経理/簿記試験

中小企業診断士への転身:簿記経験者の魅力的なキャリアパス

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中小企業診断士への転身
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中小企業診断士



簿記の学習を進められている皆様。取得された後の目標はもうお決まりでしょうか。今回是非おすすめさせて頂きたいのが中小企業診断士という国家資格となります。

中小企業診断士とは

中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。

法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助言を受けるに当たり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。

中小企業基本法では、中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者(公的支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント)として位置づけられています。

いわば国のお墨付き資格なのです。

 

 



▼「中小企業にも必要?中小企業における内部統制の構築方法について解説!」はこちらの記事をご確認ください

中小企業診断士の魅力とは

日本で唯一の経営コンサルタント資格

まず中小企業診断士の魅力として、日本で唯一のコンサルタント資格としてのネームバリューがあります。コンサルタントを名乗るには資格はいりませんが、だからこそ信頼性において、競業に対し大きな優位性を持つことができます。

強い人脈形成

強い人脈形成が実現できるのもこの資格の魅力です。受験生時代は勉強会などを通して、資格取得後は研究会などを通して、様々な業種の方と交流できる機会が多く用意されております。この人脈の広さは自身の視野を広げることができると同時に、中小企業診断士として活躍する際には必ず自身の強みとなってきます。

多様な働き方の可能性

中小企業診断士取得後は多様な働き方が用意されております。資格取得後は独立して中小企業の創業支援や補助金支援を行なう一方、講師業や書籍執筆などいわゆる中小企業診断士らしい仕事をされる方もいれば、企業内診断士として、現在働いている職場での昇進や経営企画部などの会社の中枢部署への異動をされる方も多いです。また、社会的な信頼度も高いので転職市場でもその強みを発揮できるでしょう。

経営者目線に近づく

学習内容は中小企業診断士の社長にアドバイスを行うことが前提となっている為、自然と経営者の目線が身についてきます。これは大きいです。今までひとりのプレーヤーとしての考え方からマネジメント層の考え方へ変わってくることで、自身の会社との向き合い方も変わってきますし、将来的なビジョンを生み出しやすくもなってきます。

論理的思考力の形成

診断士試験の2次試験は主に記述問題となります。限られた時間の中で設問に対してしっかりと向き合い、的確な助言を行うことを求められます。これはかなり論理的思考が身に付きます。相手から聞かれたことに素直に答える、単純ですが実際慣れていないと難しいことも多いと思います。例えば「課題」を聞かれたのに「問題点」を答えてしまうようなケースです。このような思考力も当試験を通して見に着けることができます。

AIに代替されにくい資格

2015年に公表された、野村総研と英オックスフォード大学の共同研究結果によると、各士業がAIに代替される可能性は、以下の通りとなります。

士業 AIによる代替の可能性
弁護士 1.4%
司法書士 78.0%
弁理士 92.1%
行政書士 93.1%
公認会計士 85.9%
税理士 92.5%
社会保険労務士 79.7%
中小企業診断士 0.2%

中小企業診断士は数字には表れない非財務的な要素も分析し、中小企業の社長との関係性構築の為コミュニケーション能力をも磨いていきます。これはAIが苦手としている分野です。その意味でも将来性のある資格と考えることができるでしょう。

 

▼「経理担当者が種類の多い証憑書類チェックで見るべきポイント」はこちらの記事をご確認ください

中小企業診断士の試験内容

中小企業診断士試験の筆記試験は、1次試験(マークシートによる選択式)は

① 経済学・経済政策

② 財務・会計

③ 企業経営理論

④ 運営管理(オペレーション・マネジメント)

⑤ 経営法務

⑥ 経営情報システム

⑦ 中小企業経営・中小企業政策

の7科目、2次試験(記述式)は

 

① 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ

② 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅱ

③ 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ

④ 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅳ

の4科目です。

1次、2次試験ともに、全科目の平均が60点以上で、かつ40点未満の科目が無ければ合格です。また2次筆記試験合格後は口述試験も控えております。ストレート合格率は約4%と狭き門となっております。

▼「M&Aで運転資本/Net Working Capitalに注目すべき理由とは?」はこちらの記事をご確認ください

中小企業診断士と簿記の親和性

では、簿記3級・2級・あるいは1級を持っているとどれほどのアドバンテージがあるのでしょうか。

簿記学習者が有利な理由

診断士の受験生の中には簿記未経験者も多い為、相対的にかなりの優位性を発揮できます。1次試験の財務会計においても3級で50点、2級で60点、1級で70点まではほとんど苦労せずに獲得できると思います。一方簿記であまり扱うことのない財務分析やファイナンスの分野に関してもしっかりと対策を行うことで、更なる点数の積み上げが期待できます。この試験の大きな特徴は1次試験、2次試験共に合計で6割を取ればいいというところです。従って1次試験の「財務・会計」や2次試験の「事例Ⅳ(会計)」にて簿記の知識分を上乗せできれば、他の科目が多少悪くても十分合格に近づくことができるようになります。

 

▼「FDD時に見るべき観点、これを見ないと後で困る落とし穴」はこちらの記事をご確認ください


簿記取得者の受験戦略

次に具体的な簿記取得者の受験戦略について触れさせて頂きます。

1次試験の財務会計と2次試験の事例Ⅳ

1次試験の科目「財務・会計」については簿記2級以上の取得者であれば、そこまで時間を費やす必要はありません。簿記と異なるのは上述したような簿記範囲外の分野があることや、1次試験に関しては電卓が使えないことです。そこをしっかりとカバーできれば簿記学習の優位性を最大限発揮できます。そうしたときの1次試験、2次試験の理想の得点割合は下記のようなイメージとなってきます。

●受験時の目標得点配分

≪1次試験≫

一般受験生 簿記学習者
経済学・経済政策 60 50
財務・会計 60 80
企業経営理論 60 60
運営管理 60 60
経営法務 60 50
経営情報システム 60 60
中小企業経営・政策 60 60
合計 420 420

≪2次試験≫

一般受験生 簿記学習者
事例Ⅰ 60 50
事例Ⅱ 60 50
事例Ⅲ 60 60
事例Ⅳ 60 80
合計 240 240

 

▼「企業価値算定の落とし穴。M&A時に過大評価を防ぐ計算方法は?」はこちらの記事をご確認ください



まとめ:簿記のスキルを生かして中小企業診断士になろう!

学習のイメージは何となく伝わりましたでしょうか?簿記と中小企業診断士の二刀流となることで、ご自身の将来的な選択肢が更に大きく変わってきます。中小企業診断士はあくまで一例ですが、簿記学習をされている方には是非とも簿記取得を最終目標にせず、次の目標次の目標を見据えて頂き最高風速で簿記の合格を勝ち取って頂ければと思います。これからの先行きの見えない時代、スキルがあればある程環境変化への対応力は高まってきます。学習を通して皆様の可能性がますます広がっていくことを、心より応援しております。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

経理実務や簿記の試験対策に役立つ知識を提供します。

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