経理担当者は、取引が発生したら仕訳帳に記録するのが基本ですが、この仕訳帳は1冊しかなく取引の多い企業だと不便です。経理担当者が複数いる場合でも、取引の全てを一人の担当者が記録しなければいけないというデメリットがあるからです。そこで伝票を用いることで、記録の分担が可能になりスムーズな会計管理ができます。このような伝票取引記録システムを「伝票会計制度」と言います。
当記事では、簿記における「伝票」の意味とその役割について解説します。
経理担当者は、取引が発生したら仕訳帳に記録するのが基本ですが、この仕訳帳は1冊しかなく取引の多い企業だと不便です。経理担当者が複数いる場合でも、取引の全てを一人の担当者が記録しなければいけないというデメリットがあるからです。そこで伝票を用いることで、記録の分担が可能になりスムーズな会計管理ができます。このような伝票取引記録システムを「伝票会計制度」と言います。
当記事では、簿記における「伝票」の意味とその役割について解説します。
【目次】
「伝票」とは、取引を記入する紙片のことをいいます。一言に「伝票」と言っても様々な種類の伝票があり、経理初心者だとその伝票の役割が分かりづらいかもしれません。
簿記3級試験を受ける方は以下の3つを覚えましょう。
入金伝票には、現金の増加にともなう取引、いわゆる入金取引を記録します。
現金は、簿記要素の中の“資産”に分類され、その増加ということは借方に記録されます。この決まりを生かして、入金伝票における記録では現金勘定への記載を省略し、相手勘定科目とその金額のみを記録するのです。
入金伝票 令和X年X月X日 |
|
科目 | 金額 |
売掛金 | 1,000 |
金額は1,000円であることがわかる伝票です。
出金伝票には、現金の減少にともなう取引、いわゆる出金取引を記録します。
入金伝票と反対で資産の減少のため、貸方に現金勘定を記載する取引です。出金伝票における記録では現金勘定への記載を省略し、相手勘定科目とその金額のみを記録します。
出金伝票 令和X年X月X日 |
|
科目 | 金額 |
買掛金 | 1,000 |
上記は、出金伝票というだけで現金の減少であることがわかり、その相手科目が買掛金で、金額は1,000円であることが分かる伝票です。
振替伝票は、現金の増減以外の取引を記録します。そのため、仕訳の借方・貸方の勘定科目が決まっているわけではないので、通常の仕訳と同じように借方・貸方の科目とその金額を記載します。
振替伝票
令和X年X月X日 |
|||
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
備品 | 1,000 | 未払金 | 1,000 |
上記は、備品を1,000円で購入し、その代金をツケ払いにした取引における振替伝票です。
上記の3つの伝票を用いる方法を「三伝票制」といいます。
企業によってルールはそれぞれですが、領収書のみ提出されるよりも当事者による記録となるため経理担当者の負担が減り、より確実な伝票作成ができるというわけです。
決まったフォーマットでなくても、日付・勘定科目・適用・金額・起票者氏名が記載されていればそれが伝票となります。
また、上記の他に「仕入伝票」「売上伝票」が加わる「5伝票制」があります。簿記3級試験では、「3伝票制」が多く出題される傾向があるので、まずは3つの伝票を覚えるといいでしょう。
通常の伝票会計制度では1つの取引に対して1枚の伝票を起票します。しかし、入金・出金と同時に振替伝票が必要になる取引が発生することもあります。これを「一部現金取引」と言い、簿記3級試験に出題されやすいのはこの取引です。
例えば以下の取引が一部現金取引です。
このように、全体の取引のうち一部分のみ現金取引であった場合、どのように起票したらいいのでしょうか。
方法は以下の2つです。
①現金売上500円
②売掛金500円
と、2つに分解します。
①については入金伝票に、②については振替伝票に起票します。
入金伝票 令和X年X月X日 |
|
科目 | 金額 |
売上 | 500 |
振替伝票 令和〇年×月△日 |
|||
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 500 | 売上 | 500 |
が記録されました。
①いったん1,000円全部を売掛金にする
振替伝票 令和〇年×月△日 |
|||
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 1,000 | 売上 | 1,000 |
②すぐに500円現金で受け取った
入金伝票 令和〇年×月△日 |
|
科目 | 金額 |
売掛金 | 500 |
と仮定するのです。
①については振替伝票に、②については入金伝票に起票します。
この2枚の伝票で、
が記録されました。
伝票を作成することで、仕訳帳へのきろくは不要になり総勘定元帳および補助簿へ転記します。取引の多い企業だと、毎日転記を行うのが難しく、ミスも増えるでしょう。
そこで1日に記入した伝票を勘定科目ごとに集計する「仕訳日記帳」を用いる方法をご紹介します。
入金伝票 No.101
令和〇年1月10日
売上 2,000 |
入金伝票 No.102
令和〇年1月10日
売掛金 1,000 |
入金伝票 No.103
令和〇年1月10日
受取利息 50 |
出金伝票 No.201
令和〇年1月10日
仕入 800 |
出金伝票 No.202
令和〇年1月10日
買掛金 200 |
振替伝票 No.301
令和〇年1月10日
売掛金 1,000 / 売上 1,000 |
振替伝票 No.302
令和〇年1月10日
仕入 1,500 / 買掛金 1,500 |
振替伝票 No.303
令和〇年1月10日
備品 500 / 未払金 500 |
上記は、令和〇年1月10日に発生した取引の伝票です。
これを仕訳日記帳に転記します。
仕訳日記帳 令和〇年1月10日 |
||||
借方 | 元丁 | 勘定科目 | 元丁 | 貸方 |
3,050 | 現金 | 1,000 | ||
1,000 | 売掛金 | 1,000 | ||
500 | 備品 | |||
200 | 買掛金 | |||
未払金 | 1,500 | |||
売上 | 500 | |||
受取利息 | 3,000 | |||
2,300 | 仕入 | 50 | ||
7,050 | 7,050 |
3枚の入金伝票の記載されている金額の集計額、3,050円を現金勘定の借方へ記載します。
反対に出金伝票の集計額1,000円を現金勘定の貸方へ。
振替伝票についてもそれぞれの勘定科目ごとに集計し、転記します。
最後に借方・貸方の合計金額を計算し、両方が一致していることを確認します。一致しない場合、転記にミスがありますので、やり直しましょう。
このように、提出された各伝票を一定期間ごとに集計し転記しておく仕訳日記帳は、最終的に総勘定元帳となります。伝票からそのまま総勘定元帳へ転記するよりもミスが減りますし、日々記録しておくことでリアルタイムで細かい取引が確認できるのです。