会計基準は、企業の財務報告に影響を及ぼし、企業の財務状況と業績を正確に表現するための重要なガイドラインです。
会計基準は地域や国により異なるため、同じ事象に対する会計処理が異なる場合があります。
本ブログでは、国際財務報告基準(IFRS)と日本の一般に認められた会計原則(日本基準)における引当金、偶発負債及び偶発資産の取り扱いの違いについて解説します。
まずは各用語の定義から始めましょう。
会計基準は、企業の財務報告に影響を及ぼし、企業の財務状況と業績を正確に表現するための重要なガイドラインです。
会計基準は地域や国により異なるため、同じ事象に対する会計処理が異なる場合があります。
本ブログでは、国際財務報告基準(IFRS)と日本の一般に認められた会計原則(日本基準)における引当金、偶発負債及び偶発資産の取り扱いの違いについて解説します。
まずは各用語の定義から始めましょう。
【目次】

引当金は、将来の特定の負債または損失が発生する可能性があるために、現在の会計期間で設定される予備資金です。
具体的には、製品保証やリストラなど、将来の経費や損失が予想される場合に、その見込み金額を現在の損益から控除し、資産の中に引当金として計上します。
偶発負債とは、特定の事象(裁判の結果、環境修復費用、製品リコールなど)の結果として発生する可能性のある負債のことを指します。
これらは特定の未来の事象の結果として発生するため、通常は現時点で金額が正確には決まっていません。
偶発資産とは、企業が特定の条件下で受け取る可能性のある資産を指します。
これは保険の給付や訴訟の勝訴など、未来の事象の結果として得られる可能性のある資産です。
次に、これらの項目がIFRSと日本基準でどのように取り扱われるかを詳しく見ていきましょう。
IFRSでは、IAS 37「偶発負債、不確実な資産および引当金」により、引当金の計上について規定されています。
IAS 37によれば、以下の条件を全て満たす場合に引当金を計上します。
日本基準では、企業会計原則の注解18に引当金計上の要件が規定されています。
注解18によれば、以下の条件を全て満たす場合に引当金を計上します。
日本基準とIFRSの最大の違いは、日本は債務性のない引当金も計上するが、国際財務報告基準は、債務性のある引当金のみを計上することです。
代表的な例として、修繕引当金が取り上げられます。
日本は債務性のない引当金も計上するが、国際財務報告基準は、債務性のある引当金のみを計上することです。
日本基準では修繕引当金は引当金の要件を満たせば計上しなければなりませんが、IFRSでは、上記3要件のうちの「企業が法的または事実上の義務を有している。」の要件を満たさないため、引当金として計上しないこととなります。
IFRSでは、IAS 37により引当金の具体的な計上基準が定められています。
例えば、製品保証に関する引当金については、売上が認識される時点で、将来の保証による修理費用等の流出が予想される場合、その費用を引当金として計上します。
その際、将来の流出額は、過去の経験や他の証拠に基づいて推定されます。
一方、日本基準では、企業会計基準第13号「引当金に関する会計基準」において引当金の取り扱いが定められています。
同基準では、製品保証引当金等の具体的な引当金についての計上基準が定められており、一般に、将来の負債または損失の発生が合理的に予見され、その金額が合理的に推定可能な場合に引当金を計上することが求められています。
IFRSでは、偶発負債はIAS 37に基づき、法的または事実上の現時点での義務が存在し、それにより経済的利益の流出可能性が高いとき、かつその流出額が信頼性高く推定できる場合に、負債として計上されます。
日本基準では、偶発負債は、企業が特定の未来の事象により負債を負う可能性がある場合、その見込み金額を負債として計上します。
ただし、偶発負債の見込み金額が合理的に推定できない場合、または負債が発生する可能性が極めて低い場合は、負債として計上せず、注記開示の対象となります。
IFRSでは、偶発負債の認識に関してもIAS 37に規定があります。
例えば、環境規制により企業が特定の環境修復活動を行う義務を負った場合、その義務を果たすための予想される費用を偶発負債として計上します。
この時の偶発負債の金額は、最も可能性が高いと考えられる金額、または可能性の重みを考慮した平均金額で評価されます。
日本基準では、「負債等の評価及び引当金に関する会計基準」により偶発負債の取り扱いが定められています。
例えば、企業が訴訟を受け、損害賠償義務を負う可能性がある場合、その賠償額を偶発負債として計上します。
ただし、その賠償額が合理的に推定可能で、かつ損害賠償義務の発生が合理的に確定的であるときのみに計上します。
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IFRSでは、偶発資産は、経済的利益の流入がほぼ確実である場合にのみ、資産として認識されます。
経済的利益の流入の可能性が高いが、ほぼ確実とは言えない場合は、偶発資産を開示のみとし、財務諸表上には計上しません。
日本基準では、偶発資産は、特定の未来の事象により資産を得る可能性がある場合に、その見込み金額を資産として計上します。
ただし、偶発資産の見込み金額が合理的に推定できない場合、または資産を得る可能性が極めて低い場合は、資産として計上せず、注記開示の対象となります。
IFRSでは、IAS 37により偶発資産の認識基準が定められています。
例えば、企業が訴訟を勝訴し、賠償金を受け取る見込みがある場合、その賠償金を偶発資産とします。
ただし、その受取がほぼ確定的であるときのみ資産として認識します。つまり、勝訴の見込みが高いだけでは、偶発資産として認識されません。
日本基準では、「負債等の評価及び引当金に関する会計基準」により偶発資産の取り扱いが定められています。
例えば、企業が訴訟を勝訴し、賠償金を受け取る見込みがある場合、その賠償金を偶発資産とします。
ただし、その受取が合理的に確定的で、かつ受取金額が合理的に推定可能なときのみに資産として計上します。
IFRSと日本基準とでは、引当金、偶発負債及び偶発資産の取り扱いに違いがあります。
IFRSは、法的または事実上の義務の存在、経済的利益の流出の可能性、その額の信頼性高い推定が必要とされます。
一方、日本基準では、未来の事象による見込み金額を基に、引当金や偶発負債、偶発資産が計上されます。
この違いを理解することで、同じ事象でも異なる会計基準により異なる財務報告がなされる理由を理解することができます。
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