ブックレビュー

【要約】『他者と働く』~分かり合えない職場を改善する方法~

テーマ
分かり合える職場づくり
監修
読書マニア

職場でのわかりあえない関係を改善する方法

ビジネスでは社内外問わず多くの人と仕事を進めていきますが、その中で自分の思いや意図をわかってもらえないという経験は無かったでしょうか。

そのわかりあえない関係によって仕事が前に進まず、悩まれた方も多いと思います。

今回はこれを解決に導くヒントが詰まった宇田川元一さんの著書『他者と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論』をご紹介します。

 

【著書情報】

タイトル 他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論
著者名 宇田川 元一
出版社 NewsPicksパブリッシング
ページ数 200ページ
発売日 2019/10/4

 

【目次】

はじめに:正しい知識はなぜ実践できないのか

第1章:組織の厄介な問題は「合理的」に起きている

第2章:ナラティヴの溝を渡るための4つのプロセス

第3章:実践1.総論賛成・各論反対の溝に挑む

第4章:実践2.正論の届かない溝に挑む

第5章:実践3.権力が生み出す溝に挑む

第6章:対話を阻む5つの罠

第7章:ナラティヴの限界の先にあるもの

おわりに:父について、あるいは私たちについて

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組織の問題は適応課題がほとんど

まず本書には、前提として日々発生する問題は“技術的問題”と“適応課題”に分類できると説明されています。

技術的問題

技術的問題は既存の方法で解決ができるものです。

例えば急ぎのメールに添付されているファイルの容量が大きく、送信までに時間がかかることで迅速なコミュニケーションが取れないといった問題があるとします。

これは、インターネット回線の容量が大きい環境に変えるなど、技術的に解決ができると想像がつくと思います。

技術的問題はこれにあたり、一方的に解決できる問題です。

適応課題

もうひとつの適応課題というのが一方的に解決できない問題で、組織における問題のほとんどはこれにあたります。

先ほどのインターネットスピードの問題で言えば、いざ容量の大きい接続環境に変えようと提案しても上司や技術部署からNGが出てしまい、改善を実行できない。

いくら説明しても承認をもらえず解決できないというのがこの適応課題ということです。

本書ではこれを解決するために、対話によって新しい関係性を構築する必要があると説明されています。

と、言われても対話はしているしその上で聞き入れてもらえず困っているんだという声が聞こえてきます。それでは、どのような点に注意して対話をすればいいのでしょうか。

本書の内容をもとに、要点を絞って説明していきたいと思います。

自分のナラティブを傍に置こう

ずばり結論です。

「こちら側」が少し変わることで新しい関係を築きましょう。

こちら側が変わるという事を負けと感じる方がいるかもしれませんが、そうではありません。本書ではナラティブ(narrative)「一般常識」であったり「解釈の枠組み」といわれるものですが、このナラティブがそれぞれの環境に存在していて、まずは自分のナラティブを傍に置いて相手のナラティブを知ることで、両者にとっての新しい正論を作っていくことが必要だと説明されています。

自分のナラティブで話しても相手には相手のナラティブがあるので、簡単に理解してもらえる事はありませんよね。

なので「こちら側」が少し変わる=自分のナラティブを一度傍に置いて相手のナラティブを知り、そこから新しい関係を築く事でわかりあえない状態を解消していきましょうという事なのです。それではどのようにしてこの新しい関係を築けばいいのでしょうか。

本書では4つのステップでこれを解説しています。

新しい関係を築く4つのステップ

わかりあえない相手と新しい関係を築くには

①準備

②観察

③解釈

④介入

のステップを踏みましょう。ひとつずつ解説していきます。

①準備~溝があることに気付く~

これは、お互いのナラティブに溝がある=わかりあえない状態であるということに気付くということです。ナラティブの溝はギャップ型、対立型、抑圧型、回避型と4つのタイプがあり、これも含めて気付く必要があります。

それぞれの説明はここでは割愛しますので、ぜひ本書を手に取ってみてください。

②観察~相手のナラティブを知ろうとする~

早速「こちら側」が少し変わる行動をとっていきます。相手のナラティブを知るためには、相手の環境(どんなプレッシャーがあるのか?どんな立場で責任があるのか?仕事上の関心ごとは?)を知り、そこからの気付きを得ましょう。

③解釈~相手のナラティブから自分を見る~

観察から得た気付きをもとに自分を眺めてみます。すると自分の要求や発言が相手にとってどのような印象を与えているか、どんな弊害が発生しているかを想像することができます。

より具体的に解釈するためには、相手に近い信頼できる協力者を見つけてアドバイスを受けましょう。

④介入~行動してみる~

この「わかりあえなさ」を理解した上で、新しい関係を築くため行動してみましょう。①〜③を実践することで、こちらの要求内容や伝え方が必ず変わるはずです。場合によっては要求を一部諦めて相手の要求を受け入れる必要や、相手にこちらのナラティブに入ってもらう必要もあります。これが新しい関係を築くということです。

 

ここまで読んでみて面倒くさいと感じた方も多いと思います。

しかし、なぜこのわかりあえない状態を解消する必要があるのか、目的に立ち返ってみましょう。

そもそも組織とは、個々の人間の限界を協働することで乗り越えて、より大きなことを達成するために存在しています。つまり、自分の所属する組織の目的を達成するために多くの人の力を借りる必要があり、その上で相手とわかりあうことは必要不可欠なのです。

面倒くさいかもしれませんが、その先の大きな目的を達成するために4つのステップを確実に踏んでいきましょう。

主体性のない部下や後輩にもナラティブは存在する

一生懸命にトレーニングをして育てている部下や後輩が、主体的に動いてくれないという悩みも必ずあるかと思います。

その理由は、上司や先輩が自分の「仕事のナラティブ」で相手を働かせたいと思っていることが多いと本書で解説されています。

経験年数も立場も違えば、見ている視野の広さも視座の高さも異なることは当然です。今まで自分が働いてきて構築してきたナラティブで部下や後輩を指導育成しても、相手には相手のナラティブが存在し、簡単には受け入れてもらえないのは前述した通りです。

そんな時にも一度自分のナラティブを傍に置いて4つのステップを活用しましょう。

相手のナラティブを理解し、その中で主体的に業務を全うしてもらえる新たな関係を築く必要があるということです。

まとめ

今回は宇田川元一さんの著書『他者と働くー「わかりあえなさ」から始める組織論』をご紹介してきました。

仕事をする上で発生する適応課題という問題を解決するには、自分のナラティブを一度傍に置いて相手のナラティブを理解しにいきましょう。そして、ナラティブの溝に向きあいながら適応課題を乗り越える新しい関係を築くことで、組織でしか達成し得ない大きな目的を達成していきましょう。

本書ではより具体的なケースが解説されていますので、ぜひ手に取って読んでみてください!

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Biz人 編集部

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