経理/簿記試験

消費税の基本を理解しよう─仕組みから申告まで

テーマ
消費税の基本
執筆
公認会計士


日本の消費税は、商品やサービスの売買にかかる間接税です。

消費税は国の財源の一つであり、税収の安定性や税制の公平性を確保する役割があります。

この記事では、日本の消費税の基本概念と計算方法について解説します。

消費税の仕組みと主要な税率

消費税は、国内で商品やサービスを提供する企業(納税者)が、その売上に対して課税される間接税です。

消費税の税率は政府が決定し、現在は10%です。

ただし、食料品や新聞などの一部商品には、軽減税率(8%)が適用されます。

 



▼「簿記で出題される社債の抽選償還とは?計算方法や仕訳方法をわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

納税者の定義

消費税法では、以下の要件を満たす事業者を納税者としています。

・国内で事業を行っていること

・売上高が基準を超えていること

ただし、農業者や医療機関などの特定事業者は、非課税事業者とされており、消費税の納税義務がありません。

国内取引の課税の対象となるための4要件

以下の4要件をすべて満たした場合、国内取引の課税の対象(消費税の適用を受けるもの)となります。

・国内において行うものであること

・事業者が事業として行うものであること

・対価を得て行うものであること

・資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供(※)であること

※消費税法上では、取引の形態を以下の3つに分類して売上を認識しています。

・資産の譲渡:商品の販売、資産の売却など

・資産の貸し付け;建物の賃借、機械のリースなど

・役務の提供;サービスの提供を行うことなど

国内取引の4つの分類

国内で行われる取引は、以下の4種類に分類されます。

不課税取引

不課税取引とは、「国内取引の課税の対象となるための4要件」のいずれかを満たさないため、課税取引とはされない取引のことを指します。

非課税取

非課税取引とは、税の性格から課税することになじまないものや社会政策的な配慮に基づくもの等の特殊な性質のものをいくつか選び出し、限定して、それらについて消費税を課税しないこととしています。

具体的には、土地の譲渡、貸付や住宅の貸し付け、さらに有価証券等の譲渡等15種類が限定列挙されています。

免税取引

免税取引とは。国内取引の課税対象となるための4要件を満たし、非課税取引に該当しないもののうち、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、輸出取引等に該当するものをいいます。

これらの取引については、消費税がかかりません。

免税取引は、課税資産の譲渡等ではあるものの、消費税がかからないことから、0%課税取引とも呼ばれます。

課税取引

上記に該当しないすべての取引を指します。

この取引について、消費税が発生します。

 


課税売上高の計算方法

消費税の課税対象となる売上高は、国内で行われる商品の販売やサービスの提供に対して計算されます。

課税売上高の計算方法は以下の通りです。

課税売上高 = 売上金額(税抜)× 消費税率

▼「消費税の仕訳方法は?会計処理で気を付けるポイントをわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

輸出に関する消費税

輸出は消費税の課税対象外とされています。

これは、商品やサービスが国外で消費されるため、国内の消費税制度の対象から外れるからです。

ただし、この場合でも、国内での製造過程で生じた消費税(入力税)は還付されるため、事業者はこれを申告する必要があります。

仕入税額との相殺

事業者は、消費税を課税売上高に対して納税する一方で、仕入れや経費にかかる消費税(仕入税額)を控除することができます。

この仕組みは、税の二重課税を防ぐ目的で導入されています。

消費税納税額 = 課税売上高から算出される税額 – 仕入税額

 


軽減税率の適用

食料品や新聞などの一部商品には、軽減税率(8%)が適用されます。

軽減税率の適用は、生活必需品への負担を軽減する目的で導入されました。

ただし、どの商品に軽減税率を適用するか、また、どの程度税率を軽減するかは、社会的な議論や政策の方向性によって決定されます。

 

消費税の申告と納付

消費税は通常、事業年度が終了した後に申告・納付を行います。

そのため、会計年度中は消費税に関する計算や記録を正確に行うことが重要です。

また、消費税の申告書には、課税売上高や仕入税額などの詳細な情報を記入する必要があります。

 

▼「消費税の課税対象の判断時の落とし穴」はこちらの記事をご確認ください

消費税の還付制度

消費税には還付制度が存在します。

これは、事業者がビジネスの過程で支払った消費税(入力税)を、売上に対する消費税(徴収税)から差し引くことができる制度です。

この制度により、事業者は最終的に消費者から徴収した消費税とビジネスで支払った消費税との差額だけを納税することになります。

 


消費税と会計

消費税は企業の経理や会計処理において重要な役割を果たします。

売上や仕入れの計算時には、消費税を含めた金額(税込価格)と消費税を除いた金額(税抜価格)を正確に把握する必要があります。

また、消費税の計算エラーは企業の税負担を増加させるだけでなく、税務調査時に問題となる可能性もあるため、注意が必要です。

消費税の未来

近年、消費税の税率は上昇傾向にあります。

これは、社会保障費の増加や国の財政健全化のための財源確保が必要とされているからです。

しかし、税率の上昇は家計への負担増となるため、政策決定には慎重さが求められます。

▼「決算初心者も安心!複雑な法人税と消費税の仕分の覚え方」はこちらの記事をご確認ください

インボイス制度

2023年10月から、日本の消費税制度に大きな変更があります。

それが「インボイス制度」の導入です。

この制度は消費税の計算方法に大きな影響を与え、経理業務にも新たな課題をもたらしました。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、具体的には、売り手と買い手の間で取引があった際に、売り手が発行する請求書(インボイス)に消費税額を明記し、その記載に基づいて消費税を計算するという制度です。

これにより、消費税の計算がより正確になり、脱税防止にも繋がるとされています。

インボイス制度とは

インボイス制度の導入により、消費税の透明性が向上し、脱税防止に役立つというメリットがあります。

また、消費税の計算が請求書に基づくため、記録管理がしやすくなるという利点もあります。

一方で、新たな制度の導入には準備期間やシステムの改修など、事業者にとっての負担も伴います。

特に中小企業では、新たな制度への対応に時間とコストがかかることが問題となっています。

まとめ

この記事では、日本の消費税の基本的な仕組みや計算方法について解説しました。

消費税は日本の税制の中心的な役割を果たしており、経理や税理士、会計士試験の勉強者にとって理解が必要な項目です。

今後も消費税の動向や税制改革に注目して、最新の知識を身につけていくことが重要です。

▼「切手代の勘定科目や仕訳の方法は?消費税にも要注意!」はこちらの記事をご確認ください


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