商品売買は実務上とても重要な取引です。日商2級の問題でも出題頻度は高いのですが、意外とミスの多い分野です。それは値引きや割戻し、割引と似たような言葉に惑わされてしまうためでしょう。よく出る取引だからこそ確実に正しい仕訳が必須となってきます。また、近年頻出している商品売買の処理方法のひとつである売上原価対立法も解説します。
経理担当者なら取得したい!日商簿記2級でよくでる仕訳|商品売買
- テーマ
- 商品売買
- 監修
- 簿記マスター
【目次】
値引きの処理
値引きとは、商品の汚れや劣化、キズ、不良品などの理由により商品価格を下げることをいいます。
値引きの仕訳
問題
前、A社はB社に対して掛けにより50,000円の商品を販売していたが、B社より商品に汚れが見つかったとの連絡を受け1,000円の値引きをした。なお値引きした金額は売掛金より差し引くこととした。
解答
A社(販売側)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 1,000 | 売掛金 | 1,000 |
商品販売時の仕訳は(借方)売掛金50,000(貸方)売上50,000です。値引きをしたときには売上(収益)を値引きの金額分だけ減額します。
B社(購入側)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 1,000 | 仕入 | 1,000 |
商品購入時の仕訳は(借方)仕入50,000(貸方)買掛金50,000です。値引きをしてもらったときには仕入(費用)を値引きの金額分だけ減額します。
割戻しの処理
割戻しとは商品の売買において、一定の数量ごとにまたは一定の金額ごとに販売価格を減額することでリベートともよばれます。販売する立場からは「割戻し」をする、購入する立場からは「割戻り」を受けると表現されます。
割戻し(割戻り)の仕訳
問題
A社は、大口の顧客に対して商品30万円を購入ごとに1%の割戻しをする契約をしている。B社が先日の商品販売でこの条件に達したため、3,000円の割戻しを行い、掛代金から差し引くこととした。
解答
A社(販売側)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 3,000 | 売掛金 | 3,000 |
割戻しは、売上(収益)を減額処理します。割戻しというサービスをすることで全体の売上代金が減ると考えられるためです。
B社(購入側)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 3,000 | 仕入 | 3,000 |
割戻りは、仕入(費用)を減額処理します。割戻りというサービスを受けることで全体の仕入代金が減ると考えられるためです。
本問は指示により掛代金から差し引く処理を行いましたが、この方法以外に現金や預金で割戻し金額を支払い(受取り)する方法もあります。
割り引きの処理
割り引きとは、掛代金を早期に支払うことによるサービスをいいます。上記の値引きや割戻しでは売上や仕入の商品代金を減らす処理を行いましたが、割引は掛代金のサービスなので商品代金に影響を及ぼさないため処理方法が異なります。
割引の仕訳
問題
5月10日、A社は5月1日に販売した商品の掛代金80,000円をB社より回収した。なお、商品販売時から2週間以内に掛代金を入金した場合は、掛代金の1.5%を割り引く契約をしており、割引分を差し引いた額が当座預金へ振り込まれた。(B社は現金を振り込んだ。)
解答
A社(販売側)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
③当座預金 | 78,800 | ①売掛金 | 80,000 |
②売上割引 | 1,200 |
勘定科目前の番号は確定していく順番です。①売掛金80,000円を回収するので貸方に記入します。②割引する金額80,000円×1.5%=1,200円を「売上割引」(費用)として計上します。③掛代金から割引額を差し引き、振り込まれた金額を当座預金とします。
B社(購入側)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 80,000 | 現金 | 78,800 |
仕入割引 | 1,200 |
勘定科目前の番号は確定していく順番です。①買掛金80,000円を支払うので借方に記入します。②割引してもらう金額80,000円×1.5%=1,200円を「仕入割引」(収益)として計上します。③掛代金から割引額を差し引き、実際に支払う金額78,800円を現金にします。
割引の問題で多いミスが割引に関する勘定科目です。「売上割引」は売掛代金を安くするというサービスを行ったので「費用」の発生として「借方」に記入します。それに対し「仕入割引」は掛代金をサービスしてもらったという「収益」の発生なので「貸方」に記入します。また、売掛金や買掛金の金額を78,800円としてしまうミスも多くみられます。まずは回収する(支払う)掛代金80,000円を最初に記入することでこのミスを防げます。
売上原価対立法とは
商品売買の仕訳方法として通常は、売上・仕入・繰越商品の3つの勘定科目を使って処理をする「三分法」だと思います。しかし、この方法は、決算処理が済むまでは売上原価や売上総利益を把握できないというデメリットがあります。年に一度しか決算がない企業は、原価や利益を一年分まとめて知ることになり適切な経営判断に影響を及ぼす可能性があります。
それを解消するのが「売上原価対立法」です。「商品」「売上」「売上原価」の3つの勘定科目を使用して仕訳をする方法で、売上を計上すると同時に売上原価も計上します。一回の販売ごとに原価を確認するという手間はかかりますが、売上とその原価をタイムリーに知ることができ、1週間ごと1カ月ごとといった短いスパンで売り上げに関する経営状況を把握することが可能になります。実務でも売上原価対立法による処理が増えつつあることから、検定試験でも取り上げられる機会が増えたのだと推測されます。
売上原価対立法(商品購入時)
問題
当社は、Z社より商品100,000円を購入し代金は掛けとした。なお、当社は商品を購入したときに商品勘定で処理し、販売のつど売上原価へ振り替える方法により記帳している。
解答
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
商品 | 100,000 | 買掛金 | 100,000 |
商品を購入したときには、資産である「商品」が増えたという処理をします。
売上原価対立法(商品販売時)
問題
当社は、上記4-1で購入した商品100,000円をX社へ160,000円で掛けにより販売した。なお、当社は商品を購入したときに商品勘定で処理し、販売のつど売上原価へ振り替える方法により記帳している。
解答
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売掛金 | 160,000 | 売上 | 160,000 |
売上原価 | 100,000 | 商品 | 100,000 |
まずは、商品を販売した仕訳をします。続いてこの商品の原価に関する仕訳をします。販売したことで資産である「商品」は減少したため貸方へ記入します。それと同時にこの商品の価格は販売された商品の原価なので「売上原価」として借方へ費用計上します。