簿記を勉強している皆さんには減価償却はおなじみですね。まだ勉強していない方には、そもそも減価償却とは何か知らないと思います。ですが、会計分野にとって減価償却は非常に大事なものです。そして、数多くの種類の減価償却が存在します。簿記を勉強している方も、そうでない方も、一緒に減価償却を見ていきましょう。
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簿記を勉強している皆さんには減価償却はおなじみですね。まだ勉強していない方には、そもそも減価償却とは何か知らないと思います。ですが、会計分野にとって減価償却は非常に大事なものです。そして、数多くの種類の減価償却が存在します。簿記を勉強している方も、そうでない方も、一緒に減価償却を見ていきましょう。
ではまず、減価償却とは何か。これは、固定資産に関係するものです。固定資産、ここでは土地は含めません。建物や機械、車両、無形固定資産という実体のない資産(ソフトウェアなど)も含まれます。例えば、皆さんが車を買ったとします。仮に買った金額を200万円だとして、その車の10年後の価値はどれくらいだと思いますか?
価値が低下している、ということだけわかれば大丈夫です。10年後もそのまま200万円の価値にはなりません。そういった価値の低下を、金額で反映していく処理を減価償却といいます。計算の方法は様々ありますが、そのまま金額を減らしていくことによって価値の低下が反映されます。
簿記を勉強している方はわかると思いますが、簿記では貸借対照表という表を書いていきます。その表には表を書いた時点での資産の価値をすべて書かなくてはいけません。つまり、持っている資産の価値を減価償却で低下させて書かなくてはいけない、ということです。
また、計上した減価償却は減価償却費、という費用として計上されていきます。費用というのは会社の営業をするにあたってかかるものです。ではなぜ、費用として計上するのでしょうか。
それはというと、そのまま営業に使うからです。損益計算書、という売上などの営業に関わる表があります。固定資産は営業に使うものですから、原価、費用として計上する必要があります。また、その計上のやり方にもルールがあります。
固定資産には共通して、何年くらい使えるか、という目安があります。それを耐用年数といいます。例えば営業用の建物を買ったとして、耐用年数が20年だとします。営業に関するものなので、もちろんかかった金額は原価、費用として計上すべきですよね。では建物を買った年にすべて負担させるかというとなんだか変ではないでしょうか。20年間の営業に使うのですから、20年間で金額を配分して負担させるべきですよね。こういった理由で減価償却費、というものが計上されています。
では次に、減価償却の種類についてみていきましょう。
減価償却の計算の方法には様々なものがあります。大きく分けて、
・定額法
・定率法
・級数法(年数総和法)
・生産高比例法
これら4種類です。それぞれ見ていきましょう。
これは、定額法という名前だけあって、毎年一定の減価償却を計上していきます。
定額法については、税法の改正の影響により、旧定額法と定額法の2種類があります。問題では詳しく書かれていますし、簿記検定の受験する級によって出るもの・出ないものがあります。
ではまず旧定額法です。
2021年1月1日(期首)に、建物10,000,000円を購入した。耐用年数は20年、残存価額は10%である。2021年12月31日(期末)の減価償却の計算をしなさい。
答え 450,000円
(10,000,000-10,000,000×10%)÷20=450,000
このようになりました。残存価額、というのは耐用年数が満了した資産の残った価値です。たとえ使い古してもいくらかの価値がある、というような考え方です。計算の際に、取得価額からあらかじめ控除しておくことで計算ができます。場合によっては0円として計算する場合もあります。ですが、この考え方が変わりました。次に、旧ではない定額法です。
2021年1月1日(期首)に、建物10,000,000円を購入した。耐用年数は20年、定額法償却率は0.05である。①2021年12月31日(期末)と、②2040年12月31日(期末)の減価償却の計算をしなさい。
①2021年12月31日 500,000円
②2040年12月31日 499,999円
10,000,000×0.05=500,000円
10,000,000×0.05-1=499,999円
先ほどの残存価額が出てきませんでしたね。そして、定額法償却率、というものが出てきました。そして、2040年の計算では1をマイナスしていましたね。平成19年4月1日以降に取得した固定資産から、残存価額が廃止され、価額は1円を残して1円ぎりぎりまで減価償却をすることになりました。ですので、耐用年数の最終年度に1円をマイナスしています。また、定額法償却率、この問題の場合は0.05という数字ですが、これらは問題文において明示されている場合とされていない場合があります。これを計算するのは簡単です。
1÷20=0.05
つまり、1÷耐用年数、ということです。取得価額の金額をそのまま割り算するわけではないので注意です。
次に、定率法についてです。定額法は毎年決まった金額でした。では定率法はどうかというと、定率法では決まった率、%を使って計算していくというものです。この定率法にも実は細かい種類があります。
・旧定率法
・定率法
・250%定率法
・200%定率
これらの種類ですが、税法改正によってかなりの複雑さになりました。見分け方としてはこれも定額法と同じく取得年月日です。問題ではここまで判断させるものは出てこないですが、覚えておいた方がいいです。ここでは基本的な旧定率法の計算を紹介します。
2021年1月1日(期首)に車両運搬具を5,000,000円で取得した。耐用年数は10年、償却率は25%、残存価額は0円である。①2021年12月31日(期末)、②2022年12月31日(期末)の減価償却の計算をしなさい。
①1,250,000円
②937,500円
5,000,000×0.25=1,250,000円
(5,000,000-1,250,000)×0.25=937,500
このような計算になります。二年目以降は、それまでに計上した減価償却費を控除した価額に償却率をかけて計算します。
旧ではない定率法は、最後に旧ではない定額法と同じく1を残して計算します。250%定率法と200%定率法は、1÷耐用年数に250%か200%をかけて償却率を出してから計算します。定率法は特に問題文の条件がまちまちです。行きづまったら、基本的な旧定率法から見直してみるといいかもしれません。
この級数法に関しては、計算してみると定率法と似たような数字になります。計算方法はちょっと特殊です。先に例題を見てみましょう。
2021年1月1日(期首)に、機械装置を5,500,000円で取得した。耐用年数は10年、残存価額は0円とする。2021年12月31日(期末)の減価償却の計算をしなさい。
1,000,000円
5,500,000÷(10+9+8+7+6+5+4+3+2+1)×10=1,000,000
こういった計算をします。図もあわせてみてみましょう。
初年度が10、次が9、8、7…と続いていきます。少し特殊ですが、計算は簡単なので焦らず解けば得点源になります。
最後に、生産高比例法です。これは建物にはあまり向かない償却方法です。向くのは例えば車、機械などです。イメージがわきやすいのは車です。実際の問題を紹介します。
2021年1月1日(期首)に営業用の車両2,000,000円を購入した。見積総走行距離は10,000㎞、2021年12月31日(期末)までの走行距離は1,500㎞である。また、残存価額は0円である。2021年12月31日の減価償却の計算を生産高比例法で行いなさい。
300,000円
1,500÷10,000×2,000,000=300,000
走行距離の割合から計算していきます。あまり難しい話ではないので、あせらず解きましょう。
いかがでしたでしょうか。問題によっては、減価償却はとても難しいものにも簡単なものにもなります。ですが、必ず得点源にもなる重要な項目ですので、抜けの無いように学習しましょう。是非、頑張って下さい。