日常生活では小切手は馴染みが薄いものです。しかし、経理処理を担う人は、簿記を勉強する人にとっては必ずマスターしておくべきなのが小切手の仕訳処理です。
馴染みが無いから覚えにくいと感じてしまう人も多いのではないでしょうか。今回は、小切手の仕訳処理を覚えるためのポイントを絞ってお伝えします。
日常生活では小切手は馴染みが薄いものです。しかし、経理処理を担う人は、簿記を勉強する人にとっては必ずマスターしておくべきなのが小切手の仕訳処理です。
馴染みが無いから覚えにくいと感じてしまう人も多いのではないでしょうか。今回は、小切手の仕訳処理を覚えるためのポイントを絞ってお伝えします。
【目次】
これまで、検定試験の中で多く出題されてきた小切手や手形ですが、実務上ではその利用が減少しています。その理由としては企業や金融機関で資金化までの手間がかかることや、ITを活用した新たな決済サービス方法が確立してきたことがあげられます。
経済産業省は2026年には手形の利用を廃止する方針を明らかにしており、手形・小切手機能の電子化を推進していく流れです。実際、手形や小切手の利用は1990年のピーク時と比べると2017年には3%程度の利用となっており大幅な減少を見せています。事務負担の削減などの理由から手形や小切手に代わる決済方法として、「銀行振り込み」のほかに、「電子記録債権」や「エレクトロニックバンキング(EB)」といった電子化への移行が進められています。
しかしその一方で規模の小さな企業ほど、多額の現金の取扱いが不要である利便性や振込手数料などのトータル費用が少額であること、そして慣例として信用されてきた決済方法であることなどから、手形や小切手を使い続けたいという意向が高くなっています。
では、検定試験で小切手の取扱いはどうでしょうか。検定試験は実状を伴った問題が出題される傾向にあります。しかし、まだまだ利用者の多い小切手はしばらくの間は出題範囲から外されることもないと思われます。日商簿記検定で外せない「小切手の処理」。振出時、受取時、誰が振り出したのかにより勘定科目が変わるため苦手だという方も多いのではないでしょうか。よく出る次の4つのパターンに分けて小切手の処理方法を見ていきましょう。
①小切手を振り出したとき
②他社振り出しの小切手を受け取ったとき
③他社振り出しの小切手を換金せずにそのまま第三者へ渡したとき
④自社が振り出した小切手を受け取ったとき
【問題例】当社はB社から商品50,000円を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。
【解答】(借方) 仕入 50,000 (貸方) 当座預金 50,000
小切手に金額を記入し相手に渡すことを「小切手を振り出す」といいます。小切手を振り出すことで、いずれ銀行の当座預金からお金が引き出されます。そのため、当座預金の減少つまり、(貸方)当座預金と仕訳します。
【問題例】当社はA社へ商品50,000円を売り渡し、代金はA社振り出しの小切手を受け取った。
【解答】(借方) 現金 50,000 (貸方) 売上 50,000
受け取った小切手は、支払銀行(小切手に記載されている銀行)へ持っていくとその場で現金化されます。そのため、通貨を受け取ったときと同じように現金の増加として取り扱い(借方)現金と仕訳します。
このように通貨ではないものの現金と同様の流動性を持つ小切手などを通貨代用証券といいます。現場では支払銀行へ小切手を持参することは少なく、自社の取引銀行へ取立委任をし、のちに資金化されます。
【問題例】当社は買掛代金50,000円支払いのために、かねて受け取っていたA社振り出しの小切手を渡した。
【解答】(借方) 買掛金 50,000 (貸方) 現金 50,000
受け取った小切手の使い方について確認します。②のように小切手を銀行へ持参し資金化するという方法以外に、受け取った小切手をそのまま取引先に渡すという方法があります。通貨代用証券は資金化せずに支払手段としてそのまま譲り渡すことができます。
本問では「かねて受け取っていた小切手」を取引先に渡した。つまり、以前に小切手を受け取ったときに (借方)現金 という処理をしていたことが分かります。その他人振り出し小切手を銀行で換金せずに小切手のまま取引先に渡したということです。したがって、通貨代用証券(現金)という資産が減少したので (貸方)現金 と仕訳をします。
【問題例】当社はD社から売掛代金の回収として50,000円の小切手を受け取った。この小切手は、以前当社がC社に対して振り出したものであった。
【解答】(借方) 当座預金 50,000 (貸方) 売掛金 50,000
③で説明のとおり、小切手などの通貨代用証券は現金化せずにそのまま相手へ渡すことができます。本問は以前に当社が振り出した小切手が現金化されずにそのまま譲り渡され、巡り廻って振り出した当社へ戻ってきたというものです。
以前に当社が小切手を振り出した時にはいずれ支払が行われることから、当座預金の減少⇒(貸方)当座預金という処理をしていたはずです。しかし、当社がこの小切手を受け取った時点で、第三者が銀行でこの小切手を提示することはないということになります。そこで、当座預金口座からの支払いがない(当座預金が減らない)と断定できるため、(借方)当座預金と仕訳をします。
上記4つのパターンをまとめると次のようになります。
①小切手を振り出した | (借方) ○○ (貸方) 当座預金 |
②他社振出の小切手を受け取った | (借方) 現金 (貸方) ○○ |
③他社振出の小切手を譲り渡した | (借方) ○○ (貸方) 現金 |
④自社が振り出した小切手を受け取った | (借方) 当座預金 (貸方) 〇〇 |
小切手の処理に関する仕訳は、第1問の仕訳問題のみならず、個別問題・総合問題とすべてに関わってきます。例えば、第3問の試算表作成問題で小切手の扱いを誤り、「現金」とするところを「当座預金」としてしまった。この一つのミスで2つの採点箇所(6点)を落としてしまう可能性もあります。違いを押さえた丁寧な仕訳が重要です。
日商簿記検定3級は小規模企業の会計処理ができるレベルとされています。小切手は大企業よりも小規模企業でより多く使用されている実態がありますので、検定合格のためだけではなく経理担当者として日常の業務のためにもぜひ確実な処理を心掛けたいところです。
▼買掛金、売掛金、手形、小切手の仕訳方法を詳しく解説したページはこちら↓