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経営戦略の作り方とは?プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)の活用方法をわかりやすく解説!

テーマ
プロダクトポートフォリオの活用方法
監修
戦略コンサルタント

一定規模以上の企業の中には、複数の製品や事業分野を持つ企業も多いことでしょう。経営戦略を立案する際、果たしてどの分野に投資し、どの分野を撤退すべきか、事業のバランスを取ることは、多くの企業の課題です。今回は、プロダクトポートフォリオと言われる手法を活用し、複数の製品や事業のバランスを取っていく方法を考えていきましょう。

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とは

プロダクトポートフォリオマネジメントとは、複数の製品や事業に対して、企業の経営資源をどのように配分したら良いかを示唆する手法として、1970年代に、ボストンコンサルティンググループによって開発された手法です。

PPMが必要とされる背景

経営環境が急激に変化する現代、多くの企業が経営の多角化を図っています。ひとつの製品や事業で未来永劫収益が上がれば、単一の事業で問題ありません。それどころか、投資効率から考えて、それ以上の理想の事業形態は無いからです。

しかし、現実には、消費者ニーズの多様化と急激な変化により、単一の製品や事業で永続的に繁栄することはありません。はやり、複数の製品や事業分野を持ち、そのバランスを計っていくのが、現代企業の宿命と言えるでしょう。

PPMが必要とされる背景

経営環境が急激に変化する現代、多くの企業が経営の多角化を図っています。ひとつの製品や事業で未来永劫収益が上がれば、単一の事業で問題ありません。それどころか、投資効率から考えて、それ以上の理想の事業形態は無いからです。

しかし、現実には、消費者ニーズの多様化と急激な変化により、単一の製品や事業で永続的に繁栄することはありません。はやり、複数の製品や事業分野を持ち、そのバランスを計っていくのが、現代企業の宿命と言えるでしょう。

企業が多角化をしている現状(自動車業界の事例)

現在、多くの業界で複数の事業を行う、「多角化戦略」が活用されています。自動車業界の多角化状況を見ると、多角化の様子と、PPMの必要性が理解できます。

自動車業界では、脱炭素社会推進の流れを受けて、様々なタイプのエコカーを開発し、商品の多角化を図っています。少し前までハイブリッドカーが本命でしたが、その後燃料電池車が注目され、現在は電気自動車が主流になりつつあります。

さらに、若者の自動車離れに対応し、自動車の購入というビジネスモデルから、毎月一定額を払えば、自由に車種を変えられるサブスクリプションビジネスも浸透し始めています。

さまざまな、製品・サービスを切り替えながら進んでいるようです。

PPMの基本原理

PPMは、以下のような基本原理を使い、複数の製品・事業分野のバランスを図ろうとしています。

  1. どんな製品もいつか飽きられる。市場における成長率は、いつか鈍化する。
  2. 成長性の高い事業には、広告宣伝や設備投資など、多くの投資(資金)が必要である。
  3. 市場シェア高い事業は、高い利益(資金)を生む。

PPMの製品分野別特徴

PPMでは、「市場成長率」と、「市場占有率」という二つの観点から4象限のマトリクスを作り、それぞれのマトリクス(象限)にユニークな名前を付け、それぞれの製品・事業分野ごとに、今後どう対応していったらよいのか、示唆を与えてくれます。

市場成長率とは、人気の度合いと考えると良いでしょう。また、市場占有率とは、どのくらいのシェアを取っているということですが、実際に数値を表すときは、トップ企業のシェアに対して、どのくらいのシェアを取っているかという、相対的なシェアを使います。

【図1.プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)】

「花形」製品の特徴

市場成長率は高く、市場占有率も高い、新製品やサービスが該当します。認知度を高めるための広告宣伝や設備投資に資金が必要なため、資金流入量に比べて資金流出が多い状態です。AIやAR、VR、ブロックチェーン、フィンテックなど、先端技術を活用したシステムなどが該当します。

「問題児」製品の特徴

市場成長率は高いものの、市場占有率が低く、資金流入量に比べて資金流出が多い状態です。いわば、伸び悩んでいる事業のタネのような段階と言えます。また、企業としても、投資の仕方に悩んでいる分野であるとも言えます。サントリーのビール事業や、売却したソニーのAV事業などが該当します。

「金のなる木」製品の特徴

市場成長率は低いものの、市場占有率が高い製品・事業分野です。製品の認知度が充分にあり、新たな投資が必要ないため、資金流入量が最も多く、ドル箱的存在です。日清のチキンラーメンやトヨタのプリウスなどが挙げられます。

「負け犬」製品の特徴

市場成長率も市場占有率も低く、資金流入量や資金流失量も少なく、新たな投資をすべきでない製品・事業分野と言えます。小売業においては、新たなビジネスモデルをなかなか開発できない百貨店部門などが該当します。

PPMの使い方

では、具体的に4つの象限ごとに、どんな使い方が最適なのでしょうか?

金のなる木の資金を元に研究開発

企業の稼ぎ頭は金のなる木です。金のなる木は最も資金を生んでくれる事業ですが、この事業自体に新たな投資は無駄です。金のなる木をどうこうしようというより、ここから生まれる資金を元に、研究開発を行い、新たな花形や問題児を生み出すことが、金のなる木に求められます。

花形または問題児を育てる

さらに、金のなる木の資金は、既に存在する花形や問題児を育成するためにも使われます。製品の改良や広告宣伝、設備投資などを行い、育成します。

花形は金のなる木に、問題児を見極めて花形にする

売れっ子の花形製品を早期に市場に認知させ、販売量を拡大することによってコストを下げ、収益力をつけて金のなる木にします。

また、問題児は成長性を判断して花形に育て、後に金のなる木にしていきます。

負け犬はタイミングを見て撤退

負け犬は原則的にこれ以上の投資は無意味ですから、撤退戦略が基本です。しかし、稀に富士フイルムの「チェキ」のように再ヒットする場合もあります。また、小売業において、撤退後の跡地に必ずライバル企業が出店することが確実視される場合などは、敢えて撤退しない場合もあります。要するに、タイミングが大事だということです。

PPMの限界「DXの脅威」

市場成長率と市場占有率をもとに、製品・事業分野のバランスを取っていくのがPPMの戦略モデルですが、限界もあります。

それは、デジタルトランスフォーメーション(DX)と言われる、IT技術を活用した既存ビジネスの劇的な変革です。DXでは、これまでの製品のライフサイクル(製品が生まれて市場から無くなるまでの期間)の常識を覆していきます。

例えば、タクシー業界の課題であった「タクシーが掴まらない」「運転手の態度が悪い」などを一気に解決するウーバーテクノロジーズの配車サービスや、旅行業界を脅かす、宿泊予約・決済サービスを提供するエアービーアンドビーなど、ITを活用して異業態から参入するビジネスモデルには対応していません。

今後は、そのような要素も考えながら、PPMを活用していく必要があるでしょう。

まとめ

複数の製品・事業分野のコントロールの仕方を示唆してくれる、プロダクトポートフォリオマネジメントについて見てきましたが、いかがだったでしょうか?

ボストンコンサルティンググループは、非常にユニークな名称で、各製品分野の特徴を示唆してくれていると思います。

製品が世に出てから無くなってしまうという期間が、非常に短くなっている昨今、複数の製品や事業をどうバランス良くコントロールしていくかは、ほとんどの企業で最重要なテーマになっています。

さらに、PPMだけでは製品・事業のバランスを図っていくことには限界があることもご理解いただけたと思います。

今回の記事を参考に、自社の製品・事業分野の再構築を検討していきましょう。

Biz人 編集部

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