく小さいのです。

これらの「大胆施策」がどれほどできているかが、成功のカギとなります。

8つのシフトチェンジ

大胆施策の実行をする上で、社内政治的な障壁をクリアするために有効なのが下記に挙げる「8つのシフトチェンジ」です。

  • 年次計画から継続プロセスとしての戦略策定に
  • ”YES”の獲得から真のオプションの議論に
  • ピーナッツバター型のリソース配分から1/10の選択に
  • 予算の承認から大胆施策の実施に
  • 慣性による予算編成からリソースの流動化に
  • 過少申告からリスクポートフォリオの開示に
  • 数字、結果がすべてから総合的な業績評価に
  • 長期的計画から第一ステップの着実な実行に

経営計画は外部の視点をもちながら大胆施策を取り入れつつ、予算承認を得るためではなく真に業績向上を目指すために取るべき選択は何かを明確にする必要があります。また、その計画は最小単位で実行しやすいものまで分割して常にフィードバックをかけながら、着実に実行しやすくすることがポイントです。

予算についてもピーナッツバターをパンに塗るような均等な分割をするだけでなく、集約させるところには集約させながら、また80%予算(一部を共同基金にプール)するようなバランスのとれた取り組みも推奨しています。

評価においては、ハイリスクな活動が必要であればあるほど、個人成果に落とし込みすぎないようなチームとしての業績評価の比率を上げた方が効果的です。

以上の8つのシフトチェンジが実現されれば、大胆施策を妨げるような社内政治的な圧力を回避し、企業に好ましい変化をもたらすことができるでしょう。

まとめ

本書では、統計的な解析からホッケースティックな経営計画をいかに実現させるか、そのエッセンスを解説しています。明解な論調は読みやすく、面白い見解も多いので、是非ともオススメの書籍です。

Biz人 編集部

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