みなさんは、有価証券と聞いたら何を思い浮かべますか?そもそも。有価証券というワードを聞いたことのない方もいるかもしれません。簿記を勉強している方はもうご存じですね。この有価証券というものは、実は多くの種類があり、それぞれの役割を持っています。今回は、企業にとっても非常に大切な2種類の有価証券を一緒に学んでいきましょう。
有価証券とは?関連会社株式・子会社株式とその他有価証券について詳しく解説!
- テーマ
- 関連会社株式・子会社株式
- 監修
- 簿記マスター
【目次】
有価証券とは?
では、そもそも有価証券とは何なのでしょうか。おさらいしておきましょう。
有価証券とは、要するに
株式・債券・手形・小切手のことを指しています。そのなかでも、有価証券、というと一般的には株式・社債券などの資本証券と呼ばれているものを指すことが多いです。
有価証券とは、それ単体で価値があります。さらに、簡単に譲渡や売買ができる利点があります。
また、株式や社債券についてもおさらいをしておきましょう。株式とは、株式会社が資金調達のために発行するものです。さらに、株主総会での議決権、分配金請求権を持っています。発行する会社からすると、貸借対照表上では純資産に計上されています。
社債券は会社が資金調達のために発行し、利息の請求などが可能です。また、期間が設けられている点でも株式とは異なりますね。発行元からすると、貸借対照表上では負債に計上されています。このような点で違いが生じています。
次に、有価証券の種類について解説します。
有価証券の種類
では、有価証券はどれほどの種類があるのでしょうか。その種類というのは、有価証券を保有している目的によって異なります。
大きく分けて、
①売買目的有価証券
②満期保有目的債券
③関連会社株式・子会社株式
④その他有価証券
の4種類があります。今回はそのうち、関連会社株式・子会社株式と、その他有価証券についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
③関連会社株式・子会社株式
この関連会社株式・子会社株式というのは、会社にとって非常に重要です。貸借対照表上では固定資産、投資その他の資産に計上されています。保有の目的としては、関連会社株式は他社に重要な影響を与えるもの、子会社株式は他社を支配するものです。便宜的に関連会社株式と子会社株式を一緒にしていましたが、2つには明確な違いがあります。それは簡単に言うと、持っている株式の数の多さです。関連会社株式と認められるためには、会社の事業方針などに対して重要な影響を与えられる場合です。子会社株式は、なんとなくイメージはつくかもしれませんが、会社を実質的に支配している場合です。また、この2つの株式は毎期の評価替え、評価損益の計上は行いません。売買目的有価証券の場合は行いますが、時価の変動はそれほど気にしないような債券です。仕訳はそれぞれ、連結会計や持分法会計にて頻出しているため、単体として仕訳問題に出るのはあまりありません。
④その他有価証券(投資有価証券)
次に、その他有価証券です。その他、と聞くとあいまいな分類と感じるかもしれません。実質、その他有価証券というものは、売買目的有価証券でもなく、満期保有目的債券でもなく、関連会社株式でも子会社株式でもないものを指しています。
また、貸借対照表上では固定資産、投資その他の資産として計上されています。また、その際は投資有価証券として表記します。具体的な保有目的の例としては、売却する考えは無いが、長期間保有して利殖(配当金や利息目的)するものや、取引先との関係のために保有するものといったものです。そして、もうすでに純資産について学んでいる方はその他有価証券差額金という単語を聞いたことがあるかもしれません。ここに関係しています。このその他有価証券は、売買目的有価証券と同じく毎期末に時価で評価替えをします。そしてその評価差額の計上は、2種類の計上方法があります。
・全部純資産直入法
評価損→その他有価証券評価差額金(貸借対照表→純資産→評価・換算差額等)
評価益→同上
・部分純資産直入法
評価損→投資有価証券評価損(損益計算書)
評価益→その他有価証券評価差額金(貸借対照表→純資産→評価・換算差額等)
この違いがあります。ちょっと覚えづらいかもしれませんが、しっかり覚えておきましょう。評価益はどちらにしてもその他有価証券評価差額金になりますね。また、このその他有価証券差額金というのは実はこの有価証券に関する項目だけに留まらず、連結会計・持分法・包括利益・税効果会計といった高度な会計にも要素として出題されています。問題を解いて少し慣れておきましょう。
例題:ABC株式会社は、長期利殖目的で有価証券50,000円を取得した。期末になり、以下のように時価が変動した。それぞれの仕訳を行いなさい。
解答欄
ABC株式会社は、長期利殖目的で有価証券50,000円を取得した。期末になり、以下のように時価が変動した。それぞれの仕訳を行いなさい。
(1)期末の時価が52,000円
ア.全部純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
イ.部分純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
(2)期末の時価が45,000円
ア.全部純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
イ.部分純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
解答・解説
(1)期末の時価が52,000円
ア.全部純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
投資有価証券 | 2,000 | その他有価証券評価差額金 | 2,000 |
イ.部分純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
投資有価証券 | 2,000 | その他有価証券評価差額金 | 2,000 |
(2)期末の時価が45,000円
ア.全部純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
その他有価証券評価差額金 | 5,000 | 投資有価証券 | 5,000 |
イ.部分純資産直入法を採用していた場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
投資有価証券評価損 | 5,000 | 投資有価証券 | 5,000 |
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、売買目的有価証券と満期保有目的債券について学びました。それぞれ試験によく出る項目ですので、よく復習しておきましょう。また、他の有価証券2つについても勉強しておきましょう。是非、頑張って下さい。