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持分法の会計処理を徹底解説:ビジネス成功の鍵を掴む方法

テーマ
持分法の会計処理
執筆
公認会計士


持分法とは、企業が他の企業に出資し、一定の影響力を持つ場合に適用される会計処理方法です。
この記事では、持分法の会計処理を日本基準に沿って解説し、計算例を交えながら様々なパターンを考察していきます。

 

持分法とは

持分法は、投資対象企業に対して一定の影響力を持つ投資企業が、投資対象企業の業績に応じて投資額を調整する会計処理方法です。

主に、投資企業が投資対象企業の発行済み株式数の20%以上50%未満を保有している場合に適用されます。

この範囲内であれば、投資企業は投資対象企業の経営に一定の影響力を持つとみなされます。

 



▼「簿記で出題される社債の抽選償還とは?計算方法や仕訳方法をわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

持分法の適用基準

日本基準において、持分法が適用されるのは、以下の条件を満たす場合です。

・投資企業が投資対象企業の発行済み株式数の20%以上50%未満を保有していること。

・投資企業が投資対象企業の経営に対して一定の影響力を持っていること。

ただし、持分法の適用は企業の判断により、特段の理由がある場合には、20%未満の保有比率でも適用することができます。

持分法の会計処理

持分法では、投資企業が投資対象企業の業績に応じて投資額を調整します。

具体的な会計処理は以下の通りです。

  • 投資対象企業の利益又は損失に対する投資企業の持分に応じて、投資額を増減させる
  • 投資対象企業が配当を支払った場合、投資額を減額させる

 

計算例

投資企業Aが投資対象企業Bに対して、1,000万円を投資し、発行済み株式数の30%を保有しているとします。

Bの当期純利益が300万円、配当が100万円の場合、以下のような会計処理が行われます。

  • 投資額の増加: 投資企業Aは、投資対象企業Bの当期純利益に対して30%の持分を持っているため、300万円×30% = 90万円分の投資額が増加します。
  • 投資額の減少: 投資対象企業Bが配当100万円を支払った場合、投資企業Aの持分に応じて30%×100万円 = 30万円分の投資額が減少します。

以上の処理を行った後、投資企業Aの投資額は、1,000万円(元の投資額)+90万円(利益による増加)-30万円(配当による減少)= 1,060万円となります。

持分法の評価損益の処理

持分法においては、投資対象企業の評価損益も投資企業の損益計算書に反映されます。

具体的には、投資対象企業の評価損益に対する投資企業の持分に応じて、投資損益を計上します。

計算例

投資企業Aが投資対象企業Bに対して、1,000万円を投資し、発行済み株式数の30%を保有しているとします。

Bの評価損益が200万円の場合、投資企業Aは、200万円×30% = 60万円分の評価損益を計上します。

 


持分法と他の会計方法との違い

持分法は、投資企業が投資対象企業に対して一定の影響力を持つ場合に適用される会計方法ですが、その他の方法には、費用法や子会社の連結会計などがあります。

費用法は、投資対象企業に対する影響力が限定的である場合に適用され、投資額の変動は配当によるもののみとなります。

連結会計は、投資対象企業が子会社である場合に適用され、親子関係の企業の財務諸表を統合して表示する方法です。

 

▼「消費税の仕訳方法は?会計処理で気を付けるポイントをわかりやすく解説!」はこちらの記事をご確認ください

持分法の適用範囲の拡大と縮小

日本基準では、一定の条件下で持分法の適用範囲が拡大または縮小されることがあります。

例えば、投資企業が投資対象企業の経営に重要な影響力を持つと判断される場合、保有株式比率が20%未満でも持分法が適用されることがあります。

逆に、保有比率が20%以上でも、投資企業が投資対象企業の経営に影響力を持っていないと判断される場合、持分法の適用が見送られることがあります。

持分法適用時の損益計上

持分法を適用する場合、投資対象企業の業績によって投資企業の損益計上が変動します。

投資対象企業が利益を上げる場合、投資企業はその利益に相当する部分を自社の損益に計上します。

逆に、投資対象企業が損失を出す場合は、投資企業も損失に相当する部分を自社の損益に計上することになります。

このように、持分法では投資対象企業の業績が直接的に投資企業の損益に影響を与えることが特徴です。

 

 


持分法適用企業の開示事項

持分法を適用する企業は、投資対象企業に関する一定の開示事項が求められます。

これには、投資対象企業の名称、投資企業の持分比率、投資額の開始時点と終了時点の額、投資対象企業の業績に対する影響額などが含まれます。

これらの情報は、投資企業の財務諸表に付随する注記等で開示されます。

持分法の税務上の取り扱い

持分法の会計処理においては、税務上の取り扱いも考慮する必要があります。

日本基準では、投資対象企業の利益や損失を投資企業の損益に計上する際、税効果を考慮した額を計上することが求められます。

これにより、税務上の調整が必要となる場合があります。

また、投資企業が投資対象企業から配当を受け取る場合、その配当は投資企業の収益として計上されますが、税務上は課税対象となります。

このため、配当に関連する税金の計上が必要となることがあります。持分法を適用する企業は、税務上の取り扱いにも注意を払い、適切な会計処理を行うことが求められます。

 

▼「消費税の課税対象の判断時の落とし穴」はこちらの記事をご確認ください

持分法の国際会計基準(IFRS)との違い

国際会計基準(IFRS)における持分法は、日本基準と基本的な考え方は同じですが、適用基準や開示事項に若干の違いがあります。

IFRSでは、投資企業が投資対象企業の経営に「重大な影響力」を持つ場合に持分法が適用されますが、具体的な保有比率の基準は明示されていません。

また、IFRSにおける開示事項は、日本基準よりも詳細であり、投資対象企業の財務情報やリスクに関する情報が求められることがあります。

 


まとめ

この記事では、持分法の会計処理について日本基準に沿って解説し、計算例を交えて様々なパターンを考察しました。

また、適用範囲の拡大と縮小、開示事項、国際会計基準(IFRS)との違いについても触れました。

持分法は、投資企業が投資対象企業に対して一定の影響力を持つ場合に適用される会計方法であり、投資対象企業の業績に応じて投資額を調整します。

投資企業や投資対象企業が国際的な取引を行う際には、持分法に関する国際会計基準(IFRS)との違いを理解することが重要です。

IFRSと日本基準の違いを把握し、適切な会計処理を行うことで、より正確な財務情報の開示が可能となります。

最後に、持分法を適用する企業は、投資対象企業に関する開示事項を遵守することが求められます。

これにより、投資家や利害関係者に対して、投資企業と投資対象企業の関係性や投資の影響を正確に伝えることができます。適切な開示を行うことで、企業の透明性が向上し、信頼性のある財務情報が提供されることに繋がります。

 

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