監査報告書は、企業の財務諸表に対する監査人の意見を示す重要なドキュメントです。
近年、監査報告書には「KAM(Key Audit Matters)」が導入され、より具体的な情報が開示されるようになりました。
本記事では、日本基準(JGAAP)をベースに、KAMについて解説し、監査報告書の理解を深めることを目的としています。
監査報告書は、企業の財務諸表に対する監査人の意見を示す重要なドキュメントです。
近年、監査報告書には「KAM(Key Audit Matters)」が導入され、より具体的な情報が開示されるようになりました。
本記事では、日本基準(JGAAP)をベースに、KAMについて解説し、監査報告書の理解を深めることを目的としています。
【目次】
KAMの導入は、国際監査基準(ISA)における「ISA 701 重要な監査事項の特定および監査報告書への記載」の制定を受けて行われました。
日本では、日本の監査基準である「新監査報告書の様式に関する監査基準(以下、新監査報告書様式基準)」が2019年4月1日以降の決算期から適用され、KAMが監査報告書に記載されるようになりました。
KAM導入の背景には、以下のような要因があります。
・投資家やステークホルダーからの情報開示要求の高まり
・国際的な監査基準の整備と調和
・企業の経営状況やリスクへの理解を深めるための情報提供
KAMは、監査人が監査過程で遭遇した事項の中から、特に重要と判断される事項を選定します。
KAMの選定は、監査人の専門的判断に基づくため、一定の主観性が含まれますが、「新監査報告書様式基準」において、以下のような要素を考慮してKAMを決定することが求められています。
(1) 財務諸表に関連するリスクの程度
(2) 監査の計画や実施における重要性
(3) 監査証拠の取得に関する難易度
(4) 監査人の専門的判断の適用度合い
(5) その他、監査人が特に重要だと判断する事項
KAMは、国際会計基準(IFRS)や米国基準(US GAAP)といった他の会計基準においても導入されています。
各国の監査基準は、それぞれの国の法令・規制や経済状況に適合するように設計されていますが、KAMの導入により、監査報告書の国際的な比較・分析が容易になりました。
IFRSやUS GAAPでは、KAMの概念や選定基準は日本基準と類似しており、監査人が特に重要と判断した事項を開示することが目的です。
ただし、具体的な適用方法や記載内容には、各国の監査基準や法令・規制の違いが反映されるため、注意が必要です。
投資家やステークホルダーは、KAMを含む監査報告書を比較・分析することで、企業の財務諸表に関するリスクや監査上の課題を国際的な視点で把握することができます。
これにより、より適切な投資判断や企業評価が可能となります。
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KAMは、監査報告書の情報開示において革新的な変化をもたらしました。
今後、監査基準や情報開示の要求がさらに進化することが予想される中で、KAMはどのように発展し、企業や投資家にどのような影響を与えるのでしょうか。
将来的には、KAMの選定基準や記載方法がさらに洗練され、企業ごとに特徴的なリスクや課題がより明確に開示されることが期待されます。
また、企業は、KAMに関連するリスク対策の進化や、新たなリスク要因の発見・評価を通じて、より効果的なリスク管理を実現できるようになるでしょう。
投資家やステークホルダーにとっては、KAMの情報がさらに充実し、企業の財務諸表のリスクや監査上の課題をより詳細に把握できるようになることで、投資判断や企業評価がより正確かつ迅速に行えるようになるでしょう。
また、KAMの国際的な普及により、各国の監査基準がさらに整備・調和され、企業間の財務諸表の比較・分析が容易になることが期待されます。
これにより、国際的な投資家やステークホルダーが、各国の企業に対する適切な投資判断や評価を行いやすくなるでしょう。
KAMの導入は、企業、監査人、投資家、ステークホルダーすべてにとって、新たな価値をもたらす可能性があります。
今後のKAMの発展とその影響に注目しつつ、適切な情報開示やリスク管理が重要であることを念頭に置くことが求められます。
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KAM(Key Audit Matters)は、監査報告書に記載される新たな情報で、監査人が特に重要だと判断した事項を開示します。
日本では、2019年4月1日以降の決算期から「新監査報告書の様式に関する監査基準」に基づいてKAMが監査報告書に記載されるようになりました。
KAM導入の背景には、投資家やステークホルダーからの情報開示要求の高まりや国際的な監査基準の整備・調和があります。
KAMの決定方法は、監査人の専門的判断に基づき、財務諸表に関連するリスクや監査の計画・実施の重要性などを考慮して選定されます。
監査報告書には、KAMの概要や関連する財務諸表の項目・金額、実施した監査手続きの概要、得た監査証拠に基づく結論が記載されます。
KAMと監査意見は、共に監査報告書に記載される情報ですが、目的や内容が異なります。
監査意見は企業の財務諸表が適正かどうかの判断が含まれるのに対し、KAMは監査過程で特に重要と判断された事項を開示することを目的としています。
KAMの導入により、投資家やステークホルダーは企業の財務諸表に関連するリスクや監査上の課題について、より具体的な情報を得ることができます。
これにより、企業の経営状況やリスクへの理解が深まり、より適切な投資判断が可能となります。
企業は、適切な情報開示を通じて、信頼性の向上や投資家との良好な関係を築くことが求められます。