経理/簿記試験

前受収益とは?間違えやすい勘定科目や仕訳方法についてくわしく解説

テーマ
前受収益とは?
監修
監査法人職員


経過勘定とはどのような科目を指すか知っているでしょうか。経過勘定とは、実際の入出金と収益・費用の計上時期が異なるときに、そのズレを調整するときに使用する勘定科目です。

経過勘定のひとつに「前受収益」があります。前受収益と間違えやすい科目には前受金があるので、経理担当者はそれぞれの内容を理解していないといけません。

この記事では前受収益についてくわしく解説していきます。最後まで読めば確実に理解できますので、正しい判断ができるようにしていきましょう。

前受収益の意味を解説

はじめに、前受収益の意味について確認してみましょう。企業会計原則では、前受収益についてつぎのように定義しています。

 

前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。

引用:企業会計原則注解5「経過項目勘定について」(2)

この定義を念頭におきながら、前受収益についてくわしく解説していきます。なお、会計用語のひとつに「役務の提供」がありますが、わかりやすく「サービスの提供」に置き換えて説明します。

 



▼「簿記で出題される社債の抽選償還とは?計算方法や仕訳方法をわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

前受収益とは

前受収益のポイントは、サービスの提供をまだ行っていないにもかかわらず、すでに代金を受け取っている点です。

収益は、サービスの提供を行った時点で計上しますが、サービスの提供を行う前に受け取った代金は当期の収益とはなされず、翌期に繰り延べられます。翌期になって、サービスの提供を行った時点で収益に計上します。

前受収益などのような経過勘定は、決算時に貸借対照表の「負債の部」に計上します。

前受収益と前受金との違い

前受収益と間違えやすい科目に「前受金」があります。前受収益と前受金について共通点と相違点を整理してみましょう。

  前受収益 前受金
共通点 サービスの提供を行う前に代金を受け取っている。
 

 

相違点

サービスの提供を継続的に行うもの サービスの提供を継続的に行うものではない。
決算時に計上 期中に計上
期首振替が必要 期首振替が不要

前受収益が、サービスの提供を継続的に行うものに対し、前受金はサービスの提供を継続的に行うものではありません。

例えば、土地の売買など高額な取引前に、手付金としてを代金の一部を受け取るケースが前受金にあたります。

前受収益の仕訳方法

ここからは前受収益の仕訳方法を、具体的な例示をもとにくわしく解説していきましょう。

前受収益の仕訳方法①

例1-1)自社保有の建物を12月1日に賃貸契約し、賃料960,000円(年払い)を受け取った。(会計期間:4月1日~3月31日)

借方 金額 貸方 金額
現金預金

960,000円

受取賃貸料

960,000円

例1-2)決算時(3月31日)に翌期分の収益640,000円を前受収益に計上した。

借方 金額 貸方 金額
受取賃貸料

640,000円

前受収益

640,000円

  • 当期の収益は、960,000円÷12カ月×4カ月(12月〜3月分)=320,000円
  • 翌期の収益は、960,000円÷12カ月×8カ月(翌4月〜11月分)=640,000円
  • 当期の損益計算書の受取賃貸料に、960,000円-640,000円=320,000円を計上

例1-3)翌期首(4月1日)に振替処理を行った。

借方 金額 貸方 金額
前受収益

640,000円

受取賃貸料

640,000円

翌期首に決算時と反対の振替仕訳を計上することで前受収益の残高は消去され、4月〜11月分の収益(受取賃貸料)640,000円が計上されます。

前受収益の仕訳方法②

例2-1)投資有価証券の利息を、8月1日に600,000円(1年分)を受け取った。(会計期間:4月1日~3月31日)

借方 金額 貸方 金額
現金預金

600,000円

受取利息

600,000円

例2-2)決算時(3月31日)に翌期分の収益200,000円を前受収益に計上した。

借方 金額 貸方 金額
受取利息

200,000円

前受収益

200,000円

  • 当期の収益は、600,000円÷12カ月×8カ月(8月〜3月分)=400,000円
  • 翌期の収益は、600,000円÷12カ月×4カ月(翌4月〜7月分)=200,000円
  • 当期の損益計算書の受取利息に、600,000円-200,000円=400,000円を計上

例2-3)翌期首(4月1日)に振替処理を行った。

借方 金額 貸方 金額
前受収益

200,000円

受取利息

200,000円

翌期首に決算時と反対の振替仕訳を計上することで前受収益の残高は消去され、4月〜7月分の収益(受取利息)200,000円が計上されます。

 


前受収益の留意する点

前払収益は、受け取ったお金が翌期に該当するものは当期の収益から除く点がポイントになることがお分かりいただけたでしょうか。

 

正しい期間配分計算を行わないと、過大または過少に収益を計上してしまうことになってしまいます。前受収益の計上は、損益計算書に大きな影響を与えるため正確に管理することが必要になるでしょう。

 

翌年度の期首には、決算時と反対の振替仕訳を起こすことも忘れてはいけません。

 

▼「消費税の仕訳方法は?会計処理で気を付けるポイントをわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

まとめ

今回は、前受収益について、前受金との違いや仕訳方法を解説してきました。

 

正確な期間損益計算を行うためには、前受収益などの経過勘定と呼ばれる科目について適切な処理を行わなければなりません。

 

前受収益は、金融や不動産などで発生する科目ですが、近年はサブスクリプションなど新たな事業を行う会社もあります。サブスクリプションは前受収益の計上が必要になるので、正しい知識を身につけておきましょう。

▼「切手代の勘定科目や仕訳の方法は?消費税にも要注意!」はこちらの記事をご確認ください

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