経理/簿記試験

簿記2級合格に必須! 工業簿記で覚えるべき仕訳と要点

テーマ
日商簿記3級,日商簿記2級
執筆
日商簿記2級合格者



工業簿記の要点

簿記2級以上合格をめざすための要点! 工業簿記の解答パターンと仕訳を覚えよう

みなさんは、工場において行われている会計について考えたことはありますか?実際に実務で関わったことがある人以外は、あまり無いと思います。ですが、2級以上の簿記検定を勉強する方には避けては通れないものですね。工業簿記は商業簿記とは異なり、製造プロセスに関する視点が加わることで、使用する仕訳や勘定項目が異なります。工業簿記の初心者の方も、工業簿記の勉強が行き詰った方も、一緒に見ていきましょう。

 

 

工業簿記の基本パターンは、「材料の仕入れ」→「製品の製造」→「売上」

では、まずは工業簿記とは何なのでしょうか。

名前の通りですが、工業向けの簿記です。つまり、この簿記は工場で行われる業務に対してのものです。ですので、普通の商業簿記とはいくつかの相違点があります。

 

まずは業務形態です。

【商業簿記】
仕入→売上

【工業簿記】
材料の仕入れ→製品の製造→売上

このように、商業簿記とは異なり、製造業を想定している工業簿記では、”製造プロセス”が加わります。

これによって、工業簿記では製造途中で完成品になる前の仕掛品の管理や、製造が予定通り適正に行われているかを把握するための視点加わります。

 

これによって、利用する勘定科目も商業簿記とは異なってきます。工業簿記では、新たに商業簿記には無い勘定科目が登場します。

工業簿記で出題される仕訳に含まれる勘定科目の例
・製品(商業簿記でいうところの商品)
・仕掛品(製作途中の製品、つまり作りかけ)
・その他、「材料」「労務費」「経費」「製造間接費」など…

 

他にも、期間も新しい概念が加わります。

商業簿記は、主たる計算問題では1会計期間、つまり1年間で行われた計算をベースとして考えますよね。ですが、工業簿記は基本的には1か月間を原価計算期間として計算していきます。

 

上記のような違いがあります。では、具体的な工業簿記の流れについて見ていきましょう。

 

 

工業簿記の流れを理解し、鉄板パーターンを覚えよう

では、工業簿記の流れについてざっくり見ていきましょう。

①材料の仕入れ

②製品の製造

③製品の出荷

④製品の販売

といった流れになりますが、特に工業簿記について重要なのは②の製品の製造です。

では、計算を踏まえて流れを見ていきましょう。仕訳もしますので、実際の仕訳の形もよく見てみましょう。

 

仕訳の例①:材料の掛け仕入れ

AAA製造株式会社は、製品の製造に使用する材料40,000円を仕入れ、代金は掛けとした。

 

借方科目 金額 貸方科目 金額
材料 40,000 買掛金 40,000

 

 

仕訳の例②:労務費、製造間接費、仕掛品

当月消費した原価の内訳は以下の通りである。

・材料費 65,000円

・直接工(製造に直接関わった従業員)の

直接作業時間(メインの作業)100時間

間接作業時間(メインではないが製造に関わる作業)45時間

なお、直接工の時給は1,000円である。

・直接経費 10,000円

 

これらの消費した原価のうち、80%が製品として完成し、残りの20%は仕掛品として製作中である。

 

借方科目 金額 貸方科目 金額
製品 176,000 材料 65,000
仕掛品 44,000 労務費 100,000
製造間接費 45,000
経費 10,000

 

この上記のような流れが主です。ちょっと簡単すぎましたかね。これらがどんどん複雑になり、そして販売に関しての分析などができるようになります。では、次に工業簿記の費目というものについて詳しく見ていきましょう。

 

たくさん出題されてわかりにくい?原価と費目の要点とは?

では、工業簿記の費目というものについて見ていきます。これは、それぞれの原価を分類するものなのですが、例えば先ほどの仕訳でも少し出てきた材料費や労務費といったものです。この分類ができないと、後々大変なことになります。

まず大きく「直接」と「間接」に分類をします。なぜこの工程を挟むかというと、間接費といったものは大抵、複数の製品に共通して発生しています。ですので、のちに各製品に配賦をしていきます。直接費は各製品だけに発生するものなので、もし仮に直接費が間接費に紛れ込んでしまった場合、すべての製品の製品原価を正確に計算することができなくなってしまいますね。

では、次の表で確認してみましょう。

この表のような関係性になっています。直接費はそのまま勘定に入れ、間接費は製造間接費にまとめてその後配賦します。そしてそれらを製品、仕掛品に按分します。おおまかにはこういった流れになりますので、この流れだけでも覚えておきましょう。

ではここまでの流れを踏まえて、問題にチャレンジしてみましょう。

▼『工業簿記で出てくる伝統的原価計算とABC』は、別の記事にまとめました

工業簿記の問題解答

工業簿記の問題にチャレンジ! 単純総合原価計算

では、問題を解いてみましょう。初心者の方は、まずは問題をよみ、解説を見ながら一緒に解いていきましょう。

 

問題

以下の資料に基づき、月末仕掛品の評価を先入先出法によって行われている場合の、月末仕掛品原価を求めなさい。材料の投入は工程の始点で行っている。計算の際に端数が出た場合は、最終的に解答する際に四捨五入すること。

[資料]

(1)生産に関するデータ

月初仕掛品 6,000個 加工進捗度 50%
当月着手 24,000個
小計 30,000個
月末仕掛品 5,000個 加工進捗度 60%
完成品(差引) 25,000個

 

 

(2)原価に関するデータ

直接材料費 加工費
月初仕掛品原価 180,000円 168,000円
当月製造費用 1,080,000円 1,440,000円
合計 1,260,000円 1,608,000円

 

解答欄

月末仕掛品

○○○円

 

 

解答・解説

405,000円

 

では、解説に移ります。今回は、原価を集計したうえで、個数で月末仕掛品を計算する問題でした。問題に出てきた加工進捗度というのは、仕掛品の完成具合のことです。月初仕掛品なら、先月までに完成まで○○%くらい完成していて、そこから次月の製造を行う、ということです。月末仕掛品の場合は、月初仕掛品の逆です。この加工進捗度によって加工費の計算に影響があるということに注意です。加工費は、例えば労務費などの加工に関わる費用です。ですので、加工進捗度を加味して計算する必要があることに注意です。

では、計算についてです。今回は先入先出法ですので、こういった表で計算をします。

左上が期首、左下が当月投入、右上が完成品、右下が期末となっています。そして先入先出法ということなので、期末に残るものはおおよその場合で(問題によって違うのでしっかり計算してください)当月投入のものです。ですので、先に期末仕掛品をそれぞれ計算していきます。

 

そして加工費ですが、月初と月末の仕掛品数量に加工進捗度を掛けて、仕掛品数量としています。この計算を忘れないようにしましょう。

では、それぞれ月末仕掛品を計算してみましょう。

 

〈材料費〉

1,080,000÷24,000×5,000=225,000

〈加工費〉

1,440,000÷24,000×3,000=180,000

 

計算できたので、それぞれ足して解答とします。

225,000+180,000=405,000円

 

いかがでしたでしょうか。原価計算は、例えば最初に直接費と間接費を間違えるとその後ほとんどの数字が間違ってきます。ですので、基礎がとても大事です。ぜひ、頑張って下さい。

▼『変動費と固定費の原価分解』は、別の記事にまとめました



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