経理/簿記試験

【合格率の推移あり】日商簿記2級の難易度は?試験対策は?

テーマ
日商簿記3級、日商簿記2級
執筆
日商簿記2級合格者

日商簿記2級の資格は就職や転職により有利に働くといわれています。試験範囲の改定後、2級のレベルは従来よりも上がっており、しっかりとした継続的な学習が必要になります。着実に合格するために必要な出題問題傾向別に解き方のポイントをご紹介します。

試験を受験する際に失敗しないよう、試験の概要やポイントをチェックしましょう!

簿記2級の合格率と難易度

合格率の推移をチェックして、日商簿記2級の難易度を知ろう

2020年末から日商簿記2級もネット試験が開始されました。2021年6月からは、紙の試験もネットの試験も同じ範囲・試験時間で実施されます。また、2022年度からは、新しい収益認識基準の問題も出題範囲に含まれます。

就職や転職により有利に使える日商簿記2級について、出題問題別に合格するための解き方のポイントをご紹介していきます。

 

まずは、日商簿記2級の概要をご説明します。

試験日程 受験料 試験科目 試験時間 合格基準
統一試験:年3回

(6月・11月・翌年2月)

※ネット試験は随時

4,720円

(税込み)

商業簿記
工業簿記(原価計算を含む)
90分 70%以上

 

 

日商簿記2級でもネット試験(CBT試験)開始。

 

 

①試験日程

試験の日程は年度(4月から翌年3月)の間で3回実施されます。開始時刻は13:30から。申込の受付日時や受付方法は、受験する商工会議所によって異なることから、受験を希望する地域の商工会議所に確認する必要があります。

 

なお、2020年12月から開始しているネット試験(CBT試験)は随時受験が可能で受験日の3日前から申し込みが可能。ただし、定員数があることから、最寄りの受験地がすでに満席になっている場合があり、特に申込日に近い受験日の土日・祝日などの休日は、満席の会場が多いです。受験日の3日前であれば、予約の変更も可能なので、勉強の進捗に合わせて変更できます。

 

 

②受験料

年3回の統一試験、ネット試験どちらも同じです。ただし、ネット試験の場合や統一試験でも一部の商工会議所(東京商工会議所など)では事務手数料550円が別途かかります。

 

③試験科目

商業簿記、工業簿記から計5問出題され、内訳は商業簿記3問、工業簿記2問になります。試験範囲は、日本商工会議所が定める、毎年度4月1日現在施行されている法令等に準拠した、『商工会議所簿記検定試験出題区分表』に基づき出題されます。

 

なお、収益の計上方法等を具体的に定めた「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識基準」)が日本基準採用企業を対象に2021年4月1日から適用されることから、2021年度の新しい区分表(主に1級と2級)に収益認識基準が反映されます。

学習教材の作成期間や受験者の学習期間の確保することが配慮され、収益認識基準に関連する部分は、2022年度(2022年4月1日以降に施行する試験)から出題になることから、2022年4月以降に受験しようとする方は、収益認識基準の内容も含めて学習する必要があるので注意しましょう。

(ただし、収益認識基準は企業取引でもっとも重要な売上に関する会計基準を定めたもので、従来の実現主義とは全く異なる考え方を採用しており、これを理解していないと実質的に簿記1級や2級レベルとは言えなくなるので、受験範囲に限らず学習することをオススメします。)

 

④試験時間

2021年度(2021年6月試験)から、ネット試験と同じ90分となります。

 

⑤ネット試験方式の特徴

ネット試験では、コンピューターが受験者ごとに異なる問題を出題します。また、紙の試験では受験後約2週間後に合格発表がありましたが、ネット試験では試験後即時にわかります。

また、ネット試験では、計算用紙しか配られないので(計算用紙は回収されてしまう)、紙の試験であたりまえにできた、問題文へのメモや書き込みができません。

受験した方のブログや記事などを見ると、それぞれメリット・デメリットがあり、向き不向きがあるようです。

 

⑥合格率の推移

連結会計が簿記2級に加わった試験範囲改定後の第147回以降の出題論点と合格率を列挙します。

合格率は20%前後を推移しており、出題論点の傾向としては、商業簿記からは、1問目は必ず仕訳問題、2問目は各種主要論点、3問目は精算表や財務諸表作成問題となり、4~5問目の工業簿記からは、主要な論点項目からまんべんなく出題される傾向にあります。

出題論点 合格率
商業簿記(1~3問) 工業簿記(4~5問)
156(2020.11.15) 仕訳問題(過去1問目は全て同じ)

有価証券取引

連結貸借対照表作成

費目別原価計算

直接原価計算

18.2%
155(2020.6.14) 中止(新型コロナウイルス感染症の影響)
154(2020.2.23) 商品売買取引

財務諸表作成

単純個別原価計算

単純総合原価計算

28.6%
153(2019.11.17) 空欄推定問題

連結精算表作成

本社工場会計

組別総合原価計算

27.1%
152(2019.6.9) 銀行勘定調整表

財務諸表作成

部門別原価計算

標準原価計算

25.4%
151(2019.2.24) 株主資本等変動計算書

連結精算表作成

部門別原価計算

等級別総合原価計算

12.7%
150(2018.11.18) 固定資産取引

財務諸表作成

費目別原価計算

直接原価計算

14.7%
149(2018.6.10) 外貨建取引

本支店会計

直接原価計算

工程別総合原価計算

15.6%
148(2018.2.25) 有価証券取引

連結精算表作成

単純個別原価計算

組別総合原価計算

29.6%
147(2017.11.19) 合併・連結会計

財務諸表作成

本社工場会計

標準原価計算

21.2%

 

 

合格者オススメの解答手順は「得点が取りやすい問題から解答していく」

合格へが近づく解き方の順番とは?

日商簿記2級の概要がわかったところで、合格に向けた解き方について、出題問題別に解説します。

解答の順番としては、専門学校や資格学習のための書籍、資格解説のHPやブログにもよく書かれているように、高得点が取りやすい問題から、以下の順番で解答していくのが得策です。

(1)第4問、第5問 → (2)第1問 → (3)第3問 → (4)第2問

ここからは、この順番でそれぞれの問題の試験対策と解答のポイントを解説していきますね。

日商簿記2級に合格する試験対策

勉強のポイント! 日商簿記2級の合格のために工業簿記の6つの論点をマスターしよう

第4問及び第5問 問題の傾向と対策(工業簿記の6つの論点)

工業簿記が出題される第4問と第5問ですが、おおまかに整理すると、以下の主要な解答方法をマスターして、6つの主要論点すべてに対応できるようにしましょう。

対象論点 解答の鍵 主なポイント
1. 総合原価計算 Tフォーム ・期首、当期投入、投入時期などの流れを図式し、材料追加投入方法に応じた数量換算を間違えないこと
2. 標準原価計算 シュラッター図 ・図式を覚えて、能率差異、操業度差異、予算差異を算出

・借方差異(不利差異)、貸方差異(有利差異)は費用勘定を考えればわかる

3. 直接原価計算 損益分岐点図表 ・固定費線、売上高線、総費用線で図式化して解くこと
4. 個別原価計算 指図書状況把握 ・指図書の内容をしっかり把握し、直接費(直接材料費、直接労務費、直接経費)は直課、製造間接費は部門別計算という集計方法をマスター

・指図書の命令数量がすべて完成か未完成かで、完成品or仕掛品を判断

5. 部門別原価計算 部門別配布表 ・配賦基準をしっかり把握すること
6. 費目別原価計算、財務諸表、本社工場会計 勘定連絡問題 ・費目別の分類(大分類・中分類・勘定科目の体系)を頭に叩き込む

本社工場会計は、工場の仕訳を先に書く、工場で使える勘定科目にない場合、本社勘定を使うこと

 

第1問 問題の傾向と対策

仕訳問題も、比較的平易な論点のため、満点に近い点数を獲得すべきです。論点ごとの学習は当然必要ですが、以下のように問題文を解いていき、ミスを防止し、正確かつスムーズな解答しましょう。

・問題文にある勘定科目を資産/負債/資本/収益/費用に切り分けておく

・問題文にあるすでに切ってある仕訳は、『( )(カッコ書き)』で区別しておく

・長文の場合は、部分的に仕訳を切り、また計算結果を問題文にメモしておく

 

第3問 問題の傾向と対策

精算表や財務諸表の作成問題は、個々の論点内容と勘定体系の関係が把握できていることを確かめる問題ですが、個々の論点で部分点が十分望めるため、落としてはいけない問題です。こちらも解答に際しての留意ポイントを記載します。

・精算表問題の場合、決算整理の修正記入欄には配点がないため、必ず整理後の金額まで記入すること

・精算表のBS科目やPL科目で記入不要な部分は、斜線などを引き、解答が記入な箇所を明らかにしておく

・財務諸表問題の場合は、問題文の試算表の左右の空スペースに計算結果をメモし、試算表に該当科目がない場合は、直接財務諸表へ計算結果を記入すること

 

また、財務諸表問題の場合、どの場所にどの科目を置くルールについて、理解しておく必要があるのでポイントだけ説明します。該当する科目がどこの区分か迷った時の判断材料にしてください。

貸借対照表の表示区分の2つのルール。

a)正常営業循環基準

主たる営業活動に関わるものは、流動資産や流動負債する方法です。商品の仕入や売上など主たる営業活動から発生した債権と債務は流動資産と流動負債に表示するものです。よって、売掛金、受取手形は流動資産に、買掛金、支払手形は流動負債に表示します。

b)1年基準

解消まで1年以内なら流動、1年超なら固定に区分する方法です。①のルールに当てはまらない勘定科目を、翌期に解消されるかどうかという基準で区別します。翌期に解消される場合は流動資産や流動負債に表示し、それ以降に解消される場合は固定資産や固定負債に表示します。

 

損益計算書の表示区分の3つのルール。

a)主たる営業活動に関するものは、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に表示します。通常の営業活動から発生する収益と費用だけを集計したものが営業利益になります。

b)主たる営業活動以外に関するものは、営業外収益、営業外費用に表示します。利息や配当、評価損益などの財務や投資活動にかかわる損益が該当します。

c)臨時・巨額なものが、特別利益、特別損失に表示されます。通常の起きないような異常な事象によって発生した収益と費用を表示します。

 

 

第2問 問題の傾向と対策

過去の出題論点の傾向をまとめると、有価証券・固定資産・商品売買系の論点が約3割、株式資本が2割、銀行勘定調整表が2割、連結会計が1割となっています。

上記の出題傾向が高い論点は、取りこぼしないように十分学習しておく必要があります。

以下、個別論点から3つほどピックアップして解答ポイントをお伝えします。

 

1)有価証券~その他有価証券~

その他の有価証券の個別論点はよく出題されます。決算整理前残高試算表と保有銘柄別に取得原価・帳簿価額・決算日時価をもとに、決算整理後残高試算表を作成する問題です。

丁寧に回答すると、前期末の決算整理仕訳と決算振替仕訳、当期首の再振替仕訳、そして当期末の決算整理仕訳をすべて集計すれば解答できますが、それでは時間が足りませんので、クイックな解答方法をお伝えします。

なお、問題文に決算整理前残高試算表の金額や、当期首において評価差額金を振り戻す処理がまだ行われていないなど書かれている場合がありますが、解答には不要なので読み飛ばします。

 

a)決算日の時価をもとにその他有価証券の簿価を記入する

決算整理後残高試算表のその他有価証券の簿価は、どの方法によっても、決算日の時価となることがわかっていれば当然です。

 

b)帳簿価額を無視して差額を計算する

「決算日の時価」と「取得原価」を比較して差額を計算します。

全部純資産直入法の場合、差額がプラスの場合は、「その他有価証券評価差額金(貸方)」と「繰延税金負債」、マイナスなら「その他有価証券評価差額金(借方)」と「繰延税金資産」となり、その他有価証券以外の科目をそれぞれ集計すれば、解答完了です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 xxx その他有価証券評価差額金 xxx
その他有価証券評価差額金 xxx 繰延税金負債 xxx
その他有価証券評価差額金 xxx その他有価証券 xxx
繰延税金資産 xxx その他有価証券評価差額金 xxx

 

また、部分純資産直入法の場合は、差額がプラスの場合は、「その他有価証券評価差額金(貸方)」と「繰延税金負債(貸方)」、マイナスなら「投資有価証券評価損(借方)」と「繰延税金資産(借方)」と「法人税等調整額(貸方)」となり、PL科目(投資有価証券評価損と法調)以外は、これで解答完了です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 xxx その他有価証券評価差額金 xxx
その他有価証券評価差額金 xxx 繰延税金負債 xxx
投資有価証券評価損 xxx その他有価証券 xxx
繰延税金資産 xxx 法人税等調整額 xxx

 

部分純資産直入法の場合だけ、「取得原価」と「帳簿価額」を比較し、取得原価が帳簿価額より小さいなら解答終了。もし、取得原価が帳簿価額より大きいなら、その金額について次の仕訳を切り、投資有価証券評価損と法人税等調整額を集計すれば解答完了です。

 

取得価額2,000 帳簿価額1,000 法定実効税率40%の場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 1,000 投資有価証券評価損 1,000
法人税等調整額 400 繰延税金資産 400

 

2)株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、項目別に期首残高、期中増減、期末残高の推移を表す表で、仕訳のうち、純資産の勘定科目の増加と減少を記入するものです。

2級の場合は、株主資本とその他有価証券評価差額金のみだけなので、論点の仕訳と書き方を覚えれば簡単です。

注意ポイントとしては、その他有価証券評価差額金だけは、増減ではなく純額を記入するため、仕訳の金額をそのまま記入するのではなく、期首の戻しを考慮した差額を記入するくらいです。

【期首の再振替仕訳】

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券評価差額金 10,000 その他有価証券 10,000

 

【決算整理仕訳】

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 12,000 その他有価証券評価差額金 12,000

 

株主資本等変動計算書への記入額(純額)

12,000-10,000=2,000

 

3)連結会計

連結会計のポイントとしては、いつの時点のどんな仕訳をしているかを、しっかり把握していることが大事です。

連結財務諸表は、親会社の個別財務諸表+子会社の個別財務諸表 ±連結修正仕訳(開始仕訳+連結作成年度の連結修正仕訳)=連結財務諸表として表現できます。

簿記2級の連結修正仕訳は、大きく7つに分類できるので、支配獲得日から各年毎の仕訳を年度別に分類し、過去の仕訳は開始仕訳、当期の仕訳は当期の連結修正仕訳として、下図のような表を計算用紙にメモして解いていくと、仕訳漏れやダブりなどが防げます。

 

【連結修正仕訳のまとめ表】

連結修正仕訳項目 支配獲得日

(n年3月31日)

連結1年目

(n+1年3月31日)

連結2年目

(n+2年3月31日)

資本連結 1. 投資と資本の相殺 連結修正仕訳

開始仕訳

2. のれんの償却 連結修正仕訳

開始仕訳

連結修正仕訳
3. 子会社の当期純利益の振替 連結修正仕訳

開始仕訳

連結修正仕訳
4. 子会社の配当金の修正 連結修正仕訳

開始仕訳

連結修正仕訳
成果連結 5. 内部取引・債権債務の相殺消去 連結修正仕訳
6. 貸倒引当金の調整 連結修正仕訳

開始仕訳

連結修正仕訳
7. 未実現利益の消去 連結修正仕訳

開始仕訳

連結修正仕訳

※太字の部分が、連結2年目の連結修正仕訳となります。

 

 

 

まとめ

簿記2級は連結会計が加わった試験範囲改定後の第147回以降、より正確な理解力と計算力と回答能力の総合力が必要な受験問題に変わりつつあります。

公表された会計基準や実務指針をもとに、実務を意識した問題が出題されており、正しく理解して合格すれば、有益なスキルとして武器になるものです。

合格に向けた正しい解答ポイントをしっかりとマスターして、着実に合格点を取れる力をつけていきましょう。

Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

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