我が社のお客様は一体どんな層にすべきか?特にこれから起業する場合や、新事業に取り組む際には、とても重要なテーマです。なぜならば、顧客をどんな人にするかで、ビジネスの方法や収益が大きく変わってくるからです。今回は、標的顧客を決めるための基準や最新の手法をご紹介します。
マーケティングの基本をわかりやすく解説!標的顧客(ターゲット顧客)の考え方は?
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- 標的顧客(ターゲット顧客)の考え方
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- 戦略コンサルタント
【目次】
売上を構成するターゲット顧客の重要性
標的顧客を考える際に、まず、売上とは、どういう要素から構成されているかを知る必要があります。
業種や業態によって、違いはありますが、一般的に、売上は、次のような要素に分解できます。
主に売上は、「客数」と「客単価」の積で構成されています。どちらも重要な要素ですが、一般的に客単価をいきなり上げるのは容易ではありません。ましてやこの時代に商品の値上げなどは、よほどのブランド力が無い限り困難です。
普通、客数があれば客単価は0にはなりません。何らかの売上を計上できるためには、顧客の存在は非常に重要なものであると言えます。
標的顧客(ターゲット顧客)を選択する基本的基準
先ず、業種業態を問わず客層とは複数存在します。その中で、どの客層を選択していくかという課題に対して、以下のような基準があります。
収益確保可能なターゲット
ビジネスをする上では、まず何といっても売上や利益が上げられる顧客でなくてはなりません。店舗販売の場合、様々な客層の方が来店しますが、複数ターゲットのうち、購買頻度や購買額の高い層は外せません。ポイントカードの入会情報とPOSシステムの購入履歴から、主要ターゲットが推測できます。
自社の強みを活かせるターゲット
自社の品揃えや販売方法・サービス内容に好感を持つ客層を捉えることで、企業活動がやりやすくなり、顧客維持に繋がります。
個店や中小企業の経営者や店長のキャラクターなども大きな自社の強みです。
ターゲット間のコンフリクト
一般的に標的顧客は単一ではなく、複数存在しますが、顧客の間にコンフリクト(緊張や葛藤)があると、店舗販売などの場合、来店動機にマイナスに作用します。
具体的には、「高齢者と若者」「男性と女性」などの間にコンフリクトが存在すると言われています。
ターゲットを広げる考え方と絞る考え方
顧客に対してその層を広げるという考え方と、狭めるという考え方があります。
ターゲットを広げる考え方
例えば、鉄道会社の顧客は、鉄道を利用して移動サービスを受ける「乗客」です。
しかし、乗客は、何らかの目的で鉄道を利用し、鉄道以外にも何らかの消費活動を行っています。つまり、その消費目的を敢えて作ってあげることで、ターゲット層が拡大出来ます。
例えば駅ビル自体に百貨店やショッピングセンターを作ると、「買い物客」になります。私鉄の阪急や西部など、駅ビルや沿線上に百貨店を展開しているのが良い例です。
また、球団などのスポーツチームを作ると、「観客」というターゲットの拡大が出来ます。阪神タイガースや西武ライオンズが分かりやすい事例です。
ターゲットを絞る考え方
逆に、ターゲットを絞るという考え方も有効です。多くの売上を上げるために、ターゲット層を多くしたいところですが、ターゲットを広くすると、対応するニーズが多様になり、それに合わせて品揃えも総合化するため、特徴のない店になります。
また、中小企業など経営資源が乏しい企業では、在庫を多く抱える総合化戦略は、困難です。
ターゲットを絞り、自社が得意な顧客層に絞って経営資源を投入していく方が、効果的に売上を上げていくことに繋がります。
ターゲットを絞ることを、マーケティング用語では「市場細分化」と言います。市場細分化するための要因としては、以下の3つが挙げられます。
- 地理的要因:その地域の気候、風土、歴史、人口密度、文化、都市化の度合いなど
- 人口統計学的要因:年齢、性別、職業、家族構成、所得水準、学歴、宗教、国籍、人種、など
- 心理的要因:商品に対する好み、生活や仕事に対する価値観、商品やサービスの使用頻度・購買パターンなど
顧客のニーズ・ウォンツ・ディマンズ活用の視点
顧客の欲求レベルが、どの時点にあるのかということも、顧客を設定する重要な要素です。
その際に使用されるのが顧客の「ニーズ」「ウォンツ」「ディマンズ」といわれる用語です。
それぞれ顧客の欲求レベルの深さを表しています。
- ニーズ:おなかが減った
- ウォンツ:ラーメンが食べたい
- ディマンズ:〇〇亭のチャーシュー麵が食べたい
つまり、自社の製品やサービスに対して、顧客層別の欲求レベルはどうなっているかを検討することによって、ニーズレベルの客層に対応すべきか、ディマンズレベルの顧客欲求に応えるべきかが変わってきます。
最近の新しいターゲットの設定方法“ペルソナ”とは
近年、ターゲットをより詳細に定義する「ペルソナ(persona)」と言われる手法が注目を集めています。
もともと古典劇で役者が使用する「仮面」を意味しますが、スイスの心理学者ユングが、「人間の外的側面・自分の内面に潜む自分」と定義したものです。それをマーケティングの世界では、「架空の人物」を設定する手段として活用しています。
従来の顧客設定基準では、主に市場細分化要因を用いて、顧客を定義していましたが、それよりもさらに顧客の属性や生活様式をリアルに描く方法がペルソナです。
具体的には以下のような違いがあります。
従来の市場細分化による顧客像
- 〇〇県に在住
- 30歳代の既婚女性
- 職種はパート
ペルソナを使った顧客像
- 吉田洋子
- 東京都目黒区に在住
- 年齢は35歳
- 夫と子供二人(8歳の男の子、3歳の女の子)
- 週3日、都心のコールセンターでオペレータとして勤務
- ケーキ作りやカフェ巡り、友人とのランチが趣味
- InstagramとFacebookで友人と情報交換
- 週1回はフィットネスジムに通う
- 関心事はマイホームの購入と子供の教育
ペルソナは、従来の顧客の設定よりも詳細で、顧客の考え方や購買行動が想像しやすい設定方法になっています。
そのため、マーケティングを実行する担当者の間で共通認識が作りやすく、より精密に顧客視点に立てるため、成功確率が高い販売促進策や広告宣伝策が打てると言われています。
しかし反面、ペルソナの設定には思い込みや先入観で設定してしまうこともあり、注意が必要です。
ペルソナを設定する場合は、自社と消費者を結ぶホームページやSNS、ブログなどから顧客属性を収集したり、一定数の消費者にイベントなどで集まってもらい、インタビューをしたりして、ペルソナを設定していくと良いでしょう。
まとめ
標的顧客を設定する基準や方法、最近の手法までご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
顧客は収益の源泉であり、顧客をどの層にするかによって、業績に直結する重要事項であるため、その設定方法には様々な方法があることが分かりました。
また、標的顧客は、企業の内外部環境の変化に伴って見直しを図っていく必要があります。今一度、自社の客層を見直して、常に最適な戦略を構築していきたいものです。