それでは具体的な実践方法を、3つのステップに分けて見ていきましょう。
「目指すもの」を定義する
皆さんは何か達成したい目標があるとき、それを具体的に説明できるでしょうか。
「目指すもの」を定義する際には、
- なぜそれを目指すのか
- 具体的にはどういう状態が達成と言えるのか
- いつまでに達成するのか
を明確にする必要があります。なぜなら、目指す姿は時間・レベルの軸で具体的に提示できないと目指すことができないからです。
1961年、米ソの冷戦下における宇宙産業の覇権争いで米国大統領ケネディは「60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させる」とメッセージを発信しました。
細かく分解すると、
- なぜ:冷戦下におけるソ連との宇宙産業の覇権争いに勝つため
- 具体的に:人類を月に立たせ、安全に帰還させる
- いつまでに:1960年代末までに
とても明確な目標です。
もしケネディが「宇宙産業の国際的リーダーとなる!」と宣言していたら、目指すものが抽象的でどこに向かえばいいのか迷ってしまいますよね。ケネディは誰もが達成基準の分かる具体的な目標を掲げることができたので、1969年に史上初めて人類を月に立たせ、帰還させることに成功したと言えるのです。
では、どうすればケネディのような具体的な目標を考えることができるのでしょう。
本書では「目指すもの」を具体的に定義するためのSMARTというフレームワークが紹介されています。
SMARTは各単語の頭文字を取ったものです。
- Specific:具体的である
- Measurable:達成できたかどうかを事実で判断できる
- Action oriented:行動に落とすことができる
- Relavant:意義が明確である
- Time-Limited:期限が明確である
「目指すもの」が定義できたときはSMARTを使用して、全てが確実に網羅されているかチェックしましょう。
何が問題なのかクリアにする
「目指すもの」が定義できたら、次は「今」とのギャップを明らかにして問題の本質を特定する作業をおこないます。
問題の本質を特定するためには「分解」と「絞る」作業を繰り返します。「分解」はその問題を細かく分けてひとつずつ精査していくということ、「絞る」は分解したものの中から問題の本質と思われるものを見つけ出すことです。
問題の本質が絞れたら「なぜその問題が起こるのか」をまた「分解」し「絞る」。これを4〜5回繰り返すことで本当に解決すべき問題が徐々に明らかになってきます。
ただし、やみくもに分解して絞っていては問題の本質を特定できません。筋のよい分解のためには、MECE感(漏れなくダブりなく)があること、意味のある切り口でグルーピング出来ていることが必要です。
本書で紹介されているフレームワークを用いながら的確な分解を行い、問題の本質を特定していきましょう。
打ち手を考える
問題の本質が特定できたら、あとは現状とのギャップを埋めるための具体的なアクションを考える作業に入ります。
方法は「ズームアウト」と「ズームイン」の作業の繰り返しです。ズームアウトはブレスト(ブレインストーミング)して問題解決の選択肢を広げること、ズームインは目標設定に立ち返りながらで出来た選択肢を絞ることです。
これを繰り返すことで、目指すものを達成するための本質的な打ち手を考えることができるのです。
もし打ち手がうまく見つからないときは、目標設定があいまいか問題の本質がつかめていない可能性があるので、改めて考え直す必要があるでしょう。
実践的クリティカルシンキングを身につけるコツ
これまでクリティカルシンキングの手法をお伝えしてきましたが、本書にはクリティカルシンキングはこうすればすぐできるというウルトラCは存在しないと説明されています。
しかし、少しずつ使いこなせるようになるためのポイントが紹介されていますので、ここでは特に大事だと思うポイントを2つ紹介したいと思います。
とにかくひたすら考え続ける
何ごとにも続けることが大切です。これはスポーツでも語学でも言えることですが、体に染みつくまで考え続け、クリティカルシンキングのプロセスをたたき込みましょう。
事実に当たる
机上で考えるだけでは実感が湧いてきません。数字、データ、現場、現物を実際に見て感じたことを言語化することでより深く掘りこんでいくことができます。
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