財務分析。といっても分析するには色々な指標があります。総資本回転率、当座比率、自己資本比率、労働分配率などなど。財務分析といってもなにをどうしていいのかわからないことが多くあるのではないでしょうか?
本記事では初心者でも活用できる財務分析の方法を解説します。
財務分析。といっても分析するには色々な指標があります。総資本回転率、当座比率、自己資本比率、労働分配率などなど。財務分析といってもなにをどうしていいのかわからないことが多くあるのではないでしょうか?
本記事では初心者でも活用できる財務分析の方法を解説します。
【目次】
会社の経営成績を示す決算書にはさまざまな数字が書いてあります。それら数字を利用して会社の経営状態などを収益性、安全性や成長性など多面的に分析します。
会社がどれだけ儲かっているかを示す収益性の指標は、財務分析のなかでももっとも気になるところではないでしょうか。「あそこの会社、利益率いいね」など話になりやすいのは、そういった例の一つです。
収益性とは、会社がどの程度儲ける力があるかを示す度合いです。収益性の高い会社=利益率のいい会社=儲かっている会社、反対に収益性の低い会社=利益率のわるい会社=儲かっていない会社とみなされます。
収益性は利益率で示され、単位は%です。数字が大きければ大きいほど本業が儲かっているとみなされます。収益性分析のなかでも最重要指標の一つとされているのは、売上高営業利益率です。
営業利益は会社の本業である営業活動で得られた利益ですから、もっとも会社の状態を反映している利益といえ、会社の経営状況を判断しやすい指標といえます。売上高営業利益率は以下の計算によって求められます。
売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100%
ところで、この売上高営業利益率は、どれぐらいが適正なのでしょうか。高ければ高いほど「良い」のはわかりますが、一般的にはどのくらいなのでしょうか。おおいに気になるところです。
10.1%。この数字はトヨタ自動車の2015年度の売上高営業利益率(連結)です。2016年度は10.0%とほぼ前年度を維持し、2017年は7.2%と落ち込むものの2018年度以降は8.2%と回復しています。
ライバルの日産自動車の売上高営業利益率も気になります。同社の売上高営業利益率(連結)は、2015年度は6.5%でしたが、2016年度6.3%、2017年度4.8%、2018年度2.7%と年々低下し、2019年度には営業利益は赤字となりました。
もう一方のライバル、三菱自動車の売上高営業利益率(連結)は、2015年度は6.1%。以降2016年度0.3%、2017年度4.5%。2018年度4.4%。2019年度0.6%とこちらも年々悪くなっています。悪くなっている以上に、トヨタ自動車より低いのは気になるところです(*1)。
同じ業界にあっても会社によって利益率は異なるものです。売上高営業利益率の悪い会社もしくは低下する会社は、なんらかのよろしくない事情を暗示しているようでもあります。
売上高営業利益率が高いほど本業の収益力は高く、いわゆる儲かっている会社といえます。その反対に売上高は太くてもさっぱり儲かっていない会社の営業利益率は低く、なんらか改善が必要です。ちなみにアメリカのIT企業グーグルの2019年の売上高営業利益率は21.1%、同年を含む3ヶ年度の平均は20.0%を超えています。それにしても売上高の2割は利益とはうらやましいかぎりです。営業利益は売上高から製造などにかかる費用である売上原価や販売にかかる費用や社員の給料などの販売費および一般管理費を控除した金額になります。
営業利益 = 売上高 - 売上原価 - 販売費及び一般管理費
金融機関などから財務改善を求められる場合、この営業利益を増やすように指摘されることは多いようです。営業利益を増やすためには売上高を増やすか、あるいは売上原価や販売費や一般管理費を減らすかのどちらかになります。単に増やしたり、減らしたりするだけでは指標には変化が見られず、売上を増やしたら営業利益も増やさなければ「率」の改善は見こめません。
とはいってもビジネスは難しいところがあり、販売は好調だったのに外国人ボスの一言で報酬を上げられてしまって(しかも自分の分だけ)、営業利益率を悪化させてしまうケースもあります。このケースは指標うんぬんというよりマネジメントかもしれません。
営業利益率は全業種一律というわけでなく、業種業態によって異なります。同業種同業態でも大企業だから高く、中小企業だから低いというわけでもありません。
平成30年度実績に基づく個人企業を含む中小企業の売上高営業利益率は3.6%でした(*2)。この数字だとトヨタ自動車や三菱自動車とくらべると低いものの日産自動車よりは高くあります。中小企業といえどもグローバルな大企業に負けていません。
また、おなじ中小企業でも企業規模によって売上高営業利益率は異なります。5人以下の企業では3.0%ですが、51人以上の企業では3.5%となっています。
さらにおなじ中小企業でも業種によって、売上高営業利益率は異なります。たとえば不動産業、物品賃貸業は10.3%ですが、小売業は1.5%です。
売上高営業利益率は高ければ良く、低ければ悪いはまちがっていませんが、同業同規模の比較でないと、その判断は難しいものです。トヨタ自動車よりもはるかに売上高営業利益率が高い地方の小規模企業というのはありますし、小売業は悪くて不動産業は良いとは一概にはいえません。
売上高営業利益率は業種、規模によって異なることから、他社との比較が重要になります。企業を見る目を養う手段の一つとして、売上高営業利益率に着目されてみるのはいかがでしょうか。
*1 自動車メーカー各社の数字は各社HPの財務・業績ハイライト
*2 中小企業庁 中小企業実態基本調査より