会計基準は企業の財務状況を適切に表現するための枠組みを提供します。
しかし、国や地域により会計基準は異なります。国際的に統一された基準としてはIFRS(国際財務報告基準)がありますが、日本では日本の会計基準(日本基準)が主に使用されています。
それぞれの基準はそれぞれの文化、経済状況、規制環境に基づいています。
ここでは、IFRSと日本基準の「減損会計」の違いについて解説します。
会計基準は企業の財務状況を適切に表現するための枠組みを提供します。
しかし、国や地域により会計基準は異なります。国際的に統一された基準としてはIFRS(国際財務報告基準)がありますが、日本では日本の会計基準(日本基準)が主に使用されています。
それぞれの基準はそれぞれの文化、経済状況、規制環境に基づいています。
ここでは、IFRSと日本基準の「減損会計」の違いについて解説します。
【目次】
IFRSの減損会計はIAS 36(減損の会計処理)に基づいています。
IAS 36は、資産の回収可能額がその簿価を下回る場合、つまり資産が減損している場合に、その差額を減損損失として計上するよう求めています。
回収可能額は、「公正価値から売却費用を差し引いた額」または「使用価値」のうち大きい方と定義されています。
公正価値は、市場参加者間の取引によって決定される価格です。
一方、使用価値は、資産が現状の状態で継続的に使用され、最終的に処分される場合の現在価値を指します。
IFRSでは、毎期、あるいは事象や状況が発生したときに減損の兆候がある場合に減損検証を行うことが求められています。
そして、減損が認められた場合、その損失を計上し、簿価を回収可能額に減らすことが求められます。
日本基準の減損会計は、企業会計基準第16号(資産の減損会計)に基づいています。
日本基準では、資産の回収可能額が簿価を下回った場合、その差額を減損損失として計上することが求められています。
日本基準でも、回収可能額は公正価値または使用価値のうち大きい方と定義されていますが、公正価値の計算方法や使用価値の考え方についてはIFRSとは異なる部分があります。
日本基準では、毎期、あるいは事象や状況が発生したときに減損の兆候がある場合に減損検証を行いますが、検証の対象となる資産の範囲や、減損の兆候を判断する基準などがIFRSとは異なります。
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IFRSと日本基準の減損会計の主な違いは以下の通りです。
IFRSでは、のれん以外の減損損失を認識した資産について、回収可能価格が帳簿価格を上回った場合に限り、その上回った分を減損損失の戻し入れとして認識することができます。
しかし、日本基準ではこのような逆転認識は認められていません。
IFRSでは、耐用年数の定められていない無形資産(ブランドや顧客リスト等)とのれんについては、毎期減損検証を行うことが求められています。
しかし、日本基準では、特定の事象や状況が発生した場合にのみ、減損検証を行うことが求められています。
IFRSでは、割引後の将来キャッシュフローが固定資産の帳簿価格を下回っている場合、減損損失を認識します。
しかし、日本基準では割引前の将来キャッシュフローが固定資産の帳簿価格を下回っている場合、減損損失を認識します。
そのため、一定程度減損損失が発生していることが確実な場合に限り、減損損失を認識することとなっております。
減損損失は見積り項目であるため、IFRSでは減損損失の戻し入れが認められている一方、日本基準では割引前将来キャッシュフローを帳簿価格が下回っているといった相当程度減損損失が発生している可能性が高い場合に限って減損損失を認識することとしているため、その戻し入れは認められておりません。
のれんとは企業が他の企業を買収する際に生じる無形資産の一つです。
買収価格と買収先企業の公正な価値との差額がのれんとして計上されます。
この差額は、買収した企業の顧客リストやブランド名、特許など、買収先企業の具体的な資産を超えて存在する価値を反映しています。
企業がのれんを購入すると、それは資産として企業の財務状況に計上されます。
しかし、のれんの価値はその企業の経済的状況により変動するため、定期的にその価値を評価し直す必要があります。
これをのれんの減損テストと呼びます。
IFRSでは、のれんに対する減損テストは毎年行われます。
また、ビジネス環境の大きな変化があった場合には、そのタイミングでも減損テストが必要になる場合があります。
その際には、のれんを含むキャッシュ生成ユニットの回収可能額(使用価値または公正価値のうち高い方)と簿価とを比較し、簿価の方が高い場合には、その差額を減損損失として認識します。
一方、日本基準でも同様にのれんに対する減損テストを実施します。
ただし、のれんの減損テストは、のれんを含む事業セグメントの営業利益が黒字である限りは必要ありません。
赤字となった場合、または赤字に転落する可能性が出てきた場合には、その事業セグメントに対してのれんの減損テストが求められます。
のれんの減損は企業の収益性や資産価値、経営効率などに影響を及ぼします。
のれんの大幅な減損は、その企業の過去の買収が期待通りの効果を発揮できていない可能性を示す一方で、新たな買収機会への資金を確保するための資産整理としての側面もあります。
これらの要素を評価する際には、減損会計の理解が欠かせません。
以上、のれんの減損について詳しく見てきました。
これらの理解は、企業の財務状況を評価し、投資判断を下すために必要不可欠です。
特にM&Aが盛んな現代では、のれんの減損会計の理解は一層重要となっています。
このように、IFRSと日本基準の減損会計は、減損の認識基準、減損検証の方法、減損損失の計算方法など、様々な面で違いが見られます。
この違いは、それぞれの基準が異なる目的、規制環境、経済状況に対応して作られているためです。
国際的なビジネスを展開する企業にとって、これらの違いを理解し、適切に財務報告を行うことは重要です。
また、投資家やクレジットレイティング機関など、企業の財務状況を分析するためには、これらの違いを理解することが必要となります。
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