経理/簿記試験

「消耗品」と「備品」の違いは?具体的な例をあげながら詳しく解説!

テーマ
消耗品と備品の違い
監修
簿記マスター

会計処理で迷うことが多い勘定科目に「消耗品」と「備品」があります。消耗品は損益計算書において費用科目になり、備品は貸借対照表において資産科目になります。経理担当者は、この二つの科目の意味についてきちんと区別できているでしょうか。

本記事では、消耗品と備品の内容についてくわしく解説していきます。最後まで読めば確実に理解できますので、正しい判断ができるようにしていきましょう。



消耗品と備品の違い

はじめに、消耗品と備品の違いはつぎのとおりです。

⮚消耗品:使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品
⮚備品:使用可能期間が1年以上のもので取得価額が10万円以上の什器備品

 

それぞれ解説していきましょう。

消耗品とは

消耗品費は、国税庁によると以下のように定義されています。

⮚帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
⮚用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費
引用:国税庁 確定申告書等作成コーナー|消耗品費

 

この定義によりますと、以下のようなものが消耗品としてあげられるでしょう。
事務用品 文房具、封筒、印鑑、コピー用紙、インク、トナー
パソコン周辺機器 キーボード、マウス、USB、ケーブル、ソフトウェア
什器 机、椅子、書棚、ロッカー、電話
日用品 タオル、洗剤、蛍光灯、ゴミ袋、観葉植物、乾電池
その他 切手、収入印紙、ガソリン、灯油

消耗品の会計処理

勘定科目は「消耗品費」となり、全額「費用」として損益計算書に計上します。

備品とは

備品は、取得価額が10万円以上で耐用年数が1年以上のものであるため、内容は多岐にわたります。国税庁のサイトに耐用年数表が掲載されているので、一例を抜粋してみましょう。

構造・用途 細目 耐用年数
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品 応接セット 5年
電気・ガス機器 6年
事務機器、通信機器 電子計算機 4年
ファクシミリ 5年
時計、試験機器、測定機器 時計 10年
容器、金庫 手さげ金庫 5年

引用:国税庁 確定申告書等作成コーナー|耐用年数(器具・備品)(その1)

備品の会計処理

勘定科目は「備品」となり、全額「固定資産」貸借対照表に計上します。一方、備品と消耗品の一番の違いは、耐用年数に応じて減価償却をすることです。耐用年数は上記の表のように購入した備品の内容によって異なります。

正しい会計処理をするためには、正確な減価償却費を計算しなければなりません。そのため、購入した備品一つ一つに対して台帳を作成して管理するのが望ましいでしょう。

一括償却資産

一括償却資産とは、通常の耐用年数に応じた減価償却ではなく、全て3年間で一律に均等償却できる特例制度です。備品に計上する資産のうち、20万円未満のものについては一括償却資産に選択適用できます。

例えば耐用年数が5年の手提げ金庫を買ったとしても、金額が15万円であれば一括償却資産として計上し、3年間で償却が終わるというメリットがあります。

少額減価償却資産

少額減価償却資産とは、備品に計上する資産のうち、30万円未満のものについては全額を一括償却できる特例制度です。ただし、一定の要件に該当する中小企業しか適用できません。

一括償却資産は、20万円未満までの備品について3年間の均等償却となりますが、少額減価償却資産は1年間に全額償却できます。

少額減価償却資産の特例が適用可能な企業は、青色申告で資本金が1億円以下の中小企業に限ります。さらに、全額償却できるのは年間300万円といった上限があります。

消耗品・一括償却資産・少額減価償却資産の違い

ここまで解説してきた「消耗品」「一括償却資産」「少額減価償却資産」の違いを表にまとめましたので、おさらいしておきましょう。

消耗品 一括償却資産 少額減価償却資産
対象金額 10万円未満 10万円~20万円未満 10万円~30万円未満
適用できる法人 全法人 全法人 青色申告法人である中小企業
年度ごとの上限 なし なし 300万円まで
損金処理 全額 3年間均等償却 全額

消耗品と似ている科目との違い

消耗品と似ている科目に「事務用品費」と「雑費」があります。どう区別したらよいか確認していきましょう。

事務用品費

事務用品費とは、消耗品に計上するもののうち、文房具などの事務関係のものに限って使用する勘定科目です。

事務用品は、ボールペンや消しゴムなど取り扱う量が多く非常に煩雑になるため、消耗品の中から独立して管理しやすくする勘定科目です。

雑費

雑費とは、どの勘定科目にも属さないものを処理する勘定科目です。少額な物品や一時的にしか発生しないものを購入したときなどに使用します。

消耗品と備品の仕訳はどうなる?

ここからは消耗品と備品の仕訳方法について、具体例を用いて解説していきましょう。

消耗品の仕訳方法

例1)1台9万円のパソコンを1台購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 90,000円 現金 90,000円

例2)1台9万円のパソコンを2台購入した。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費 180,000円 現金 180,000円

パソコン2台分の購入費は18万円になりますが、取得価額10万円未満の判断は物品1台当たりの金額になります。上記の例のようにパソコンを2台購入して18万円支払っても、1台当たりの9万円で判断するため、消耗品費に計上します。

また、パソコンによってはケーブルなどの周辺機器を購入しないとパソコン自体が作動しないものもあります。そのようなケースは、周辺機器も含めた合算額で判断します。

備品の仕訳方法

例3)1台16万円のパソコンを1台購入した。(パソコンの耐用年数4年)

借方 金額 貸方 金額
備品 160,000円 現金 160,000円

決算時(直接法)

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 40,000円 備品 40,000円

取得価額の16万円を耐用年数の4年で割ると年度ごとの減価償却費は4万円です。直接法は、備品から減価償却費を直接控除します。

決算時(間接法)

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 40,000円 備品 40,000円

間接法は、減価償却費累計額を計上します。

まとめ

今回は、消耗品と備品について、内容は仕訳方法などについて解説しました。

消耗品と備品の判断に迷うケースもあるかもしれません。そのときは、定められた定義と会計処理の違いが正しく理解できていれば、業務を進めることができるでしょう。また、一括償却資産や少額減価償却資産など、償却方法の選択しだいでは税金が変わってくる可能性があります。

経理担当者は、正しい判断ができるようにきちんと内容を理解しておきましょう。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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