今回VRIO分析を行うのは、とある菓子製造業者です。SWOT分析により自社の強みを洗い出した結果、以下の3つが現在の強みであると把握できました。
- 2年前に導入した最新型の生地製造機
- 海外修行を経験した職人が考案した、顧客に大好評の新メニュー
- 古くから縁故がある養鶏所から、高級鶏卵を安価で仕入れられる
この菓子製造業者が出店するエリアには、既に競合が3社存在しています。また、半年後には有名な菓子チェーンが出店を予定しており、これに対抗するため、強みを生かした施策を行おうと社長は考えています。経営資源が限られる中、いったい、どの強みを取り上げるべきでしょうか? では、VRIO分析を行いましょう。
V:経済性はあるか?
次の2つの要素のうち、ひとつでも満たしていれば経済性があると判断できます。
- その強みがあることで、収益が増大している
- その強みがあることで、コストが低下している
上記で挙げた強みは、いずれも収益の増大またはコスト低下をもたらしています。よって、経済性についての問いは3つの強みすべてYESです。
R:希少性はあるか?
①の最新型機械については、調査の結果、既に競合のうち1社が導入していると判明しました。出店予定の有名チェーンも最新型設備を備えていると考えられ、希少性があるとはいえません。
②の新メニューは競合他社や有名チェーンのメニューに存在しないため、希少性があるといえます。③についても、この高級鶏卵を他店は材料に使用していないようです。
よって、強み①の答えはNO、強み②・③の答えはYESとなります。希少性の問いでNOとなった強みは「競争均衡をもたらす強み」となります。競合他社と対等な状態であり、そのままでは競争優位には立てません。残った2つの強みで、次の問いを検証しましょう。
I:模倣困難性があるか?
②の新メニューについては、現在のところ他店は提供していませんが、商品を購入して研究されてしまえば、模倣することは比較的容易にできてしまうでしょう。よって、強み②の答えはNOとなります。
模倣困難性の問いでNOとなった強みは「一時的な競争優位をもたらす強み」となります。競合他社が容易に模倣できる場合、やはり、競争優位性は長期的に持続できません。
強み③はどうでしょうか。ポイントは「高級鶏卵を安価で仕入れている」ことです。高級鶏卵を仕入れて材料に使用しているというだけなら、コストはある程度かかるかもしれませんが、競合他社も模倣できるでしょう。しかし、その仕入れコストまで抑えることは難しいはずです。安価で仕入れられる要因は養鶏所との縁故であり、競合他社がそれを得るには少なくない時間を要します。
よって、強み③の答えはYESです。経済性、希少性、模倣困難性すべてを満たす強みは「持続的な競争優位をもたらす強み」であるといえます。
ちなみに、模倣困難性の形成要因としては、古くからの縁故のようにその企業の歴史により形成されたものである「経路依存性」のほか、特許などの法的要因、強みが形成された要因が不明確な「因果関係不明性」などが挙げられます。
O:組織に活用する仕組みが形成されているか?
VRIが揃っている時点で「持続的な競争優位をもたらす強み」ではありますが、組織がそれを活かしていない場合は、「宝の持ち腐れ」になってしまいます。今回のVRIO分析を経て、社長は養鶏所との関係性を強化すると共に、高級鶏卵の使用を顧客へさらにアピールすることを決定しました。
社長の決定を機に組織がこの強みをより活用できる体制を形成するのであれば、この問いも「YES」といえるでしょう。

以上がVRIO分析の実践例となります。間違っても、「生産性を上げるために、さらに機械設備を導入しよう」などと意思決定しないよう、VRIO分析をしっかりと身につけましょう。
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