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電子記録債権取引(でんさい)とは?電子記録債務の期日が到来した際の仕訳方法や会計処理を解説!

テーマ
電子記録債権取引とは?
監修
経営コンサルタント

近年では、企業の資金調達において手形などの取引に代わる「電子記録債権」が主流化しつつあります。手形のデメリットを解消する新しい金銭債権・債務です。これまで手形で支払いや代金回収処理を行ってきた方は、なにやら難しく感じるかもしれませんがその実態は効率が良く、良いことだらけです。

当記事では、現在増加している「電子記録債権」の内容と仕訳に関して解説します。

これから電子記録債権を導入しようと検討されている企業にお勤めの方は、ぜひ参考にしてください。


「電子記録債権」とは?

電子記録債権とは、中小企業における資金調達の効率化を図るために創設されました。一番よく耳にする「でんさい」の他、「電子ペイ」・「電手」・「支払手形削減サービス」の4種類を電子記録債権と言います。従来、中小企業間の決済において、手形を用いる企業が多く、現在もこれからも手形での取引がなくなることはないでしょう。

しかし、手形での取引には以下のデメリットがあります。

  • 印紙代や手形帳代の発生
  • 紙ベースであるためのコスト発生
  • 不渡りの可能性
  • 紛失・盗難の可能性

これらのデメリットを解消し、さらに利便性を上げるのが電子記録債権です。

電子記録債権と電子記録債務の発生時の仕訳

取引の流れとしては、債務者(支払う側)が記録原簿に登録することで電子記録債務を発生させます。そうすると、債権者(お金をもらう側)に電子記録債権が発生したことが通知されます。

これまで手形で取引を行ってきた方は、手元に手形がない状態で、買掛金又は売掛金の処理をするといったイメージでしょう。

仕訳の具体例は、以下の通りです。

例1「A社は、B社に対する買掛金100円について電子記録債務の請求を行った」

借方 金額 貸方 金額
買掛金 100 電子記録債務 100

電子記録債務勘定は、「あとでお金を支払う義務」として負債の増加、つまり貸方へ。買掛金勘定は、仕入れた時点で発生させていた買掛金の処理を行ったため、借方へ。

これは、手形で支払った際の「支払手形」の処理の考え方と同様です。

例2「B社は、A社に対する売掛金100円について電子記録債権の発生通知を受けた」

借方 金額 貸方 金額
電子記録債権 100 売掛金 100

電子記録債権勘定は、「あとでお金をもらう権利」として資産の増加、つまり貸方へ。売掛金勘定は、売り上げた時点で発生させていた「売掛金」の処理を行ったため、借方へ。

これは、手形で売掛金回収を行った際の「受取手形」の処理と同じ考えです。

電子記録債権と電子記録債務の期日が到来したときの仕訳

支払期日になると、記録した金額が債務者側の口座から引き落とされ、債権者側の口座に振り込まれます。支払手形・受取手形の処理と似ていますね。

具体的な例題は以下の通りです。

例3「A社は、B社に対する電子記録債務100円の支払期日が到来し、指定の当座預金から引き落とされた」

借方 金額 貸方 金額
電子記録債務 100 当座預金 100

電子記録債務はこの時点で消滅しますので、負債が減る意味で借方へ。当座預金の残高が減るので、資産の減少の意味で貸方へ。

例4「B社は、A社に対する電子記録債権100円の支払い期日が到来したため、指定の当座預金に振り込まれたことを確認した」

借方 金額 貸方 金額
当座預金 100 電子記録債権 100

電子記録債務はこの時点で消滅しますので、あとでお金をもらう権利がなくなる=資産の減少の意味で貸方へ。当座預金の残高が増えるので、資産増加の意味で借方へ。

支払期日が到来したら債権者も債務者もその取引を消滅させ、口座残高を増減させます。

この処理は、手形での取引と同じ考え方ですので必要以上に悩むことはありません。


電子記録債権を譲渡したときの仕訳

電子記録債権では、その権利を譲渡・割引することができます。手形で言うと裏書することです。しかも、手形ではできなかった分割ができます。

具体的な例題は以下の通りです。

例5「B社は、電子記録債権100円のうち、50円を買掛金の支払いに充当した」

借方 金額 貸方 金額
買掛金 50 電子記録債権 50

電子記録債権勘定は、電子記録債権の残高から充当するため資産の減少、つまり貸方へ。買掛金勘定は、支払う義務を減少させる意味で、借方へ。

例6「B社は、残りの電子記録債権50円のうち、20円を割引し現金化した」

借方 金額 貸方 金額
現金 30 電子記録債権 50
電子記録債権売却損 20

例5で電子記録債権の残高は50円になっており、これについての仕訳です。

電子記録債権勘定は、残高が0になり資産を減らす処理のため、貸方へ。

現金勘定は、割引額との差額30円を借方へ。

割引額は「電子記録売却損」勘定を用いて、費用の発生の意味で借方へ。

このように、手形と大きく違うポイントは分割できる点です。便利な分、仕訳の時は少しだけ注意が必要でしょう。

また、割引した額を電子記録債権売却損で処理する方法は、簿記2級試験の出題範囲に含まれます。

電子記録債務の取扱いで注意すること

手形を管理する手間や銀行でのやり取りを考えると、電子記録債権の導入は経理担当者にとってありがたいものと言えます。

仕訳自体も、従来の手形処理と似ているのですぐに馴染むでしょう。

しかし、取り扱う上で注意すべきポイントもいくつかあります。

  • 銀行によっては、手数料を差し引かれた額で振込が行われる
  • パソコン上での手続きのため、慣れるまで不安がある

各銀行によって、決められた金額に応じて手数料が差し引かれることがあります。

どの売掛金に対する電子記録債権なのかを判断する時は、手数料のことも頭にいれておいてください。

また、これまでは手形を手元に置いて処理していたことが、パソコン上での手続きになります。発生通知はメールできたり、システム上でのお知らせだったりとその機関によって様々です。パソコンの操作が苦手な担当者も、画面上での支払いや入金の確認となるのです。慣れるまでは、不安が大きいかもしれません。

まとめ

効率化やペーパーレス化を図り、世の中は変化し続けています。企業同士の取引も、主流であった銀行振込や手形は減っており、電子化が広まっています。経理担当者としては、新しく処理方法を増やすことに不安や違和感があるかもしれませんが、電子記録債権取引は、それを上回るメリットがたくさんあるのです。

国が推し進める事業の一環ですので、これからもこの取引は広がっていくとみられています。簿記試験をこれから受ける方も、「電子記録債権・債務」勘定を使った仕訳が出題されるので、ぜひ当記事を参考にしてみてください。


Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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