普段の生活で株主資本等変動計算書について考えたことがある人はほとんどいないかもしれません。簿記を勉強している人にとっては、書くのが面倒で大変…といった印象を持つ方もいるでしょう。ですが、株主資本等変動計算書はとても簡単で試験に出たらラッキー、得点源になります。一緒に見ていきましょう。
株主資本等変動計算書とは?例題を用いて書き方の例やひな型をわかりやすく解説!
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- 株主資本等変動計算書とは
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【目次】
株主資本等変動計算書とは?
では、まずは株主資本等変動計算書とは何でしょうか。貸借対照表の純資産の部に書かれているものの期中の変動額が表されています。純資産だけしか書かれていませんので、リラックスして解きましょう。
この株主資本等変動計算書は、決算の際に必要な資料です。貸借対照表や損益計算書と同じです。また、貸借対照表をBS、損益計算書はPLと略することができますが、株主資本等変動計算書を略すのであるならばSSと呼んでいます。
さらに、この株主資本等変動計算書は、全ての会社が作成しなければならない義務があります。それほど会社にとって重要な表なのです。
次に、実際の株主資本等変動計算書を見てみましょう。
いろいろと書かれていますね。では、一つ一つ見ていきましょう。
まずは一番上の行です。資本金、資本剰余金…と書かれています。これは勘定科目一覧ですね。それに対応しているのが一番左の列です。これは純資産の変動事由が表されています。これらの行にそのまま対応する列の科目に金額を記していくだけです。では次に、実際に株主資本変動計算書を作成する際に使う仕訳で、株主資本等変動計算書に慣れていきましょう。
株主資本等変動計算書の計算練習
では、株主資本等変動計算書の計算を仕訳で練習してみましょう。株主資本等変動計算書を作成するために使用する仕訳ですので、じっくり見ていきましょう。
例題①
AA株式会社は、令和3年6月30日に開催された株主総会で剰余金の配当を決定した。拠出財源は繰越利益剰余金から50,000千円、その他資本剰余金から30,000千円である。また、それに対応して準備金の積み立ても行った。以下の仕訳を行いなさい。
配当決定時点での株主資本の残高は以下の通りである。(単位:千円)
資本金 500,000 資本準備金 80,000 その他資本剰余金 50,000
利益準備金 40,000 繰越利益剰余金 100,000
解答・解説①
(単位:千円)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
その他資本剰余金 | 31,875 | 未払配当金 | 30,000 |
資本準備金 | 1,875 | ||
繰越利益剰余金 | 53,125 | 未払配当金 | 50,000 |
利益準備金 | 3,125 |
では、解説に移ります。
まず、配当をする際には、問題文の指示通りに準備金を積み立てています。積み立てる金額は、以下の計算式で求めることができます。
配当金×10%=積み立てる準備金
ですが、この問題は少し違います。資本金がポイントです。実は、準備金は資本金の4分の1までしか積み立てられません。仮に超えた場合は、株主総会の決議で準備金を剰余金に振り替える…ということもできますが、そこまでは簿記試験ではなかなか出題されません。では、この問題の計算は以下のようになります。
500,000÷4=125,000
125,000千円まで準備金が積み立てられます。現在すでにある準備金の残高から今回の配当でいくら積み立てられるか見てみましょう。
125,000-(80,000+40,000)=5,000
今回の配当金に10%を掛けます。
(30,000+50,000)×10%=8,000
8,000>5,000
今回は5,000千円までしか積み立てられません。割合に応じて積み立てていきます。
資本準備金の積立額
5,000×30,000÷(30,000+50,000)=1,875
利益準備金の積立額
5,000×50,000÷(30,000+50,000)=3,125
これで完了です。
では次に、自己株式の仕訳を練習してみましょう。
例題②
BC株式会社は、所有していた自己株式4,600千円を5,000千円で処分し、代金は現金で受け取った。
解答・解説
(単位:千円)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 5,000 | 自己株式 | 4,600 |
その他資本剰余金 | 400 |
では、解説に移ります。
単純な問題ですが、処分差益がその他資本剰余金になるところがポイントです。なぜ、収益項目にならないのかと気になった方は鋭いです。これは、株主と会社との直接的な取引であり、会社の営業としての取引ではないからです。さらに、自己株式は資産としてとらえていません。株主資本の払い戻し、というような考え方を取っているため、損益項目は計上しません。
では最後に、株主資本等変動計算書を作成してみましょう。
株主資本等変動計算書を解いてみよう
では、問題を解いてみましょう。自信のない人は、まずは解説を見ながら解いてみましょう。
例題③
以下の条件を踏まえ、令和3年3月31日時点の株主資本等変動計算書を作成しなさい。また、マイナスの項目については数字の前に△を付けること。変動がなかった項目の変動額欄には何も記入しなくてよい。
AAA株式会社の令和2年4月1日時点での純資産の状況は以下のようになっている。(単位:千円)
資本金 100,000 資本準備金 10,000 その他資本剰余金 3,000
利益準備金 12,000 別途積立金 2,000 繰越利益剰余金 20,000
自己株式 △5,000 新株予約権 3,000
期中の取引は以下の通りである。
50,000千円の増資を行い、払込金は当座預金口座に預け入れた。金額の2分の1は資本金とし、残りは資本準備金に組み入れた。新株予約権は行使されていない。
株主総会の決議による5,000千円の配当を行った。拠出財源は繰越利益剰余金である。それに伴う準備金の積み立てを行った。
当期純利益は9,000千円である。
自己株式1,500千円を取得した。
解答欄③
解答・解説③
では、解説に移ります。
まずは、表を作成するにあたっての期中取引の仕訳をしましょう。
【増資の仕訳】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
当座預金 | 50,000 | 資本金 | 25,000 |
資本準備金 | 25,000 |
【配当の仕訳】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
繰越利益剰余金 | 5,500 | 未払配当金 | 5,000 |
利益準備金 | 500 |
利益準備金の算定
5,000×10%
当期純利益の仕訳および自己株式の取得に関する仕訳は行わなくて大丈夫です。
数字が出そろいましたので、そのまま表に転記していきます。
失点が出る箇所といえば、合計欄が特にミスしやすいです。もったいないケアレスミスをしないようにしましょう。