経理/簿記試験

消費税の課税対象の判断時の落とし穴

テーマ
経理処理
執筆
公認会計士

消費税の課税・非課税の区分はとてもわかりにくいものです。
同じ費目に見えてもないようによって課税・非課税の区分が異なることもあり、注意が必要です。
今回は、注すべき費用項目にハイライトし、よくある間違いをしないため知識を説明します。
現役の公認会計士が、消費税の課税・非課税区分について、例を混じえながら説明をしているため、時間をかけずに正しい見解を知りたい人におすすめです。

消費税の課税対象の区分

いつも消費税の課税区分の判定で悩む仕訳ってありませんか?

毎回悩みがちな「課税・非課税・不課税」の判定を、この記事では間違いやすい3つの科目について解説します。

ありがちな具体例を元に説明していますので、判断に迷ったときに確認するための記事として是非ご活用ください。

 

▼具体例の前に”課税対象と非課税対象を見極める4つの要件”を知りたい方は関連記事もご覧ください

 

 

消費税の課税対象の区分には「外注費(業務委託費)」は支払先が、法人か個人かに注目する

消費税課税区分における「外注費(業務委託費)」は支払先が、法人か個人かに注目する

税務調査でよく問題になるポイントが外注費にはあります。

それは、外注費に計上されている費用が「給与」に該当しないかという点です。

本来の外注費とは、いわゆる「業務委託費用」のことです。

簡単に「給与」と「業務委託費用」の違いを説明しておきます。

給与は、事業主の管理下にある従業員に対して支払われるもので、契約形態は「雇用契約」。
業務委託費用は、他の法人や個人事業主からの請求書を元に支払われるもので、契約形態は「業務請負契約」。

ご存じの通り「給与」に該当する場合の消費税課税区分は「不課税」となりますので、たとえ科目が外注費だったとしても「課税」にしてはいけません。

社長や担当者から外注費だと言われたので消費税は「課税」にしたというのがよくあるパターンです。

支払先が法人である場合はまず外注費で間違いないでしょう。
しかし、個人名となっている場合には注意が必要です。

建設業を営むA社を例にして考えてみましょう。

A社の社長から経理担当者に下記3件の外注費を支払うよう指示がありました。

①株式会社○○建設
②佐藤太郎(とび職人)
③鈴木次郎(肩書無し)

①からは請求書がA社に届いていましたが、②と③の支払い金額は社長から聞いただけでした。

経理担当者はこの情報を見てどのように判断すればいいでしょうか?

この時点では①が外注費で消費税「課税」ということしか分からないでしょう。

相手方が法人でかつ、請求書も発行されているのでそう判断できます。

②と③についてはいかがでしょう?

②はとび職人さんへの支払いですが、あくまで個人ですので請求書を発行してもらわないと「業務委託費用」だと決定できません。

③は一見アルバイト代かと思われますが、もしかしたら「何でも屋」のような形態で個人事業を営んでいるのかもしれません。

②と③を判断するためには、「業務委託費用」なら相手方に請求書を発行してもらう、「給与」なら給与計算をしておく必要があります。

この論点の怖いところは、外注費で消費税「課税」としていたものが、給与として「不課税」扱いになった場合、源泉所得税の徴収漏れにもなってしまうところです。

少額ならまだしも、源泉所得税が発生する金額の給与を誤って外注費で「課税」扱いにしてしまうと、消費税と所得税ダブルで申告漏れになるということです。

外注費の元帳チェックは特に注意しておこない、個人への支払いがあれば「給与」か「業務委託費用」かの検討を必ずするようにしましょう!

 

交際接待費のうち、「商品券等」の購入時の消費税の課税対象の区分は要注意

交際接待費のうち、「商品券等」の購入時の課税・非課税区分は要注意

交際費でよくある間違いは「商品券等」の購入に関する仕訳です。

具体的には、ビール券、ゴルフチケット、コンサートチケットなど、物やサービスと交換できる券を購入する取引のことです。

物やサービスと交換できるから消費税の課税区分は「課税」だ、と安易に判断してはいけません。

商品券等を購入した場合は、必ず「何のために使うものか」を確認する必要があります。

次の二つの商品券等の使い方で、消費税の課税区分はそれぞれどのようになるか考えてみましょう。

①得意先の部長へビール券を購入して渡した
②得意先からゴルフコンペの誘いを受け、チケットを購入して参加した

①は消費税「非課税」、②は消費税「課税」となります。

二つの違いは、「自社で使うもの」か「他社にあげるもの」かです。

例えば全く同じビアガーデンのチケットを買った場合でも、使途によって以下のようになります。

・得意先の部長へ渡した→非課税
・社員の懇親会用に使用した→課税

本来は購入した時点では「非課税」で処理して、自社で消費した場合に「課税」に変更します。

実務的には、購入した時点で用途をしっかり確認して、1回の仕訳で課税区分を確定させておきましょう!

>>次ページ:諸会費の中でも、クレジットカードの年会費・ゴルフ場の年会費・同業者団体等の懇親会費は、課税対象なのか?

 

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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