では早速、どのような粉飾決算が行われてきたのかを見ていきましょう。粉飾決算の主な手口には下記のようなものがあります。
- 循環取引
- 売上の過大計上
- 売上の前倒し
- 売上原価の付け替え
- 架空資産の計上
- 連結外し
どれも興味深い方法なのですが、ここでは上から3つを詳しく見てみましょう。
循環取引
循環取引の概要と仕組み
循環取引とは、その名の通り、複数の会社で商品やサービスの発注だけをぐるぐると回す取引です。複数の会社が共謀して行いますが、ときに、同じ会社が別会社を作って行うこともあります。
例を挙げて考えてみましょう。まず、A社が100円で商品を仕入れます。これをB社に110円で販売します。B社はさらにC社に120円で販売します。そして最後にC社はA社に130円で販売します。商品は実際にはA社から動かしません。注文書だけがまわっていくイメージです。
すると、A社はどのような状況になるでしょうか?
仕入で100円支払ったあと、B社から110円の売上が入るものの、C社に130円払うので、20円の赤字になります。
「なんだ全然得にならないじゃないか」と思われたかもしれません。ですが循環取引には抗いがたい魅力があります。
循環取引が行われる理由
循環取引の最大の動機は、売上と利益の増加です。この例の場合、A社の商品は実際のところ全く売れていないのですが、B社からの売上として110円を計上できます。また、結局赤字になるのですが、仕入100円との差額である10円は利益として計上されます。
売上のノルマ達成が危ういが売れる見込みがない、といった状況だと手を染めてしまいそうですよね。
これに加えて、B社から一時的ではあるものの110円という資金を得ることができるので、運転資金が足りなくて、銀行からの借入もできないほど困窮している状況などでも行われやすい取引です。
売上の過大計上
売上の過大計上の仕組み
次に、売上の過大計上です。この手口は様々です。売上の偽造という直接的なものもあれば、仕入を偽造して、結果として売上の過大計上につながるというものもあります。
たとえば、不動産業D社の例があります。1,000万円で仕入れていた不動産を売却するとき、実際には不動産価格が下落して900万円でしか売れなかったのに、1,200万円で売れたことにしていました(金額は仮のものです)。
ただこのままだと、「1,200万円分の対価があるはずなのに900万円しかない」という状況になってしまうので、帳尻をあわせるために300万円分の仕入れを計上していました(実際には何も仕入れていません)。1つのウソを隠すためにさらに別のウソを重ねたわけです。
売上を過大に計上する動機
過大計上の動機は、いうまでもなく売上高を実際より大きく見せることです。この背景には、過剰な売上至上主義の風土や、非現実的なノルマなどがあります。ほかにも、株式市場の上場基準に売上高が含まれてることがあるので、上場廃止を恐れて売上の過大計上に手を染めてしまったという例もあります。
売上の前倒し計上
前倒し計上の概要
売上の前倒し計上は、言葉通り本来の計上時期よりも前に売上げを計上することなのですが、実例はもっと複雑です。
ある製造業E社の例です。もともと、売上は「販売基準」という考え方で計上します。販売の事実が確認できた段階で、売上として計上しようという考え方です。
ですが、この販売の確認をどの時点にするのかは、企業によってさまざまです。たとえば、商品が自社から発送された時点とするのか(発送基準)、それとも取引先に商品が到着して検収が行われた時点とするのか(検収基準)といった違いがありました。
E社は、会計士の要請で、販売基準を発送基準から検収基準に変更しなければならなくなりました。これは、売上の計上時期がこれまでよりも遅くなることを意味します。販売基準を変更する年度の売上が減少することを恐れたA社は、取引先に検収書類の偽装を依頼して、売上げを前倒し計上してしまいます。
前倒し計上が行われる理由
売上の前倒し計上の動機も、売上の過大計上と同じく、実際よりも売上高を大きく見せることです。E社の場合は、売上が低迷していて、銀行から黒字化と目標達成を強く要請されていたそうです。
ただ会計をよく知る方なら、売上の計上時期を一時的にずらしても意味はないことがお分かりになると思います。前倒しして計上した分は、結局次期の売上から減るだけなのです。E社の場合も、1回の前倒し計上だけでは終わらず、継続して前倒し計上に手を染めてしまい、最終的には発送前の商品まで前倒し計上するようになってしまいました。