ブックレビュー

【要約】顧客主導型マーケティング:あなたのビジネスのやり方を変える本

テーマ
たった一人の分析から事業は成長する
監修
読書マニア

今回の記事で紹介する書籍、『顧客起点マーケティング』は、著者の西口一希氏が自身のマーケティング手法について解説した書籍です。西口氏は、P&Gで16年間マーケティングに従事した後、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースで執行役員や取締役としてマーケティングを牽引している人物です。

著者が本書で紹介しているのは、徹底的に1人の顧客を理解し、そこからアイデアを生み出すという考え方です。そして、本書ではマーケティング施策の成果を管理し、新たなアイデアを生み出すフレームワークとして9セグマップを提示しています。

本書ではマーケティングの手法やフレームワークについて解説されていますが、顧客起点でビジネスを行うことは全ての職種に共通する経営課題です。全てのビジネスパーソンが、示唆を得られる内容になっているのではないでしょうか。

 

 

【著書情報】

タイトル たった一人の分析から事業は成長する実践顧客起点マーケティング
著者名 西口一希
出版社 翔泳社
ページ数 230ページ
発売日 2019/04/08

 

【章立て】

序章:顧客起点マーケティングの全体像

第1章:マーケティングの「アイデア」とN1

第2章:【基礎編】顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する

第3章:【応用編】9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する

第4章:【ケーススタディ】スマートニュースのN1分析とアイデア創出

第5章:デジタル時代の顧客分析の重要性

「顧客起点」で考えることの重要性

マーケティングとは、「魅力的なサービスを開発し、顧客に継続的に購買、利用していただく活動」であると本書では定義されています。つまり、企業側がどれだけ「魅力的だ」と感じても、顧客がそう感じなければ成立しません。顧客が何を考え、何を求めているかを理解することは、マーケティングの基本となります。

しかし、「顧客理解が大事」と言いながら、実際にはマーケティングやビジネスが顧客起点になっていない企業も多くあります。組織や事業の規模が大きくなれば、組織の中で内向きの力学が強く働くことは頻繁に見られる現象です。また、近年のアドテクノロジーやデジタルマーケティングの発展により、マーケターは新たな技術や手法の理解に時間を取られるようになっています。

新たなデジタル手法の導入や、ABテストによって成果が上がることはあるものの、ブランド全体では部分最適であり、影響は一部に過ぎません。「なぜ顧客は動いたのか?」、という顧客の心理的要因を解き明かさなければ、大規模なマーケティング投資を行い、事業をスケールさせることはできないのです。

N1の意味

著者が本書で提唱している考え方の1つはN1分析です。N1とは、たった1人の顧客を深堀し、そこで得られたアイデアから他の多くの人にも響く商品開発や訴求方法の立案を行う方法です。

マーケティングの世界では、N1000のような顧客調査を行って新しい商品の開発や広告訴求の方法を考案することは少なくありません。しかし、多くの顧客を対象とした調査を行った際に得られる結果は平均値であり、最大公約数でしかありません。顧客の平均値から見えてくるアイデアは妥協的なものであり、利益の出ない商品を作り出すことになります。

一方で、N1分析では絞り込んだたった1人の顧客を喜ばせることを徹底的に考えるため、見えてくるアイデアもエッジの効いたものになりがちです。平均値の顧客像で考えるよりも、目の前にいる具体的なN1の顧客を考える方が独自性の強いアイデアが生まれるのです。そして、N1から得られたアイデアが他の多くの顧客にも響くか、を検証するために母数を増やした調査は効果的になります。

9セグ分析による販促とブランディング

ここまではN1分析からアイデアを導き出すことの重要性を説明してきましたが、本書で提唱されているもう一つの概念に、9セグマップというフレームワークがあります。そして、9セグマップとN1分析を組み合わせることで、マーケティングアイデアの発見と施策効果の検証をより効果的に行うことができます。

9セグマップの考え方の基になるのは顧客ピラミッドというフレームワークです。顧客を、①ロイヤル顧客、②一般顧客、③離反顧客、④認知・未購買顧客、⑤未認知顧客に分類する下記図表1のようなフレームワークは知っている人も多いでしょう。このピラミッドをアンケート調査などによって作成することで、未顧客も含めた市場全体の状況を把握することができます。

【図表1】顧客ピラミッド

上記の顧客ピラミッド分析を応用したものが9セグマップです。購買頻度を基に顧客を5つのセグメントに分割する顧客ピラミッドは、販売促進施策を考案する際に非常に便利です。しかし、購買頻度を軸に顧客をセグメント分けするだけでは、ブランディングの観点で顧客を把握するには不十分です。

そこで、この顧客ピラミッドを90度倒したものに、ブランドの選好度による線を一本加えたものが9セグマップです(図表2)。この分析手法によって、販売促進とブランディングを同時に可視化することが可能になります。

【図表2】9セグマップ

ここで言うブランディングとは、「顧客のブランドに対する購買意向」と定義されています。つまり、9セグマップを用いたマーケティング活動の目的は、顧客の購買頻度と購買意向から、自ブランドの市場における顧客状況を把握して、顧客の購買頻度と購買意向を高めることになります。

9セグマップとN1分析の活用

顧客ピラミッドや9セグマップを通して得られるのは、顧客の全体像と各セグメントの構成比です。それに加えて、各セグメントにおいて、顧客が自社にどのような心理を持ち、どのような行動をしているのか、といった仮説も得られるでしょう。

しかし、これらの分析では具体的な打ち手につながるアイデアを得られるわけではありません。アイデアを得るためには、各セグメントにおいて特定の顧客に話を聞くN1分析が威力を発揮します。ロイヤル顧客であれば、1人に絞った実在する顧客に対し、ブランド認知・使用意向・購買意向を持ったきっかけを時系列で聞き、掘り下げます。そして、N1の顧客がロイヤル化した経路を一般化し、同じような体験を促す施策を実施するのです。

このようなN1分析によるアイデアの発掘活動を、一般顧客や未認知顧客などの全てのセグメントで行います。各セグメントでN1分析によって実在する顧客の声を聞くことで、社内で議論するだけでは出てこなかったあっと驚くアイデアを得られることもあります。そして、得られたアイデアは他の顧客にも効果的か?という観点でN=多数の調査を行い、実行に移していきます。

9セグアップは、実施したマーケティング施策の効果を検証するためにも活用できるフレームワークです。マーケティング施策の目的は、基本的にはよりロイヤル顧客に近い顧客を増やし、同時にブランドを魅力的にすることで顧客の購買意向を高めることです。つまり、9セグマップにおける積極ロイヤル顧客や積極一般顧客のような顧客が全体に占める割合が高くなれば良いのです。9セグマップを継続的に作成することで、このようなマーケティング活動による自社顧客の構造変化を捉えることができます。

9セグマップを使って顧客の全体像を把握し、N1分析を駆使して徹底的に1人の顧客を理解し、実在する1人の顧客を起点としたマーケティング活動が本書で紹介されている「顧客起点マーケティング」です。真に顧客を起点としたサービス開発、マーケティング活動は多くの企業が課題とするところです。ぜひ本書の内容を参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

Biz人 編集部Biz人 編集部

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