皆さんは銀行勘定調整表という表はご存じでしょうか?普段の生活で銀行勘定調整表を作っている、という方はほとんどいないと思います。ですが、この表は簿記検定の試験ではよく出題されています。出されている試験範囲は、日商簿記検定では2級以降です。出題形式は、単体として出題されるときもあれば、貸借対照表などの表を作る際の要素として出題される時もあり、これを抑えていないと様々な箇所で失点してしまいます。一緒に確認していきましょう。
簿記試験で頻出!銀行勘定調整表の解き方を初心者にもわかりやすく解説!
- テーマ
- 銀行勘定調整表の解き方
- 監修
- 簿記マスター
【目次】
銀行勘定調整表とは?
では、まずは銀行勘定調整表の意味についてです。なぜこの表を作るのでしょうか。
銀行勘定、といいますと会社側からしたら預金に関するものです。その預金というのは当座預金のことを指しています。
銀行と企業、会社が預けている金額と銀行が預かっている金額は、ふつうは等しくなるはずなのですが、帳簿上ではズレができてしまいます。なぜかというと、たとえば銀行の営業時間外に資金を預け入れた場合、会社側はもう預金した、という状況ですが、銀行側ではまだ手続きができていないため、まだ預かっていない、というような状況になります。
こういった銀行と会社の帳簿のズレを計算し、その不一致を調整するために銀行勘定調整表を作成しています。
銀行勘定調整表の不一致の原因
先ほどもありましたが、銀行勘定調整表は会社と銀行のズレを調整させる表です。ではその不一致の原因は、どういったものがあるのでしょうか。
①時間外預入
先ほどの例でもありましたが、銀行の営業時間外に預け入れたことによって発生したズレです。
②未取立小切手
これは、小切手を受け取っていましたが、その小切手の金額を銀行が小切手をこちらに渡した相手側の銀行から、まだ取り立てを行っていないことにより発生したズレです。
③未取付小切手
こちらは先ほどの小切手とは異なり、こちらが小切手を渡しましたが、受け取った相手がまだ銀行で換金をしていないことにより発生したズレです。
④誤記入
こちらは会社の仕訳などのミスによるズレです。
⑤未渡小切手
この小切手は、小切手を作成して当座預金口座の金額を減らしたものの、まだ相手に渡していないことによって発生したズレです。
⑥連絡未通知
これは、銀行の方ではすでに手続きをしていたものの、その連絡が会社に届いていなかったために生じたズレです。
6種類ありますが、①~③は仕訳をする必要はありません。④~⑥は仕訳をする必要がありますので注意しましょう。
実際の問題の際には、銀行から送られてきた残高証明書残高という数字を使います。
銀行勘定調整表のかたち
こちらが、銀行勘定調整表です。問題などによって表示形式はまちまちです。この場合は両者区分調整法という書き方を使います。
借方に会社の残高、貸方に銀行の残高となっています。それぞれ下に行くと、加算・減算と書かれ、その理由と金額が書いてあります。そして、最後の金額は会社と銀行で必ず合致するようになっています。というより、問題の形式として、この金額を合わせたうえで、どこかの金額が抜け落ちている、というものが多いです。この金額が必ず一致する、ということは覚えておきましょう。
ここまでの記入は、基本的には解答用紙・問題用紙に書かれています。金額を出すための計算はそれほど難しいものではありませんので、最後に問題を解いてみましょう。
銀行勘定調整表を解いてみよう
最後に、問題を解いてみましょう。初めての方は、まずは解説をみながら一緒に解きましょう。
例題
以下の条件を踏まえ、銀行勘定調整表の作成と、仕訳を行いなさい。また、仕訳の必要のない箇所には「仕訳なし」と借方に記入しなさい。
①B株式会社に商品を売り上げ、代金として100,000円の小切手を受け取り、当座預金口座に預け入れていた。期日になったが、銀行はまだ取り立てを行っていなかった。
②CC株式会社から商品60,000円を仕入れ、小切手を振り出した。しかし、CC株式会社はまだ取り立てを行っていない。
③銀行の営業時間外に40,000円を預け入れた。
④AD株式会社に商品XXXX円を売り上げ、掛けとしていた。その代金が振り込まれたが、銀行より通知は来ていなかった。
⑤広告費45,000円を当座預金より支払った際に、担当者のミスで帳簿上は60,000円の支払いとなっていた。
⑥Z株式会社に対する買掛金70,000円を支払うために小切手を振り出したが、Z株式会社に渡せていないまま金庫に保管されていたことが判明した。
解答記入用シート
仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
① | ||||
② | ||||
③ | ||||
④ | ||||
⑤ | ||||
⑥ |
銀行勘定調整表
解答・解説
仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
① | 仕訳なし | |||
② | 仕訳なし | |||
③ | 仕訳なし | |||
④ | 当座預金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
⑤ | 当座預金 | 15,000 | 広告費 | 15,000 |
⑥ | 当座預金 | 70,000 | 買掛金 | 70,000 |
銀行勘定調整表
では、解説に移ります。まずは、仕訳からです。
①は、銀行が手続きを行っていない、という状況です。こちらが何かしなければいけないというわけではないので、仕訳は行いません。
②は、CC株式会社が手続きを行っていないという状況です。すでにこちらは当座預金を減少させている手続きを行っていますので、こちらは仕訳を行いません。
③も、こちらの仕訳は行いません。
④は、売掛金の回収をした、という仕訳を行います。金額については、表を埋めてからになりますので、後回しにしておきましょう。
⑤は、広告費の実際は45,000円の支出だったのにも関わらず、帳簿上では60,000円の支払いになっている、という状況です。差額の15,000を消去しましょう。
⑥は、小切手を振り出した際の仕訳を反対にして取り消します。振り出し時の仕訳を考えてやってみましょう。
次に、銀行勘定調整表です。先ほどの仕訳などから金額を埋めていきます。そうすると、今回は借方の「連絡未通知」欄の金額がわかりませんので、貸方の銀行側の合計を算出し、そこから金額を出します。計算式は、
(500,000+40,000+100,000-60,000)-(515,000+85,000)=△20,000
20,000円という金額が出ました。そのまま仕訳④にも金額を記入して完了です。
いかがでしたでしょうか。銀行勘定調整表は、仕組みがわかればとても簡単です。あせらず丁寧に解きましょう。是非、頑張って下さい。