経理/簿記試験

連結会計を難しくさせている大きな要因「非支配株主持分」をわかりやすく解説!

テーマ
連結会計と非支配株主持分
監修
簿記マスター

みなさんは、連結会計、と聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。難しい、ややこしい、面倒くさい…と思われる方が多いのではないでしょうか。そして、それらの理由、連結会計を難しくさせている大きな要因は「非支配株主持分」の存在です。今回は、そんな非支配株主持分を学び、連結会計をもっと理解していきましょう。

連結会計とは?

ではまずは、連結会計についておさらいしておきましょう。「のれん」に関する記事をすでにお読みの方は、ここは飛ばしていただいて大丈夫です。もちろん、復習していただいても構いません。

連結会計とは、2社以上の、支配関係のある会社において行われる会計です。それらの会社は、親会社、子会社といった関係になっています。孫会社、というものまで存在はしますが、ここでは割愛しておきます。

では、支配関係とはなんなのでしょうか。支配関係とは、ずばり議決権です。多数決というものがありますよね。株主総会にて行われる議決の決定は多数決で行われ、それに必要なのは議決権のある株式。議決権を過半数以上所持していれば、株主総会の議決は思い通りになりますよね。それが支配です。ちなみに、議決権のない株式もありますので、それも注意です。

そして支配ができたら、親会社と子会社はまとめて財務諸表を提出する必要があります。例外もありますが、ほぼ提出が必要になります。それらの財務諸表は、そのままですが連結財務諸表といいます。もちろん個別の財務諸表も作ります。

非支配株主持分とは?

次に、非支配株主持分についてです。名前を見てピンときた方もいるかもしれません。意味は名前そのままです。先ほど、支配を獲得する際には、過半数以上の議決権を獲得する必要がありますよね。例えば70%でも支配、という形になります。ではその場合、残りの30%はいったい誰のモノなのでしょうか。それが、非支配株主です。支配していないけれども、議決権を所有している株主です。支配している子会社が利益を上げたら、70%は親会社の取り分ですが、のこりの30%は非支配株主のものです。

そういった処理を行うことによって、連結会計の難易度が上がります。仕訳自体がちょっと覚えづらいので、どういった取引があるかをまず見て、そして仕訳の形を覚えてしまいましょう。

では早速仕訳ですが、非支配株主が絡む仕訳は以下のような種類があります。ここでは基本的なものをご紹介します。

  • 支配時〈決算時に行う仕訳〉
  • 当期純利益
  • のれん償却
  • 受取配当金

基本的なものはこのようになっています。難しいものだと税効果会計が絡んできます。税効果が絡むとかなり難しいものになりますので、ここでは割愛し、まずは簡単な基本的なものを学びましょう。

では、実際に仕訳のかたちを見ていきましょう。

支配時の仕訳

(例)2021年4月1日に九州株式会社が、鹿児島株式会社の発行済株式80%(すべて議決権のある株式)を5,000,000円で取得し、支配を獲得した。支払いは当座預金口座から行った。九州株式会社が鹿児島株式会社の株式を取得するのは初めてである。また、鹿児島株式会社の支配獲得時の貸借対照表は以下の通りである。(単位:円)

また、両社とも会計期間は4月1日から3月31日までである。

仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
資本金 4,000,000 当座預金 5,000,000
資本準備金 500,000 非支配株主持分 976,000
利益準備金 380,000
のれん 1,096,000

仕訳はこのようになります。解き方は、まずは借方に資本金・資本準備金・利益準備金などの株主資本科目を記入しましょう。そして貸方に支払対価を書きましょう。そしてここからです。株主資本のうちの非支配株主持分を計算しましょう。計算式は簡単です。

株主資本×非支配株主の株式所有割合=非支配株主持分の金額

今回の問題は、以下のような数字になります。

(4,000,000+500,000+380,000)×(1-0.8)=976,000

そしてそれを踏まえて、のれんの金額を差額で計算しましょう。負ののれんの場合は、差額は貸方に出る点に注意です。

当期純利益

では次に、決算時に行う決算整理仕訳を見ていきましょう。まずは当期純利益についてです。以下の例題の条件は先ほどのものを使用していきます。

(例)鹿児島株式会社の当期純利益は500,000円である。

仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
非支配株主に帰属する当期純利益 100,000 非支配株主持分当期変動額 100,000

仕訳も計算もとても簡単ですが、勘定科目がやたらと長いですね。これには理由があります。貸方科目は、当期の変動額を重視しているためです。実際には、貸方、純資産の部の非支配株主持分の増減額となります。そして借方の非支配株主に帰属する当期純利益は、そのまま損益計算書に記載されます。非支配株主があるということは、親会社の分もあります。非支配株主持分の当期純利益を控除することにより、親会社に帰属する当期純利益が計算されるという仕組みです。

計算

500,000×(1-0.8)=100,000

のれん償却

次はのれんです。これに関しては、のれんというものを先に理解している前提で説明をします。のれんは毎年、償却をしていきます。それは最長20年です。償却年数は問題で指示されますのでご安心ください。ですが、理論として最長20年、というのは出題されやすい傾向にあるので、ここだけは押さえておきましょう。

(例)2022年3月31日(期末)になったので、のれんを20年で償却する。

仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
のれん償却 54,800 のれん 54,800

仕訳も計算もとても簡単です。のれん償却は、損益計算書上では販売費及び一般管理費の区分に該当します。のれんの金額はそのまま貸借対照表上から控除するのみで大丈夫です。

計算

1,096,000÷20=54,800

受取配当金

受取配当金は、子会社(今回は鹿児島株式会社)が支払った配当金です。受け取ったということはプラスのもの、というイメージもあるかもしれませんが、受取と支払は連結上では相殺しなければなりません。ですので、マイナスしていきましょう。

(例)今年度、鹿児島株式会社は200,000円の配当を行った。

仕訳

借方科目 金額 貸方科目 金額
受取配当金 160,000 利益剰余金 200,000
非支配株主持分 40,000

そのまま配分するだけですが、勘定科目に注目です。勘定科目さえ覚えてしまえば計算をど忘れしても解けますので、仕訳の形は必ず押さえておきましょう。

 

いかがでしたでしょうか。今回は、初歩的な仕訳の形を学びました。ここを理解しておけば、さらに難しいものにチャレンジできます。基礎が肝心です。ぜひ、頑張って下さい。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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