経理/簿記試験

粉飾決算とは?手口と過去の重大粉飾事件を徹底解説

テーマ
粉飾決算
執筆
公認会計士



「粉飾決算」とは、一般に、企業が実際の業績よりも好調に見せるために、財務諸表を不正に操作することを指します。業績悪化に伴う株価下落や融資打ち切りを防ぐためなど、さまざまな目的のもとで行われます。

 

粉飾決算に用いられる手法もさまざまです。しかし、このような不正な手法は、長期的には企業にとって深刻なリスクとなります。発覚すると、株価の暴落や信用の失墜、法的な責任の追及など、広範囲に影響が及びます。

 

この記事では粉飾決算と会計操作の違い、粉飾決算の主な手口、過去の粉飾決算事件などを解説します。経理担当者なら思わずうなずいてしまうような事例もでてきます。

 

粉飾決算とは?不正会計の実態を解説

「粉飾」とは、実は正式な罪状名ではありません。

 

正式には「虚偽有価証券届出書提出」や「虚偽有価証券報告書提出」と呼ばれます。長い名称ですが、字面を追えば簡単です。「虚偽」の「有価証券届出書」や「有価証券報告書」を提出した罪、ひたらく言えばウソをついた罪ということです。

 

「有価証券届出書」と「有価証券報告書」とは何でしょうか?

 

まず、有価証券とは株式や債券のことです。

 

ひとつめの有価証券「届出書」は、有価証券を発行する会社が最初に提出する書類です。直近の財務諸表などを記載して、今度こういう内容で有価証券を発行します、ということを投資家に知らせるために提出します。

 

有価証券「報告書」は、既に有価証券を発行している会社が提出する書類です。有価証券を発行していた期間のうち、通常は直近1年間の経営成績や財政状態を記載します。最近は開示内容が増えて、財務諸表だけではなく、従業員の状況や保有資産の状況など、会社の状況をかなり細かく記載するようになりました。

 

これらの書類の提出先は、法律上は金融庁なのですが、実際には「EDINET」に提出されます。提出済みの書類はEDINET閲覧サイト(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/WEEK0010.aspx](https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/WEEK0010.aspx)で見られますので、ぜひご自分の会社の有価証券届出書や有価証券報告書を検索してみてください。

 

話がそれましたが、まとめると、粉飾とは、会社が提出する有価証券届出書や有価証券報告書に虚偽の記載をすることです。

 

これらの書類には、すでにお話したように、財務諸表以外の内容も記載されています。ですがこの記事では、財務諸表に関して行われた粉飾、つまり、資産や負債、収益や費用について行われた粉飾を主に取り上げます。

 



粉飾決算の主な手口

では早速、どのような粉飾決算が行われてきたのかを見ていきましょう。粉飾決算の主な手口には下記のようなものがあります。

 

  • 循環取引
  • 売上の過大計上
  • 売上の前倒し
  • 売上原価の付け替え
  • 架空資産の計上
  • 連結外し

どれも興味深い方法なのですが、ここでは上から3つを詳しく見てみましょう。

 

循環取引

循環取引の概要と仕組み

循環取引とは、その名の通り、複数の会社で商品やサービスの発注だけをぐるぐると回す取引です。複数の会社が共謀して行いますが、ときに、同じ会社が別会社を作って行うこともあります。

 

例を挙げて考えてみましょう。まず、A社が100円で商品を仕入れます。これをB社に110円で販売します。B社はさらにC社に120円で販売します。そして最後にC社はA社に130円で販売します。商品は実際にはA社から動かしません。注文書だけがまわっていくイメージです。

 

すると、A社はどのような状況になるでしょうか?

 

仕入で100円支払ったあと、B社から110円の売上が入るものの、C社に130円払うので、20円の赤字になります。

 

「なんだ全然得にならないじゃないか」と思われたかもしれません。ですが循環取引には抗いがたい魅力があります。

 

循環取引が行われる理由

循環取引の最大の動機は、売上と利益の増加です。この例の場合、A社の商品は実際のところ全く売れていないのですが、B社からの売上として110円を計上できます。また、結局赤字になるのですが、仕入100円との差額である10円は利益として計上されます。

 

売上のノルマ達成が危ういが売れる見込みがない、といった状況だと手を染めてしまいそうですよね。

 

これに加えて、B社から一時的ではあるものの110円という資金を得ることができるので、運転資金が足りなくて、銀行からの借入もできないほど困窮している状況などでも行われやすい取引です。

 

売上の過大計上

売上の過大計上の仕組み

次に、売上の過大計上です。この手口は様々です。売上の偽造という直接的なものもあれば、仕入を偽造して、結果として売上の過大計上につながるというものもあります。

 

たとえば、不動産業D社の例があります。1,000万円で仕入れていた不動産を売却するとき、実際には不動産価格が下落して900万円でしか売れなかったのに、1,200万円で売れたことにしていました(金額は仮のものです)。

 

ただこのままだと、「1,200万円分の対価があるはずなのに900万円しかない」という状況になってしまうので、帳尻をあわせるために300万円分の仕入れを計上していました(実際には何も仕入れていません)。1つのウソを隠すためにさらに別のウソを重ねたわけです。

 

売上を過大に計上する動機

過大計上の動機は、いうまでもなく売上高を実際より大きく見せることです。この背景には、過剰な売上至上主義の風土や、非現実的なノルマなどがあります。ほかにも、株式市場の上場基準に売上高が含まれてることがあるので、上場廃止を恐れて売上の過大計上に手を染めてしまったという例もあります。

 

売上の前倒し計上

前倒し計上の概要

売上の前倒し計上は、言葉通り本来の計上時期よりも前に売上げを計上することなのですが、実例はもっと複雑です。

 

ある製造業E社の例です。もともと、売上は「販売基準」という考え方で計上します。販売の事実が確認できた段階で、売上として計上しようという考え方です。

 

ですが、この販売の確認をどの時点にするのかは、企業によってさまざまです。たとえば、商品が自社から発送された時点とするのか(発送基準)、それとも取引先に商品が到着して検収が行われた時点とするのか(検収基準)といった違いがありました。

 

E社は、会計士の要請で、販売基準を発送基準から検収基準に変更しなければならなくなりました。これは、売上の計上時期がこれまでよりも遅くなることを意味します。販売基準を変更する年度の売上が減少することを恐れたA社は、取引先に検収書類の偽装を依頼して、売上げを前倒し計上してしまいます。

 

前倒し計上が行われる理由

売上の前倒し計上の動機も、売上の過大計上と同じく、実際よりも売上高を大きく見せることです。E社の場合は、売上が低迷していて、銀行から黒字化と目標達成を強く要請されていたそうです。

 

ただ会計をよく知る方なら、売上の計上時期を一時的にずらしても意味はないことがお分かりになると思います。前倒しして計上した分は、結局次期の売上から減るだけなのです。E社の場合も、1回の前倒し計上だけでは終わらず、継続して前倒し計上に手を染めてしまい、最終的には発送前の商品まで前倒し計上するようになってしまいました。

過去に発覚した粉飾決算事件まとめ

こうした粉飾決算は、誰もが知っている大企業でも行われてきました。ここでは書ききれないくらいの事例がありますが、なかでも影響が大きかったものを挙げると下記のようなものがあります。

 

エンロン(2001年)

粉飾決算と言えば絶対に外せない事件です。米国のエネルギー総合企業、エンロンが長年にわたって行っていた数々の粉飾決算です。発覚後、エンロンは破綻し、経営者も有罪判決を受けました。世界の会計基準と内部統制の整備が進む契機となりました。

内部統制については当サイト内の下記の記事も参考にしてください。

中小企業にも必要?中小企業における内部統制の構築方法について解説!

 

 

カネボウ(2005年)

架空売り上げの計上や在庫の意図的な未処理などが行われました。また、当時まだ連結基準が持ち株比率基準であったことを悪用した「連結外し」(業績の悪い会社の株式を売却して連結対象から外すこと)も行われました。同社の上場廃止、経営陣の逮捕に加えて、加担した会計士も逮捕されました。担当した監査法人が解散に追い込まれるなど、影響は広範囲に及びました。

連結決算については当サイト内の下記の記事も参考にしてください。

連結決算がわかりやすくなる 子会社の定義とは?

 

オリンパス(2011年)

バブル期の損失を「飛ばし」と呼ばれる手法で20年近く隠し続けていました。粉飾を告発したイギリス人の新社長を旧経営陣が追い出すなど、会計スキャンダルとしてイギリスやアメリカでも大きく報道され、世界的に日本企業の信頼をおとしめた事件です。

 

東芝(2015年)

約1,550億円もの利益の虚偽計上が行われていました。2008年のリーマンショックによる赤字転落と、2011年の原発事故で主力事業だった原発事業が低迷したことが背景にあったとされています。経営陣が社内に「チャレンジ」という無謀な目標を課したことで、複数の部門が同時に不正会計に手を染めるという異常事態が起きていました。

まとめ|粉飾決算を防ぐために重要なポイント

この記事では、粉飾決算について解説してきました。粉飾決算とは、有価証券届出書や有価証券報告書に虚偽の記載をすることです。このなかでも、本記事では財務諸表に関して行われた粉飾を取り上げました。

粉飾決算の主な手口である、循環取引、架空売り上げの計上、売上の前倒し計上について解説しました。こうした粉飾決算は誰もが知る大企業でも起きており、一歩間違えればどの会社でも行われる可能性があります。

ですが、ここまで見たように、粉飾決算の影響は広範囲に及びます。また、1つ粉飾決算をすると、それを隠すためにさらに嘘をつかなければならなくなっていました。始めたら後戻りできません。

正確で透明性の高い財務報告は、経済活動の要です。万一、黒い誘惑があったとしても、強い意思で跳ねのけて、日々の業務を行っていきましょう。

 

▼おすすめ記事_簿記の勉強で必須!決算処理6選▼



Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

経理実務や簿記の試験対策に役立つ知識を提供します。

人気Articles

  1. 補助簿とは?各帳簿について解説!~補助元帳編~

  2. これからの広告と新しいマーケティング戦略とは?消費者により寄り添う戦略についてわかりやすく解説!

  3. 企業価値算定の分かれ道。純資産法orDCF法どっち?

  4. LBOとは?わかりづらい仕組みを分かりやすく解説!

  5. 減価償却のやり方は?役割や記帳方法まで徹底解説!

  6. 経理担当者なら取得したい!日商簿記2級でよくでる仕訳|商品売買

  7. 有価証券とは?関連会社株式・子会社株式とその他有価証券について詳しく解説!

  8. マーケティング初心者でも理解できるマーケティング分析手法をわかりやすく解説!

  9. TMKとは?仕組みから税務メリット・設立手順まで徹底解説!

  10. ソフトウェアの減価償却計算方法は?利用目的ごとにわかりやすく解説!