株式投資をする際に、今の株価が高いのか安いのか気になりますよね。
誰しもなるべく株価が割安の時に買いたいと思うはずです。
そんな時に判断基準になるのがPERとPBRです。
今回はPERとPBRの意味を理解したうえで、実際にある会社の損益計算書、貸借対照表を使いながら、PERとPBRの計算をしてみましょう。
株式投資をする際に、今の株価が高いのか安いのか気になりますよね。
誰しもなるべく株価が割安の時に買いたいと思うはずです。
そんな時に判断基準になるのがPERとPBRです。
今回はPERとPBRの意味を理解したうえで、実際にある会社の損益計算書、貸借対照表を使いながら、PERとPBRの計算をしてみましょう。
【目次】
PERとは、Price Earnings Ratio(株価収益率)の略で、1株当たりの利益に対して、現在の株価が何倍になっているかを表す指標です。
具体的な計算式は次のようになります。
PER=株価÷EPS(一株当たり利益)
例えば1株当たりの利益が100円、現在の株価が①100円、➁200円のケースを仮定しましょう。
①の場合PERは100円÷100円=1倍になります。
➁の場合PERは200円÷100円=2倍となります。
この場合①の方が➁に比べ安く株を買えることになります。
よって一般的にPERが低い方が株価は割安になります。
PBRとは、Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)の略で、1株当たりの純資産に対して、現在の株価が何倍になっているかを表す指標です。
具体的な計算式は次のようになります。
PBR=株価÷BPS(一株当たり純資産)
例えば1株当たりの純資産が100円、現在の株価が①50円、➁200円のケースを仮定しましょう。
①の場合PBRは50円÷100円=0.5倍になります。
➁の場合PBRは200円÷100円=2倍となります。
①の場合、株価は純資産以下の価値になっているため割安と言えるでしょう。
一方で➁の場合、株価は純資産以上の価格になっているため割高と言えるでしょう。
純資産のイメージが分からない方のために補足をします。
純資産は返済不要の資金で、会社が清算するときは、純資産から株主に分配が行われます。
1株当たりの純資産が100円ということは、今この瞬間に会社が解散した場合、1株あたり100円をもらえるということになります。
そのため一般的には、PBRが低い(株価が純資産よりも低い)方が割安になります。
それでは実際にソフトバンクのPERとPBRを計算してみましょう。
こちらは23年3月期のソフトバンクの決算短信を抜粋したものです。
まずはPERを計算するために、EPS(一株あたり利益)を計算します。
通常EPS(一株あたり利益)を計算する場合、利益の計算期間に対応させるため、発行済み株式は「期中平均株式数」を使用します。ソフトバンクの期中平均株式数は、4,721,966,921株になります。
次に利益を確認してみましょう。
利益は「親会社に所有する純利益」を使用することが一般的です。
ソフトバンクの親会社に所有する純利益は531,366百万円になります。
よってEPS(1株当たり純利益)は531,366百万円÷4,721,百株なので、112円になります。
なお、ソフトバンクの場合決算短信にEPSを記載しているので、上記計算をしなくてもEPSを把握することは可能です。
ソフトバンクの2023年3月31日の株価は1,529円なので、
PER=1,529円÷112円=13.58倍になります。
それではPER13.58倍は高いのでしょうか?低いのでしょうか?
参考に、23年3月の東証プライム市場の平均PERは14.8倍です。
同時期のソフトバンクが所属する「情報・通信業」の平均PERは23.6倍です。
そのため、ソフトバンクのPER13.58倍は、東証プライム市場の平均と比べ若干割安、
かつ情報・通信業の平均PERと比べ割安と言えるでしょう。
また、ソフトバンクの2020年3月31日のPERは15.38倍、2021年3月31日のPERは14.49倍、2022年3月31日のPERは13.75倍になります。つまり、現在のPERは直近3年間と比較しても割安だと言えるでしょう。
次にBPS(1株あたり純資産)を計算してみましょう。
こちらも基礎情報は決算短信で確認することができます。
通常BPS(一株あたり純資産)を計算する場合、純資産の計算期間に対応させるため、発行済み株式は「期末発行済み株式数」を使用します。
ソフトバンクの期末発行済み株式数は、4,787,145,170株になります。
次に純資産を確認してみましょう。
純資産「親会社の所有者に帰属する持分を使用」することが一般的です。
ソフトバンクの場合、2,224,945百万円になります。
よってBPS(1株当たり純資産)は2,224,945百万円÷4,787百株なので、465円になります。
ソフトバンクの2023年3月31日の株価は1,529円なので、
PBR=1,529円÷465円=3.3倍になります。
それではPBR3.3倍は高いのでしょうか?低いのでしょうか?
参考に、23年3月の東証プライム市場の平均PBRは1.2倍です。
同時期のソフトバンクが所属する情報・通信業の平均PERは2.2倍です。
そのため、ソフトバンクのPBR3.3倍は、東証プライム市場の平均と比べ割高、
情報・通信業の平均PBRと比べても割高と言えるでしょう。
一方で、ソフトバンクの2020年3月31日のPBRは5.27倍、2021年3月31日のPBRは6.81倍、2022年3月31日のPERは4.42倍なので、直近3年間と比較すれば割安と言えるでしょう。
先ほど東証プライム市場の平均PBRが1.2倍とお伝えしましたが、実は日本の上場企業の約40%はPBRが1倍未満です。一方で、米国のS&P500(米国の代表的な株価指数)に含まれる企業のうち、PBRが1倍未満の会社は約5%です。また欧州のSTOXX600(欧州先進国の代表的な株価指数)の含まれる企業のうち、PBRが1倍未満の会社は約25%です。
つまり世界的に見て、日本はPBRが低い企業が多いことが特徴です。
PBR1倍未満の場合、株価が割安と言える一方で、すぐに解散し純資産を株主に分配した方が株主のリターンが大きいと言うこともできるでしょう。つまり上場している意味、ひいては会社が存在している価値も無いという株式市場からのメッセージになります。
東京証券取引所もこの事実を重く受け止めており、2023年3月に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を発表しました。注目すべきは、PBRが1倍未満の企業に対し、要因分析および改善計画の開示を求めた点です。
それではPBRを改善するためにはどうすればよいでしょうか?
株価は様々な事象を織込んで形成されるため、「これをやればPBRが改善される」という絶対的な方法はありません。一般的にROEが改善されれば株価上昇やPBR改善につながるため、まずはROEの改善を進めるのが良いでしょう。
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