経理/簿記試験

簿記で出題される社債の抽選償還とは?計算方法や仕訳方法をわかりやすく解説!

テーマ
社債の抽選償還とは
監修
簿記マスター

みなさんは、社債の抽選償還、ときいて、どのようなものを思い浮かべますか?名前だけ聞くと、くじ引きみたいなイメージを思いつくかもしれません。実際にはそうなのですが、会社にとって、簿記検定の上ではその償還方法よりは、すこし特殊な計算方法の方が重要です。そんな抽選償還の計算方法を身に着けていきましょう。

社債の基礎知識

ではまずは、社債のしくみについておさらいしておきましょう。国債、地方債という単語はなんとなく聞いたことがあるかもしれません。それの、会社版です。会社がお金を借りるために、社債というものを募集し、資金を集めるものです。簿記の貸借対照表上では負債の分類に該当します。

ちょっと勘のいい方は、株式と何が違うのか疑問に思ったかもしれません。資金を調達する、という点では共通しています。ですが、株式と違って社債は利息を支払い、そして償還するという点で明確な違いがあります。

また、簿記上では様々な社債があるので、簿記上でよく出題されている社債を少しだけ紹介します。

普通社債

社債、というと主にこの普通社債を指しています。簿記検定では特に指定のない限り、おおよそこの普通社債に該当します。また、大体の社債が固定金利、満期までの保有となります。

転換社債

転換社債は、転換社債型新株予約権付社債を指します。ある一定の条件を満たすことによって、社債から株式に変えることができます。この社債は、発行の時点で株式に転換する価額が決められており、もしその価額よりも株価が上がったら、安い価額で株を入手することができます。また、その転換する権利は行使しないことも可能なため、そのまま満期まで保有することも可能です。

こういった特性を持つため、普通社債よりも利率が低く設定されています。

また、社債は会社が償還、払い戻すことが可能です。この償還方法は様々ありますが、今回は抽選償還についてです。次に、実際の計算について見ていきましょう。

定額法の計算方法

では、実際の計算を見ていきましょう。社債の勉強をしている方は、定額法と利息法はおなじみですね。この2種類は、社債になくてはならない利息の計算方法についてです。この利息の計算方法別で解説をしていきます。

 

まずは、定額法についてです。

この定額法は、社債の満期までに発生する利息(額面金額と購入金額の差)を均等に分配して計算するものです。そして、抽選償還の場合はすこしずつ一定金額を償還していきます。その場合は、以下の図のような計算をします。

〈前提条件〉

  • 社債の額面金額:1,000,000円
  • 社債の購入金額:850,000円
  • 年利率5%、利払い日は年に1回

このように、償還・利息のスケジュールに合わせて、この表のような計算を行っていきます。償還日が近いほど、金額が高くなります。

では、実際に計算の問題をやってみましょう。先ほどの図表を見ながら、同じようなものをみなさんでも作成しながら解いてみましょう。

【例題①】A株式会社は、2020年4月1日に社債を発行し、抽選償還を行うことを決定した。発行条件は以下の通りである。条件を踏まえて、2023年3月31日(利息支払い済み、当該年度の抽選償還済み)の解答欄の金額を回答しなさい。

  • 額面金額:1,500,000円
  • 発行金額:1,000,000円
  • クーポン利率:4%
  • 利払い日:年1回、3月31日

決算日は3月31日である。利息の計算方法は定額法である。抽選償還は1年に1度、3月31日に行い、発行から1年据え置いたのちの2022年3月31日から開始する。

解答

  • 社債の貸借対照表上の金額(750,000)円
  • 社債利息(138,000)円

 

では、解説に移ります。

まずは、この表をご覧ください。

今回の例題では、1年間社債を据え置いていました。そういった場合は、この表のように計算します。そして、解答にある社債利息ですが、クーポン利率にかかる利息も含まれていますので、2023年の償還後の金額に掛ける…のではなく、償還前の2022年4月~2023年3月の間の利息を計算しなければならないので、2022年4月時点の金額、950,000円に4%を掛けて計算します。

利息法の計算方法

では最後に、利息法の計算を行います。定額法の計算とは少し異なります。

最後に、利息法での計算方法を見ていきましょう。利息法は、社債の購入金額にある一定の割合を掛けて計算して、利息を計算します。

また、以下の数字を使用します。

  • 額面金額:50,000円
  • 発行金額:47,500円
  • 実行利率:2.67%
  • クーポン利子率:1%

計算して表に書き起こすと、以下のようになります。

先ほどとは違い、利息を分割して考えません。それぞれが連続したように計算します。また、計算の際には、額面に利息を計算するには、それぞれの時点の取得価額に実行利率を掛けて、利息を計算し、さらにクーポン利率を控除して取得価額に算定します。また、最終年度は調整します。

それでは、計算を皆さんでも解いてみましょう。

【例題②】B株式会社は、2020年4月1日に社債を発行し、抽選償還を行うことを決定した。発行条件は以下の通りである。条件を踏まえて、2023年3月31日(利息支払い済み、当該年度の抽選償還済み)の解答欄の金額を回答しなさい。

  • 額面金額:300,000円
  • 発行金額:291,000円
  • 実行利率:1.531%
  • クーポン利率:0.5%
  • 利払い日:年1回、3月31日

決算日は3月31日である。利息の計算方法は利息法である。抽選償還は1年に1度、3月31日に行い、2021年3月31日から1年ごとに償還する。

解答

  • 社債の貸借対照表上の金額(118,137)円
  • 社債利息(1,800)円

解説ですが、まずは以下の表をご覧ください。

表の作り方さえわかれば簡単です。きちんと作表できた方は答えられたのではないでしょうか。また、今回も最終年度の利息は調整をしています。

 

いかがでしたでしょうか。少し複雑でしたが、表の作り、そして考え方さえ身に着ければ簡単です。みなさんも、ぜひ頑張って下さい。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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