経理/簿記試験

日商簿記3級でよくでる仕訳 勘定科目『支払手数料』

テーマ
支払手数料
監修
簿記マスター

はじめに

日商簿記検定の出題傾向として、以前に比べて手数料に関する問題の出題頻度が高くなっています。経理に携わっている方であれば日々の取引で手数料を扱う案件が多いことを実感されていると思います。検定試験も実務に即した内容へ対応できるようにと変化しているのです。

では、日商簿記検定ではどのような手数料の問題が出題されているのでしょうか。手数料を支払う場面は多岐に渡ります。問題の中でも手数料を絡めたさまざまなケースで出題されています。この記事では、日商3級でよく出てくる支払手数料に関する仕訳を見ていきましょう。

給与振り込み

給料振込にかかる支払手数料は、労働基準法第24条により会社側が負担することとされています。会社の経費として支払手数料勘定で処理します。

問題

従業員への給与総額2,000,000円のうち、所得税の源泉徴収分100,000円と社会保険料本人負担分150,000円を差し引き、残額を普通預金から振り込んだ。なお、振込手数料2,640円は普通預金口座から差し引かれた。

 

解答

借方 金額 貸方 金額
給料 2,000,000 所得税預り金 100,000
支払手数料 2,640 社会保険料預り金 150,000
普通預金 1,752,640

給料の総額は2,000,000円ですが、会社は従業員の所得税や社会保険料などを源泉徴収して従業員の手取り分1,750,000円のみを支払うことになります。あわせて銀行への振込手数料2,640円も普通預金から差し引かれるという形で支払いが行われます。

実務では、給料を支払った仕訳と手数料を支払った仕訳とを分けて行うことも多いと思います。最終的に勘定残高は同じになるのでどちらでも構わないのですが、検定試験の際には解答に関する指示がないかチェックが必要です。

掛代金の決済

掛代金の支払いに係る振込手数料は、商品の売買時にあらかじめ手数料の負担関係を取り決めすることが多く、請求書に手数料は売り手側・買い手側のどちらが支払うのか明記します。両方の立場から仕訳がどのようになるのか見てみましょう。

問題(手数料⇒買い手側負担の場合)

当社は仕入先へ掛代金50,000円の支払いのため、当社の普通預金口座から振り込んだ。当方負担の振込手数料660円は普通預金から差し引かれた。

 

解答

借方 金額 貸方 金額
買掛金 50,000 普通預金 50,660
支払手数料 660

本問題は、買い手側が手数料を支払うという問題でしたので、掛代金の振込と同時に当社の銀行口座から手数料も差し引かれます。

 

 

問題(手数料⇒売り手側負担の場合)

得意先より掛代金50,000円を回収した。振込手数料660円は当方が負担する契約となっていたため手数料を差し引かれた残額が当座預金口座へ振り込まれた。

 

解答

借方 金額 貸方 金額
当座預金 49,340 売掛金 50,000
支払手数料 660

振込手数料は、銀行から振り込みをする際に支払うものです。売り手側が負担する手数料であっても、一旦は得意先が振り込みと同時に当社に代わって手数料を支払っています。その帳尻合わせとして、手数料を差し引いた分だけを当社の口座に振り込んでもらうのです。

クレジット売掛金

個人用だけでなく法人用のクレジットカードも普及していることやキャッシュレス決済の推進、また経理処理の効率のよさなどの理由により、現場でもクレジットカードによる決済が増えてきました。それに伴い検定試験でも頻繁に出題されるようになった分野です。商品の販売代金の回収をクレジット信販会社へ依頼するため、手数料を支払うことになります。

問題

商品200,000円をクレジットカード決済により販売した。手数料は商品代金の5%とし、商品販売時に計上する。

 

解答

借方 金額 貸方 金額
③クレジット売掛金 190,000 ①売上 200,000
②支払手数料 10,000

この問題では、確定させる金額の順序が重要です。勘定科目前に付した番号順に金額を入れていきます。

①商品代金200,000円を「売上」の金額として記入します。現金販売でもクレジット決済販売でも、商品の売上の金額が異なるようなことはありません。

②手数料を計算します。200,000円×5%=10,000円。10,000円がクレジット信販会社へ支払う手数料となります。

③通常の売掛金とは区別して「クレジット売掛金」勘定を使います。貸借差額でクレジット売掛金を求めます。200,000円-10,000円=190,000円。後にクレジット信販会社から受け取ることのできる金額、つまりクレジット売掛金が190,000円ということです。

賃貸物件の契約

賃貸契約を結ぶときの不動産会社へ支払う手数料は「支払手数料」として経費に計上します。次の項5.固定資産の購入と区別して確認をしてほしい問題です。

問題

事務所として使用するため賃貸物件を月額50,000円で契約した。契約にあたり1カ月分の家賃(支払家賃勘定を使用する)と敷金(家賃月額の2カ月分)および不動産会社への仲介手数料(家賃月額の1カ月分)を合わせて小切手を振り出して支払った。

解答

借方 金額 貸方 金額
支払家賃 50,000 当座預金 200,000
差入保証金 100,000
支払手数料 50,000

敷金は「差入保証金」勘定で資産として計上され、退去する時に修繕費用として使用しなかった残額は還付されます。

固定資産の購入

土地や建物などの固定資産を購入するときの手数料は、付随費用として固定資産の取得原価に含めます。問題文中に手数料と表示されているのに、仕訳には支払手数料が出てこないというパターンの問題です。前の項4.賃貸物件の契約と区別して確認してほしい問題です。

問題

店舗建設のため土地を10,000,000円で購入した。土地の購入にともない不動産会社への仲介手数料100,000円と整地費用250,000円を合わせて小切手を振り出して支払った。

解答

借方 金額 貸方 金額
土地 10,350,000 当座預金 10,350,000

付随費用には手数料のほかに整地費用や引取運賃、関税などがあります。固定資産の取得に直接要した費用は付随費用として取得原価に含めます。

まとめ

手数料に関わる仕訳を5つのパターンに分けて見てきました。実務上は上記のような文章で手数料が判明することはなく、預金通帳や契約書などから支払手数料を判断し仕訳をすることになるでしょう。誰が負担するのか、支払手数料として経費に計上するものかなどを確認して仕訳をすすめていきましょう。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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