M&A事業承継

VRIO分析とは?自社の強みを分析するフレームワークを詳しく解説

テーマ
VRIO分析とは
執筆
公認会計士


企業が市場での競争を生き抜き持続していくためには、何らかの強みが不可欠です。みなさんも、「自社の強みを挙げよ」と言われたら、2~3個は答えられるのではないかと思います。しかし、「今挙げた強みをひとつだけに絞れ」と言われた場合はどうでしょう。どのように優先順位をつけますか?

企業が持つ経営資源は当然ながら有限です。強みに優先順位をつけることができないと、経営資源の配分に失敗し、他社との競争に負ける可能性も大きくなります。

そこで今回は、自社の強みが「どれほどの強みなのか?」を把握し、優先順位をつけられる「VRIO分析」というフレームワークを紹介します。このフレームワークを習得すれば、自社の強みが競争優位性を持つのか、そしてそれが持続的なものなのか、即座に把握できるようになります。

ぜひ、最後まで読んでください。

VRIO分析とは

VRIO分析とは、以下から紹介する4つの問いを順番に行って強みの程度を見極め、優先順位をつけるフレームワークです。

  • V・・・Value(経済性):企業の持つその強みは、外部環境(機会/脅威)への適応を可能にするか。
  • R・・・Rarity(希少性):競合他社は、その強みを保持していないか
  • I・・・Inimitability(模倣困難性):その強みを保持していない競合は、それを獲得するのに大きなコストを必要とするか
  • O・・・Organization(組織):経済性、希少性、模倣困難性を持つ強みを、組織全体で活用する仕組みが整備されているか

VRIO分析を行う際に必要な自社の強みは、主に「SWOT分析」というフレームワークによって洗い出します。SWOT分析とは、「自社の強み/弱み」「機会」「脅威」という枠組みで、内部と外部の経営環境を明らかにするものです。

VRIO分析に話を戻して、繰り返しになりますが、この4つの問いは必ず順番に行うようにしましょう。希少性、模倣困難性があったとしても、経済性が存在しない強みは、企業活動では役に立ちません。

次の見出しでは架空の企業を例に、VRIO分析の実践例を紹介します。




▼「マーケティング初心者でも理解できるマーケティング分析手法をわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

VRIO分析の実践例

今回VRIO分析を行うのは、とある菓子製造業者です。SWOT分析により自社の強みを洗い出した結果、以下の3つが現在の強みであると把握できました。

  • 2年前に導入した最新型の生地製造機
  • 海外修行を経験した職人が考案した、顧客に大好評の新メニュー
  • 古くから縁故がある養鶏所から、高級鶏卵を安価で仕入れられる

この菓子製造業者が出店するエリアには、既に競合が3社存在しています。また、半年後には有名な菓子チェーンが出店を予定しており、これに対抗するため、強みを生かした施策を行おうと社長は考えています。経営資源が限られる中、いったい、どの強みを取り上げるべきでしょうか? では、VRIO分析を行いましょう。

V:経済性はあるか?

次の2つの要素のうち、ひとつでも満たしていれば経済性があると判断できます。

  • その強みがあることで、収益が増大している
  • その強みがあることで、コストが低下している

上記で挙げた強みは、いずれも収益の増大またはコスト低下をもたらしています。よって、経済性についての問いは3つの強みすべてYESです。

R:希少性はあるか?

①の最新型機械については、調査の結果、既に競合のうち1社が導入していると判明しました。出店予定の有名チェーンも最新型設備を備えていると考えられ、希少性があるとはいえません。

②の新メニューは競合他社や有名チェーンのメニューに存在しないため、希少性があるといえます。③についても、この高級鶏卵を他店は材料に使用していないようです。

よって、強み①の答えはNO、強み②・③の答えはYESとなります。希少性の問いでNOとなった強みは「競争均衡をもたらす強み」となります。競合他社と対等な状態であり、そのままでは競争優位には立てません。残った2つの強みで、次の問いを検証しましょう。

I:模倣困難性があるか?

②の新メニューについては、現在のところ他店は提供していませんが、商品を購入して研究されてしまえば、模倣することは比較的容易にできてしまうでしょう。よって、強み②の答えはNOとなります。

模倣困難性の問いでNOとなった強みは「一時的な競争優位をもたらす強み」となります。競合他社が容易に模倣できる場合、やはり、競争優位性は長期的に持続できません。

強み③はどうでしょうか。ポイントは「高級鶏卵を安価で仕入れている」ことです。高級鶏卵を仕入れて材料に使用しているというだけなら、コストはある程度かかるかもしれませんが、競合他社も模倣できるでしょう。しかし、その仕入れコストまで抑えることは難しいはずです。安価で仕入れられる要因は養鶏所との縁故であり、競合他社がそれを得るには少なくない時間を要します。

よって、強み③の答えはYESです。経済性、希少性、模倣困難性すべてを満たす強みは「持続的な競争優位をもたらす強み」であるといえます。

ちなみに、模倣困難性の形成要因としては、古くからの縁故のようにその企業の歴史により形成されたものである「経路依存性」のほか、特許などの法的要因、強みが形成された要因が不明確な「因果関係不明性」などが挙げられます。

O:組織に活用する仕組みが形成されているか?

VRIが揃っている時点で「持続的な競争優位をもたらす強み」ではありますが、組織がそれを活かしていない場合は、「宝の持ち腐れ」になってしまいます。今回のVRIO分析を経て、社長は養鶏所との関係性を強化すると共に、高級鶏卵の使用を顧客へさらにアピールすることを決定しました。

社長の決定を機に組織がこの強みをより活用できる体制を形成するのであれば、この問いも「YES」といえるでしょう。

以上がVRIO分析の実践例となります。間違っても、「生産性を上げるために、さらに機械設備を導入しよう」などと意思決定しないよう、VRIO分析をしっかりと身につけましょう。

▼「収益認識基準適用に向けて製造業が気を付けるポイント」はこちらの記事をご確認ください

まとめ

今回はVRIO分析について解説しました。理解を優先するため、記事内では「強み」を分析するものとしましたが、本来であればその部分は「経営資源」に置き換えられます。経営資源は、主に「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つを指します。強みをこれらに分類してからVRIO分析を行うと、より精緻な分析ができると思います。みなさんもVRIO分析をマスターして、限られたリソースを有効活用できるようになりましょう。

▼「PEST分析とは?目的・必要性や分析のやり方について具体例を交えてわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください



Biz人 編集部

「明日の仕事の役に立つ情報を、一人でも多くの人に提供したい」そんな思いで運営しています。ご自身のご知見・ご経験を世の中の役に立たせたいとお考えの仲間を募集しております。

人気Articles

  1. 財務分析の基礎!外してはいけない経営指標やポイントを解説!

  2. 経営戦略の作り方とは?プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)の活用方法をわかりやすく解説!

  3. 有価証券とは?関連会社株式・子会社株式とその他有価証券について詳しく解説!

  4. 製品ライフサイクルとは?取るべきマーケティング戦略を5つの時期ごとに解説

  5. 簿記で出題される社債の抽選償還とは?計算方法や仕訳方法をわかりやすく解説!

  6. マーケティングの基礎4P分析とは?具体例を挙げながらわかりやすく解説!

  7. 前払費用とは? 間違えやすい勘定科目や仕訳方法についてくわしく解説

  8. 親会社・子会社の帳簿をまとめた連結決算とは?連結決算の基本である『のれん』を解説!

  9. 色んな種類がある「引当金」の意味とその役割について

  10. 事業に大切な精算表の書き方は?書き方や精算表の種類について紹介!