経理/簿記試験

営業から経理になってしまったとき

テーマ
経理になってしまったとき
監修
管理本部長補佐

部署異動。サラリーマンであれば誰しもが経験するイベントかと思われます。願っていた部署であればそうでない部署であったり、スキルを活用できる部署であったり全く関係ない部署であったり。私もそんな中、営業から経理への部署異動を経験しております。今回はそんな営業から経理に携わることになった方々に、少しだけ役に立つかもしれない内容を、実体験を踏まえて記載させて頂きます。

 


はじめに

辞令〇〇月〇〇日付けで経理部への異動を命ずる。

営業だった私は頭の中が真っ白になりました。確かに営業成績は良くなかったけれど、まさかの経理部へ異動とは・・・。

以下に営業と経理それぞれの特徴や、いかにしてこのイベントを乗り越えたかを記載させて頂きます。

組織風土の違い

まずは組織風土の違いについて記載させて頂きます。もちろんこれは私の体験談ですので、会社によっては当てはまらないケースもあると思います。あくまで参考程度と捉えて頂ければと思います。

営業の組織風土

営業の時は数字を追いかけることはもちろん大事でしたが、そこにつなげる為に社内・社外におけるお客様や同僚との関係性の強化に尽力していました。

仕事後は積極的に飲み会に参加したり、親睦を兼ねたフットサルに参加したり、いろいろなイベントに連日顔を出していたような気がします。そんな形で強い関係性を維持できていた為、特に社内に関してはある程度のミスも愛想笑いで乗り越えることができていました。また、仕事を覚える目的で先輩社員との営業同行も多かったので、いわゆる家族的な組織風土はあったような気もします。

経理の組織風土

経理の組織風土は営業のそれとは全く違いました。個々がそれぞれ、財務会計や管理会計など専門性を発揮した業務に取り組んでいるので、高いスキルを持った方が多いのは素人目にも分かったのと同時に、あまり同僚に関与しない個人主義的な部分も多いような印象も受けました。

経理に来たとき、私は貸方借方も知らない、経理知識ゼロの状態でした。その中で経理の海の中に飛び込む、これは本当に恐怖です。最初に入力した仕訳が確か投資有価証券の評価替えの仕訳だったと思います。いきなり税効果会計等も出てきたのでパニックになりかけていたのを思い出しました。当然ですが営業時代のように先輩社員と同行して、のような形の引継ぎでもなかったので、仕事の習得の仕方も工夫しなければいけない。そのように感じました。



仕事外の時間の使い方

簿記との出会い

中々仕事の定着が進まない中、ミスをして怒られることも増えてきて、日々転職が頭をよぎっていた時期がありました。そんな時、とある上司から簿記を勉強した方がよいとアドバイスを頂きました。営業として入社して飲み会ばかり参加していた私でしたが、この環境で生き残る為、まずは簿記3級を取ろう。そう決めたのです。

簿記3級という存在

簿記3級を受けるにあたって、インターネットで情報を集めることにしました。どうやら1~2カ月あれば合格できるとのこと。やってやろうと意気込んで受けたのですが、内容が難しくて全然頭に入ってきません。当然結果は惨敗。何度も何度も演習を重ねて、合格した時には既に1年が経過していました。

簿記2級という存在

簿記3級を取って喜んでいたのもつかの間、とある事実に気づいてしまったのです。経理部のほとんどの方が簿記2級以上を持っていたのです。簿記3級ではまだ市民権を得ることができない、そう思いました。簿記の2級では工業簿記という科目が加わり、更に難易度が増してきます。ただし、今の状況を打破するには2級を取るしかありません。私は書店で2級のテキストを購入しました。結局合格までにはそこから1年かかりました。

簿記1級という存在

簿記2級を取って個人的には大満足でしたが、やはり仕事上では他の同僚に経験で劣っていう点は否めませんでした。同僚と差別化を図るには1級を目指すしかない、そう覚悟しました。当時あまり周りには1級を持っている方はいなかったので、知識の習得はもちろん、自分の仕事に対する信頼性を高め、ハロー効果のようなものも期待できるのではと思っておりました。

簿記1級は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目です。テキストを買ったら8冊もついてきました。さすがに心が折れそうになりました。ふわふわした状態で受験勉強を始めましたが、そんな中途半端な気持ちで受けた最初の試験は100点満点中20点ちょいでした。ある意味ここから修羅の道が始まったのかもしれません。

諦めだけは悪かった私はそのあとも懲りずに簿記1級を受け続けました。範囲が広い分中々点数が安定せず、何度も何度も受けることとなりました

周りからは記念受験だとか、意地になっているだけだ、とかも言われました。間違ってないかもですね。結果9回も受けることとなってしまいました。

年2回なので約4年です。でも9回目で奇跡が起こったのです。何と97点で合格できたのでした。最高に嬉しかったですし、そのころには勉強しているのを知ってくれている同僚からの仕事上の接し方も大分変ってきていたと思います。

ものすごい敬意を感じるようにもなっていましたし、「元営業」ではなく「経理マン」として認められた気もしました。

経理の面白さ

営業にいたころ、先輩や上司は非常に強大な存在でした。彼らが持っている担当先も売上の大きいところが多く、特に特殊な特技やコミュニケ-ションスキルを持っていない自分にとっては完全に超えられない壁になっていました。ある意味年功序列の世界でした。

でも経理部に来てこの常識が覆りました。経験ももちろん大事なところではありますが、簿記の知識やエクセルのスキルを向上させることで、容易にこの年功序列を覆すことができるのです。これは面白いです。自分のペースで仕事ができるようになると、自由裁量権も増え、部の改革的なことも積極的に行うことができるようになります。私は自分の辛かった時代の経験も踏まえ、新入社員・異動社員に対する経理勉強会を定期的に開催するようにしました。受講生にはもちろん学んでいただきますが、教える方としてもいろいろと工夫がいる為、本質的な理解を得るのに大変役立ったように思っています。

営業と経理の両スキルで広げる可能性

経理の話を中心にしてきましたが、営業の時代が無駄であったとは少しも思っておりません。むしろ営業で学んだコミュニケーション力、経理で学んだ会計知識やエクセルスキル、これらを併せ持つことで、仕事を多面的に見ることができるようになりますし、経営者目線で仕事を考えることができることになると思います。同じような境遇の方がいれば、ここから先マネジメント層を目指すもよし、起業するのもよいでしょう。それだけこの経験は大きな2本柱になっているのです。大きな会社にいるとどうしても「営業担当」「経理担当」と組織が機能別に分かれていて、その人のアイデンティティまで決められてしまいそうなところもありますが、是非視野を広くして、「営業もできる人」「経理もできる人」になってみてはいかがでしょうか?

営業から経理に限らず、自身の望まない部門への異動となった方もいらっしゃるかと思います。どうか悲観的にならず、新しい部門の業務を極めに極めぬいてください。これは大きなチャンスなのです。その上で、是非その会社だけでなく、業界全体で通用するような人材を目指して頂ければと思います。当ブログ読者の新たなチャレンジ、心より応援しております。


Biz人 編集部 経理応援隊/簿記応援隊

経理実務や簿記の試験対策に役立つ知識を提供します。

人気Articles

  1. 経理担当者なら取得したい!日商簿記3級でよくでる仕訳|固定資産の売却

  2. 売掛金と未収金の違いとは?簿記での仕訳方法についてくわしく解説!

  3. 投資用マンションで失敗しないリスク最小化5選

  4. マーケティング戦略に役立つフレームワークの基礎|初心者が知っておきたいフレーム3選

  5. 仕掛ける攻めのマーケティング戦略

  6. 経理の仕事は何に役立っているの?仕訳処理とその活用方法を解説!

  7. 仮払金と立替金の違いとは?内容や仕訳方法についてくわしく解説

  8. 現金・預金管理とは?管理方法や合わないときの仕訳までくわしく解説

  9. マーケターの基本スキル!ロジカルシンキングのツール・手法5選を紹介!

  10. 経理担当者なら取得したい!日商簿記2級でよくでる仕訳|商品売買