簿記で出題される運転資金とは?問題と解説でわかりやすく解説!
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【目次】
運転資金の概念・イメージ

会社の経営にあたっては、工場や事務所を構える、商品を仕入する、人件費を支払などお金が必要です。会社が支払うお金は大きく分けて2種類あり、設備資金と運転資金と呼ばれます。設備資金とは工場の建設や、機械設備や営業車両など会社の資産を購入するものであり、目に見えて形に残るものを買うお金です。一方運転資金とは目に見えず、形にも残りませんが経営上必要なお金であり、支払いをするために必要な手元の現金のことです。
会社経営では、帳面上で黒字であるにも関わらず、手元の資金が不足する状態が起こり得ます。この状態のとき「運転資金が不足している」と言います。会社は人件費や経費など毎月決まった支出があります。これらは通常、会社の利益から支払うのですが、人件費や経費を支払う時になっても、売上はあるのにまだお金が入金されていない事が良くあります。
買掛金・売掛金・在庫の関係
何故、売上はあるのに入金のタイミングがずれて運転資金が不足するのでしょうか。背景には昔からの商習慣である「掛け取引」です。掛け取引とは、お互いの信用から成り立つ非常に効率的な習慣で、殆どの会社で使われています。商売で取引先との実績が積み上がり、日常的に注文や取引を行うようになれば、お金の支払いは都度より、一定期間でまとめて支払えば事務が大幅に効率化できるのです。この掛取引が運転資金を発生させるのです。掛け取引にあたっては次の勘定科目を使用します。
- 買掛金 商品を仕入して、支払は未だのもの(お金をもらう権利)
- 売掛金 商品を販売して、入金は未だのもの(お金を払う義務)
- 在庫 仕入した販売前の商品、または売れ残り
これらは商品(モノ)が動いても、その時現金(カネ)は動かないことがポイントです。この3つが動くタイミングで運転資金の大小が決まります。
順を追ってみていきましょう。売り先・仕入れ先それぞれ1社との取引とします。
①商品を10,000仕入
まず商品を10,000仕入します。商品は会社に運ばれてきましたが、お金はまだ払っていません。買掛金を計上して、支払の義務を発生させます。商品は在庫として計上します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 在庫 | 10,000 | 買掛金 | 10,000 |
②商品を5,000販売
仕入した在庫10,000のうち、5,000を販売できて配送されました。しかしお金はまだ入金されていません。のこりの在庫は会社に残ったままです。売掛金を計上して、代金を受け取る権利を発生させます。売れ残りは在庫として計上しておきます。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 売掛金 | 5,000 | 買掛金 | 10,000 |
| 在庫 | 5,000 |
この状態で仕入代金の支払日を迎えるとします。
どのようなときに問題か
この状態のまま、仕入代金10,000を支払う日が到来しました。しかし会社にはお金がありません。なぜなら、売掛金5,000は未だ入金されていませんし、在庫5,000も売れ残ったままで、確かに帳面上の売上5,000はあったものの、会社には1円も入っていないからです。しかしお互いの信用で成り立っている掛取引では支払を遅らせることはできず資金繰りがショートします。この状態を「運転資金が10,000足りない」と言います。また資金繰りがショートすることを「収支ズレ」「勘定合って銭足らず」などと言ったりもします。「黒字倒産」というのはこのようにいくら帳面上で黒字でも資金が不足し倒産することです。売掛金の入金がある、または在庫が売れてお金になるまで、自己資金で支払うか、銀行で借りなければなりません。このように運転資金がショートすると資金繰りに奔走しなければならず、経営の負担となるのです。
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改善の方法
資金繰りは運転資金が少ないほど楽になるので、できるだけ工夫が必要です。運転資金を減らすには次の方法があります。
①売掛金を減らす(早く支払ってもらう)
売掛金とは、「代金を支払ってもらう権利」でした。
会社は常に支払いが起こっています。仕入れ代金の支払い以外にも、電気代・燃料代などの経費・人件費などがあり、これらは売上の大小にかかわらず、毎月ほぼ一定額を支払います。売掛金が前もって入金されていれば、手元に現金があるので他の支払いに充てることができます。もし逆に遅れると経費を払うお金が手元にありません。よって売掛金は少ない方が資金繰りは楽になります。
売掛金を減らすには次のやり方があります。
- できるだけ現金支払にしてもらう
- できるだけ短期間で支払ってもらう
先ほどの売掛金5,000が入金になった仕分けは次の通りです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 現金 | 5,000 | 売掛金 | 5,000 |
現金が入った代わりに、売掛金つまり「お金をもらう権利」が消滅したということです。
②在庫を減らす(早く現金化する)
在庫とは、仕入れした商品のうち、まだ売れずに残っているものでした。
当然ながら売れるまではお金にならず他の支払に充てることができません。在庫は売る相手が決まっている、あるいは人気商品などすぐに売れるものであれば問題無いのですが、売れる見込みが無い、また不良品で売れないものはいつまでたってもお金にならず保管料など余分なコストが発生します。よって在庫は少ない方が資金繰りは楽になります。
在庫を減らすには次のやり方があります。
- 出来るだけ早く販売する
- 売れにくくなったものは値段を下げるなどして、少しでも早く現金にかえる。
先ほどの売れ残った在庫5,000が売れた仕分けは次の通りです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 現金(または売掛金) | 5,000 | 商品 | 5,000 |
③買掛金を増やす(支払いを遅らせる)
買掛金は、「仕入れ代金を支払う義務」のことでした。
会社は仕入れ以外にも日常的に支払いを行っています。仕入れ代金の支払日になっても売掛金や在庫が現金にならなければお金が手元にありません。逆に買掛金の支払いがまだ先であればお金になるまで待つことができます。よって買掛金は増えた方(支払いを待ってもらう)方が資金繰りは楽になります。
買掛金を増やすには次のやり方があります。
- できるだけ掛支払にしてもらう
- できるだけ先延ばしして支払いを待ってもらう
先ほどの買掛金10,000を支払った仕分けは次の通りです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
| 買掛金 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
現金を支払った代わりに、買掛金つまり「お金を払う義務」が消滅したということです。
所要運転資金
ここまでは、単純な例として売り手・買い手ともに1社取引と考えてみてきました。実際の経営においてはいくつもの取引先が存在し、会社ごとに取引をする条件が異なる、または取引のタイミングによって支払するまでの期間(立替期間といいます)にバラツキが起こっています。つまり同じ商品を販売しても、買掛金・売掛金の残高が取引先によって違ってくるケースが起こり得ます。
例)商品10,000をA社・B社に販売している場合
A社の支払条件は「販売した月の月末までに支払」
B社の支払条件は「10日締め・25日支払」だったとします。
Aの場合、その月中に入金になりますから、売掛金は最大1か月分までです。B社の場合、「10日締め・25日払い」です。最短ですと10日に販売したものが25日に入金になります。日数としては15日後です。しかし11日に販売したものですと翌月25日にならないと入金にならず、44日後となります。2つを平均すると37日であり、B社の場合は常時1か月分以上の売掛金が発生していることになるのです。ところが経費や人件費の支払いは必ず1か月間隔でやってきます。タイミングによってはお金が足りなくなるケースが出てきます。
このような場合に想定される運転資金額を「所要運転資金」といい、次の式で求めることができます。
所要運転資金=売掛金+在庫-買掛金
バランスシート上では次の通りです
| 資産 | 負債 |
| 売掛金 | 買掛金 |
| 在庫 | 所要運転資金 |
売掛金と在庫は、現金になるまで立替えておく必要があります。買掛金は逆に取引先に立替えてもらっています。このつり合いが取れていればいいのですが、売掛金と在庫の方が上回っていると、その分、会社の資金が不足するわけです。


