経費精算の際、どの勘定科目で処理をしたらいいのか迷う場面に多々遭遇するかと思います。ここでは、勘定科目の全体像を掴んでいただき、経理処理のシンプルな進め方をご紹介します。
「コレ」ってどの勘定科目?経費精算の仕訳方法やポイントについて解説!
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- 経費精算の仕訳方法
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- 簿記マスター
【目次】
勘定科目の考え方
まず、勘定科目とはどういったものかを2つのポイントから押さえましょう。
- 取引を分類するためのもの
- お金の使用用途、取引の詳細を表現するもの
具体例として、以下の仕訳を元に考察します。
100円のボールペンを現金で購入した場合
- (借)事務用品費 100円
- (貸)現金預金 100円
事務用品を購入したので、借方「事務用品費」、現金を支出したので、貸方「現金預金」として処理します。
一見何の変哲もない仕訳ですが、取引の詳細次第では勘定科目が変わります。
例えば、購入したボールペンの使用目的がノベルティ用だった場合、「広告宣伝費」として処理します。
- (借)広告宣伝費 100円
- (貸)現金預金 100円
「コレ」ってどの勘定科目?からの脱却
勘定科目に迷うと、作業をする手が鈍るまたは、止まってしまい時間だけが過ぎてしまいます。ここでは、ノンストップで効率的に処理が捗るポイントをお伝えします。
キーワードは、ズバリ「何でもいい」です。
再度、100円のボールペンを現金で購入した場合の例を挙げますが、「事務用品費」「消耗品費」のどちらで処理をしても構いません。
- (借)事務用品費 100円
- (貸)現金預金 100円
- (借)消耗品費 100円
- (貸)現金預金 100円
さらに、勘定科目を正しく扱うという意味では、好ましくない処理ですが、ノベルティ用のボールペンを取引の詳細を知らず「事務用品費」「消耗品費」で処理をしたとしても、大きな問題ではありません。
実は、勘定科目に明確な決まりはなく、「利益」を算出する上で一定のルール内であれば勘定科目は「何でもいい」のです。「取引内容と一致しているか」という感覚を大切にしつつ、言葉としてしっくりくるものを選びましょう。
必ず守ろう!4つの区分
「何でもいい」は、4つの区分を守ることが前提にあります。ここでは、各区分を説明します。
- 資産
- 負債
- 収益(売上)
- 費用(経費)
資産
資産には、現預金、将来回収できる現金、売却して現金化できるものなどが含まれます。
勘定科目として、「現金」「普通預金」「売掛金」「未収金」「土地」「建物」「車両運搬具」などがあります。
負債
負債は、将来支出される現金が主になります。
勘定科目として、「借入金」「未払金」「預り金」などがあります。
収益
収益のほとんどは、売上が占めます。「年商〇億円!」とは、この数字を指しています。
勘定科目として、「売上」「雑収入」などがあります。
費用
費用とは、販売する商品の仕入や従業員に支払う給料など、「収益を得るために使ったお金」のことです。
勘定科目として、「仕入」「通信費」「消耗品費」「減価償却費」「支払手数料」などがあります。
この4つの区分を間違えると、正しい「利益」を算出できないため、しっかり押さえておきましょう。
一定のルールに従う
ここまでの説明で、勘定科目の全体像を掴んでいただけていると思います。さらに、3つのルールを設けることで経理処理はシンプルになります。
- 現金を使わない
- 雑費を使わない
- 勘定科目をコロコロ変えない
現金を使わない
現金を使うと、現金出納帳の作成、残高照会など、とにかく面倒です。理想はキャッシュレスですが、業種によってはそういうわけにもいきません。やむを得ず使う場合は、個人が立て替えたことを意味する「役員借入金(法人)」「事業主借(個人)」などの勘定科目で処理しましょう。
雑費を使わない
雑費の多い決算書は、良くありません。中身が分かりづらく、「怪しい」「杜撰」という印象を外部に与えてしまいます。特に、金融機関からの融資、税務調査を受ける際、不利な扱いを受けます。どうしても適当な勘定科目がない場合は、取引の詳細を明示できる体制を整えたうえで計上しましょう。
勘定科目をコロコロ変えない
運送業を例に挙げます。ガソリン代を今年は燃料費、来年は旅費交通費で処理する場合、勘定科目の扱い方としては、何の問題もありません。しかし、ガソリン代の値上げに伴うコスト計算などをおこなう際、勘定科目が変わると経理資料からガソリン代を算出する手間が発生してしまいます。帳簿は各社各業種で、さまざまな様式が存在するため、勘定科目の変更は、慎重におこないましょう。
まとめ
体験談(おまけ)
筆者が、実際に経験した「雑費」にまつわる税務調査でのやりとりを紹介します。世の中には、様々な団体が存在します。調査の際、問題になったのは「負担金」という名の場所代です。場所代の支払先は、クライアントでなければ、土地の所有者でもないため、「雑費」で処理をしていました。税務署からの指摘は、「雑費」ではなく「交際費」ではないかというものでした。筆者側がおこなった対応は、負担金の計算根拠と取引詳細の分かる資料の提示のみです。それと提示する際に、一言だけ添えました。「支払先に問い合わせされますよね?連絡先はこちらです。」と…。以上のやりとりは一週間に及ぶ調査の2日目におこなったものです。その後、調査は順調に進み最終日を迎えました。調査結果は、軽微な修正のみと上々でした。「負担金」については、触れられていません。通常、反面調査のため何かしらのアクションを起こされるのですが、何事もなかったかのような対応をされました。後に分かったことですが、水平展開が苦手な組織による暴走だったようです。このように、何気ない経理処理の一コマから緊迫した場面に直面することもあります。マンネリに陥りやすい職種ですが、日々の積み重ねは企業を支えています。常に誠実な対応を心掛けましょう。