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確認状とは?監査対応に必要な基礎知識

テーマ
確認状とは?
執筆
公認会計士



近年、企業における会計監査の重要性が高まっています。
監査は、企業の財務諸表が適切かどうかを確認し、経営者や投資家に正確な情報を提供する役割を担っています。
監査を行う際には、監査人が企業の取引や内部統制を検証し、適切な監査証拠を収集する必要があります。
その際、監査人が依頼することがあるのが「確認状」です。

本記事では、「確認状」とは何か、その役割や効果、確認状の種類、日本の監査基準との関連性について解説します。
監査対応を行う企業の方や、監査に関心のある方に役立つ情報を提供することを目指しています。

確認状とは?

確認状とは、監査人が企業の取引先や関係者から直接情報を取得するために送付する文書のことです。
通常、監査人が企業に対して確認状を送付し、企業はそれを関係者に転送して回答を求めます。
このやり取りを通じて、監査人は企業から得られた情報が正確かどうかを独立した立場から確認できます。




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確認状の役割と効果について

確認状の主な役割は、以下の通りです。

監査証拠の収集

確認状を通じて、監査人は企業の取引や内部統制に関する情報を得ることができます。
これらの情報は、監査証拠として役立ちます。

不正や誤りの発見

確認状によって得られた情報を分析することで、監査人は不正や誤りがあるかどうかを判断することができます。
また、確認状の回答が遅れる場合や、矛盾がある場合などは、問題が存在する可能性があるため、監査人はさらなる調査を行います。

内部統制の評価

確認状を用いて、監査人は企業の内部統制が適切に機能しているかどうかを評価することができます。
内部統制が適切に働いている場合、監査リスクが低下し、監査の信頼性が向上します。

確認状の種類とは?

確認状には主に以下の3つの種類があります。

残高確認状

残高確認状は、企業の取引先に対し、一定期間の取引残高を確認するための確認状です。
例えば、銀行に対する預金の確認、取引先に対する売掛金や買掛金の残高を確認するために用いられます。

法定事項確認状

法定事項確認状は、企業の関係者(弁護士、税理士など)に対し、特定の法定事項に関する情報を確認するための確認状です。例えば、弁護士に対する訴訟や紛争の有無や状況を確認するための弁護士確認状があります。

取引確認状

取引確認状は、企業の取引先や関係者に対し、特定の取引や事象について直接確認するための確認状です。
例えば、商品の受領やサービスの提供状況を確認するために用いられます。

日本の監査基準と確認状について

日本の監査基準は、日本公認会計士協会が策定しており、企業の財務諸表監査に適用されます。
監査基準においては、確認状の活用が推奨されています。

日本の監査基準第500号「監査証拠」において、「監査人は、適切な監査証拠を収集するために、外部確認を求めることが有益であると判断する場合、確認状を活用することが望ましい」と規定されています。
また、監査基準第505号「外部確認」では、監査人が外部確認を行う際の手続きや注意点が示されており、確認状を用いた外部確認が重要な役割を果たしていることが分かります。

確認状の活用方法について

確認状を効果的に活用するためには、以下の点に注意することが重要です。

適切な対象者への送付

確認状は、適切な対象者に送付されることが重要です。対象者が適切でない場合、正確な情報が得られない可能性があります。

内容の正確性

確認状の内容は、正確で明確であることが求められます。
誤った情報が記載されていると、回答者が混乱し、正確な情報が得られなくなる可能性があります。

確認状の追跡と管理

確認状の回答が遅れる場合や、矛盾がある場合は、問題が存在する可能性があります。
そのため、監査人は確認状の追跡と管理を行い、必要に応じて追加の調査を実施することが重要です。

確認状の結果の評価

確認状の結果を適切に評価することで、監査の信頼性を向上させることができます。
監査人は、確認状の結果を他の監査証拠と照らし合わせ、全体的な評価を行うことが求められます。

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確認状を巡る課題と対策について

確認状は監査対応の基礎であり、効果的な活用が求められますが、現実的にはいくつかの課題も存在します。

本章では、確認状を巡る課題とその対策について解説します。

回答の遅れや欠落

確認状に対する回答が遅れることや、回答が得られないことがあります。
これにより、監査人が必要な情報を得られず、監査が遅れる可能性があります。

対策

企業は取引先や関係者に対し、確認状の重要性を説明し、回答の期限を明確に伝えることが重要です。

また、監査人は回答が遅れる場合や欠落がある場合には、他の手段で情報を得ることを検討するとともに、企業と協力して回答を促すことが求められます。

回答内容の曖昧さ

確認状に対する回答が曖昧であることがあります。

これにより、監査人が適切な判断を下すことが困難になることがあります。

対策

企業は確認状の内容を明確に記載し、回答者が疑問を持たないようにすることが重要です。

また、監査人は曖昧な回答に対しては、追加の質問や情報提供を求めることで、より正確な情報を得ることが求められます。

情報漏洩のリスク

確認状を通じて取引先や関係者から得た情報が、第三者に漏洩するリスクが存在します。

これにより、企業の信頼が損なわれることがあります。

対策

企業と監査人は、確認状の取り扱いに関するルールや手順を明確にし、情報管理に細心の注意を払うことが求められます。

また、電子メールなどのデジタル手段でのやり取りの際は、暗号化やアクセス制限などのセキュリティ対策を講じることが重要です。

 

これらの課題と対策を理解し、適切に実践することで、確認状の効果的な活用が可能となり、監査対応の質が向上します。

企業は、これらの課題に対処するための綿密な計画と実行力が求められます。

また、監査人は、課題への対応力や柔軟性を持ち合わせ、企業と連携して確認状の活用を最大限に引き出すことが重要です。

まとめ:監査対応に欠かせない確認状の基礎知識

確認状は、監査対応の基礎として重要な役割を果たしています。
適切な対象者へ送付され、正確な内容が記載された確認状を活用することで、監査人は企業の財務諸表の正確性を評価し、不正や誤りを発見することができます。
また、日本の監査基準では、確認状の活用が推奨されており、企業の監査対応においては、確認状の適切な活用が求められます。

本記事では、確認状の基本的な概念や役割、効果、種類、日本の監査基準との関連性、そして活用方法について解説しました。
監査対応を行う企業の方や、監査に関心のある方が、確認状の重要性を理解し、効果的な監査対応ができるようになることを願っています。

今後も監査の重要性は増していくことが予想されるため、企業は監査対応の基礎をしっかりと押さえ、適切な対応ができるように準備しておくことが大切です。
確認状をはじめとする監査証拠の収集や内部統制の評価など、監査に関連する知識やスキルを身に付けることで、企業の信頼性向上につながります。

最後に、監査に関連するブログや書籍などを参考に、さらに深い知識を身に付けることをお勧めします。
それにより、監査対応が円滑に進み、企業の経営者や投資家に適切な情報を提供することができるでしょう。



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