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仮払金とは何?間違えやすい勘定科目も一挙解説!

テーマ
仮払金とは
監修
簿記マスター

出張時の経費など金額が確定していないときに概算で支払うための勘定科目が仮払金ですが、同じく先に支払う立替金や前払金との区別がわかりづらい勘定科目とも言えます。また、仮払金は、不正を疑われやすいものでもあります。ここでは、仕訳や間違えやすい勘定科目、税務署などからの指摘点について説明します。

仮払金とは

出張時の交通費など、前もって支払い金額が未確定のときなどに、概算で事前にお金の支払いをすることを「仮払い」といいます。このように概算で支払ったお金の処理をするときに「仮払金」という勘定科目を使用します。あくまで、一旦仮に貸したお金というイメージで、戻ってくることが前提なため、「資産」科目となります。仕訳を切るときには借方(左側)に記帳します。

実際には、支払ったお金自体が返ってくるわけではなく、金額が確定したあとに使用した費用の勘定科目に振り替えられます。

仮払いの具体例は以下の通りです。

  • 従業員が出張のときの旅費を概算払いで事前に支払ったとき
  • 取引先との会合の際の費用を事前にいくらか渡す場合
  • 用途の不明な領収書  など

仮払いを使用するメリット、デメリットも紹介します。

メリット

  • 申請者側が立て替える必要がない
  • 現金を出金したときに、使用目的が分からなくてもすぐに仕訳を切れる。

デメリット

  • 仮払金の出金など、現金を扱う作業が発生するため処理が増える
  • 精算漏れのチェックが必要となる
  • 使い込みなどの不正につながる危険性がある

仮払いは、従業員への負担が避けられる点が最大のメリットですが、現金の取り扱いが増えることや精算漏れなどのリスクが増えることにもつながりますので、注意が必要です。

間違えやすい勘定科目

「仮払金」と間違えやすい勘定科目に、仮払金と同じく先に支払う「立替金」や「前払金」、「前払費用」、名前の似ている「仮受金」などがあります。これらも一つずつ説明します。

立替金

社内、社外問わず、本当は会社の経費ではないけれど何か明確な事情があって、会社が一時的に支払いをするお金のことです。後に、そのお金は戻ってくるため、勘定科目の立替金としては、プラスマイナス0となります。貸借対照表の「資産」勘定となり、仕訳時には借方(左側)に記帳します。

立替金の具体例は、以下のとおりです。

  • 従業員の労働保険料や雇用保険
  • 従業員への給与の前貸し
  • 本来は取引先が負担する手数料(配送料、手数料など)

仮払金との相違点は以下のとおりです。

  • 仮払金は、会社の経費になることが前提だが、立替金は会社の経費ではない
  • 仮払金は、精算時に領収書が必要だが、立替金の場合は不要

前払金

「前払金」とは、事業に必要な商品やサービスを購入して、その代金の全額または一部を先に支払うことがあります。そのときに使用する勘定科目です。貸借対照表の「資産」勘定となり、仕訳時には借方(左側)に記帳します。

商品代金の支払いが、なぜ「資産」勘定科目なのか疑問に思った方もいるかと思いますが、この前払金というのは、「のちに商品やサービスを受け取る権利」となるため、「資産」の勘定科目となります。

前払金の具体例は、以下のとおりです。

  • 仕入れ時に、商品代金の一部を前払いした
  • ホテルの予約の際に予約金を支払った

仮払金との相違点は、次の「前払費用」と一緒に説明します。

前払費用

「前払費用」とは、継続的にサービスを受ける場合に、まだサービスを受けてない部分に対して支払うときに使用する勘定科目です。貸借対照表の「資産」勘定となり、仕訳時には借方(左側)に記帳します。費用と名がつきますが資産科目の理由は、前払金と同じく、「のちに商品やサービスの提供を受け取る権利」となるためです。

また、前払金との区別は、継続的なサービス契約かそうでないかで判断します。

前払費用の具体例は、以下のとおりです。

  • 翌月分の家賃
  • 火災保険や生命保険の保険料
  • サブスクリプションなどの年間契約

仮払金との相違点は、「仮払金」は、金額が決まっていない時点で仮に支払ったときの勘定科目に対して、「前払金」及び「前払費用」は、商品やサービスを受け取る前にお金を支払ったときの勘定科目です。

仮受金

「仮受金」とは、何のために、誰が支払ったのか、または、正確にはいくら入金されたのかが不明な時に一時的に処理するための勘定科目です。のちに本来の目的や金額が分かったときに、実際の勘定科目に振り替えます。「仮払金」と名前は似ていますが、「仮払金」は一時的に支払うお金、「仮受金」は一時的に受け取るお金と用途は逆になります。貸借対照表の「負債」勘定となり、仕訳時には貸方(右側)に記帳します。

実際に仕訳を切ってみよう

仮払金を支払ったとき

従業員が出張した際に、現金50,000円を支給しました。

借方科目 金額 貸方科目 金額
仮払金 50,000 現金 50,000

仮払金は資産勘定なので、増えるときは借方に記帳します。相手勘定は、資産勘定である現金が減るため貸方に記帳します。

仮払金を精算するとき

仮払金が余る場合:従業員が出張から帰り、精算を行いました。実際にかかった費用は交通費25,000円、会食費15,000円で、残金は現金で受けとりました。

借方科目 金額 貸方科目 金額
旅費交通費 25,000 仮払金 50,000
交際費 15,000
現金 10,000

交通費の勘定科目は「旅費交通費」、会食費は「交際費」となります。ともに、損益計算書の「費用」の勘定科目となるため、発生時には借方に記帳します。

 

仮払金として受け取った50,000円と旅費交通費と交際費として使用した40,000円との差額10,000円は返金されます。現金の増加となりますので、借方に記帳します。仮払金は減少となりますので、貸方に記帳します。

仮払金では足りない場合:従業員が出張から帰り、精算を行いました。実際にかかった費用は交通費45,000円、会食費15,000円でした。

借方科目 金額 貸方科目 金額
旅費交通費 45,000 仮払金 50,000
交際費 15,000 未払金 10,000

仮払金では足りなかった分は、精算時に「未払金」として計上します。「未払金」とは、支払い義務が発生していますが、まだ支払われていないときに使用する勘定科目で、「負債」科目となります。仕訳時は、貸方へ記帳します。

決算時に仮払金の未清算があるとどうなる?

会社は決算書を税務署や金融機関などに開示しなければなりません。しかし、その決算書に仮払金の未精算がある場合には、会計管理ができていないとみなされる場合があります。税務署や金融機関がどのような視点で仮払金を見るかを説明します。

税務署

税務署は、適切に税金が納められているかを確認します。そのため、仮払金については、役員や従業員に対する給与や貸付金ではないかを見られます。万が一、給与と判断された場合は、給与の源泉徴収漏れが指摘され、貸付金と判断された場合には、受取利息の計上漏れとなり、適切に税金が納められていないとみなされます。

金融機関

金融機関は、融資した資金が正しく使われているかを確認します。仮払金の残高が多ければ、社外や従業員個人にお金が流れていることを疑います。金融機関は事業のために融資をしているため、目的外使用となれば、その資産が適切かどうかを調査します。また、赤字決算とならないために、本来は費用の勘定科目で計上すべきものを、仮払金からの振り替えをせずに処理をしている場合は、その分を資産から減額して実態に合った修正が行われます。

仮払金残高がある場合は、上記の視点で決算書を確認され、場合によっては、信用をなくす恐れにもつながります。そのために、仮払金の精算に関しては、ルールを定め適切に処理をしなければなりません。また、決算前には、未精算の確認を行うとよいでしょう。もし、仮払金残高があり、税務署等の調査が入っても、適正なものと説明できれば問題はありません。

まとめ

仮払金は、概算で支払うための勘定科目で、従業員などの負担を減らせる利点がある反面、現金を扱うため処理が増えることや、適切に処理をしておかないと、税務署や金融機関などの信用を損なう恐れもあるため、注意が必要です。

また、「立替金」や「前払金」などのように、仮払金と同じく目的や金額が確定する前に、先に支払う勘定科目がいくつかありますので、混合しないようにしてください。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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