不動産投資を考える人が、はじめに陥る落とし穴は、不動産会社からの勧誘です。不動産業界に長年携わったプロの感覚では100件に1件あるかないかということを忘れないようにしましょう。
次の落とし穴は銀行によるローン審査です。また、ローンがおりて不動産を所有したあとも、様々な維持費や経費が発生します。 今回は不動産投資のリスクを業界の「ナカの人」が解説します。不動産投資に興味がある人は必見です。
不動産投資のリスクと失敗|不動産屋から勧められた物件はNG?
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- 不動産投資とリスク
- 執筆
- 宅建保有者・不動産会社営業
高収益性の不動産投資は可能?
不動産業者から勧められた物件はNG!? 「貴方だけに紹介」の現実
まず、不動産投資は物件を購入することから始まりますが、不動産業者とある程度の関係が構築できているからといって、勧められる物件を購入するのは絶対にNGです。
特に、「貴方だけに紹介する」といった趣旨の言葉には注意しましょう。
本当に収益性が高い優良物件は、業者が先に買い取って利益をのせてしまう
多くの場合、そういった物件は確かに市場に売り出されたばかりだったり、元々レインズなどのサイトにすら載っていない物件で、希少性があるように思えます。
レインズは不動産の指定流通機構で国土交通大臣の指定を受けている機関です。
全国に4法人(中部圏、近畿、東日本、西日本)あり、多くの不動産物件を扱い、毎年このレインズを通して10万件以上の売買契約が成立しています。
レインズは、不動産会社間同士の情報交換を通して、物件需要に合う買主を探すことで、不動産流通の円滑化を図るために設立されました。
レインズは、登録業者は全て閲覧することができますが、一般の方は原則、閲覧することができません。
原則、大体の不動産はレインズに登録されていますが、売買不動産の登録義務を破っても罰則が無かったり、立件されることもほとんどないため、抑止力としてはそこまで機能しているとは言い難い現状があります。
また、人気の物件はレインズに登録される前に、不動産業者から売主に話が入った時点で、業者間入札、もしくは直接業者が買い取ってしまうケースが多いので、レインズ内で探しても、業者から見た優良物件があることは、現状あまりありません。
つまり、現状で言えば利益が取れるような優良物件は、既に業者が買付することが大半なので、それが一般人に回るということは、ほとんどありません。
市場に流通する穴場物件はほぼなし。100件に1件と思って探すべき
そういった現状を踏まえると、一般人の貴方だけに紹介する物件と言ったが、どういった物件であるかは容易に想像ができると思います。
実際に、利益がしっかり出るような物件は、100件に1件あるかないかぐらいで、多くの不動産投資家も物件の購入には半年や1年以上掛けて物件調査をしているので、いますぐ一般人が物件を探し始めて、優良物件を紹介してもらえる可能性はかなり低いと考えてください。
「銀行がローンの審査をし融資してくれるから安心」の幻想
「銀行のローンが通る=不動産のオーナーとして認められた」わけではないので、喜ばない
不動産業者の方が物件を勧めるにあたり、「銀行審査でローンが通れば、銀行がその物件の担保価値を厳正な審査で認めたのだから、安心して買えますよ」と言ったセールストークを展開することがあります。
これは大嘘です。
銀行のローン審査は、基本的に不動産の周辺相場なんて毎日レインズや業プロを見て取引きをしているプロでない限り、ほとんど分かりません。
不動産鑑定士の方が、厳密に収益還元法などで算出した不動産価格もそうですが、実際に取引の場で不動産鑑定士が出した不動産価格で売れるなんてことは、ほとんどありません。
全く同じ構造と広さ、形、築年数の不動産でも1番地ずれたら売却価格が1,2割ズレるなんてことは当たり前のようにあります。
長年、地場でやっている不動産業者にしか分からない不動産価格の変動要因は無数に存在するため、銀行がその不動産の価格が適当かどうかは審査の過程で知ることは、ほぼ不可能です。
銀行の審査は、何を見ているのかというと、大半はサラリーマンの年収や属性、社会的地位を担保としてみています。
銀行は、不動産の市街化調整区域にあるか、接道状況はどうか、旗竿地にあるのかなどの権利部分以外は、それほど気にしない上に、医師や弁護士などの社会的地位が高い、年収が高いサラリーマンなら、物件にある程度の問題があっても、貸したお金が返ってくる確率が高ければ融資の審査を通します。
不動産セミナーには要注意
不動産投資セミナーでよく医師や弁護士限定のセミナーや年収1000万円以上限定のセミナーが開かれていて、セミナー参加者限定に不動産会社が物件を紹介するといった勧誘を行っていますが、その物件のほとんどは、ネットで探せる物件とさほど変わりません。
むしろ、不動産に関して無知な人が多い分だけ、限定的コミュニティの範囲内で紹介された不動産は、物件価格に対して市場原理が働きづらく、かえって利回りが悪い粗悪な物件を買わされる可能性が高いといえます。
儲かる物件は、たいてい不動産業者が自分で買いますので、甘い言葉には騙されないようにしましょう。
不動産収益と費用
「不労所得が手に入る」の落とし穴|不動産購入後の経費と損失は想像以上に大きい
不労所得が毎月入ることで、寝てても暮らしていけるようになると話をしてくる業者がいますが、確かに不動産投資で成功されている中には、週休6日を実現した方も多くいます。
ですが、大半は不動産投資に失敗しているのが現状で、セミナーを開いたり、Youtubeで活躍されている不動産投資家などになれるのはそれほど多くありません。
例えば、物件価格5000万円の不動産を買い、年間ベースで満室経営の場合に500万円の家賃収入を得られたとしても、この収入で一生暮らせるかといえば、ほぼ不可能です。
不動産投資ローンを借りて、金利や税金、管理費、保険、修繕費用の積立などを支払った場合に残るのは、せいぜい家賃収入の2,30%ぐらいしか残りません。
つまり、500万円なら純利益は100万円から150万円ほどと考えていいと思います。
仮に、家賃が10%下がれば、この手取りから50万円引かれるので、50万円から100万円しか残らないこともあります。
また、空き室リスクもずっと満室はあり得ませんので、10%、最悪20%ほどは見ないといけません。
その場合には、手取りはほとんど残らず、場合によっては赤字になります。
中には、家賃収入でローンや諸費用が捻出できず、赤字経営の物件を売りに出すといった場合がありますが、だいたいは買い手がつかず、赤字だけが積み上がり、最終的には物件価格を大幅に下げたり、そのまま多額の借金を背負って不動産投資の世界から退場されるのが現実です。
上記のケースのように、当初の思い描いていた経営戦略や出口戦略と全く違う結末になってしまうことも多々ありますので、不労所得と言った甘い言葉にはくれぐれも注意してください。
不動産は実物資産なので、最悪は売却は可能だが。。。
確かに、不動産は実物資産で証券と違い、紙切れになることもなく、実物があるので最悪、どんな価格でも売れるという安心感があります。
しかし、不動産売買や不動産投資でその考えは命取りになります。
建物は長く持てば持つほど老朽化し、メンテナンスやリフォームが必要になる場面が必ず出てきます。
新築物件を35年ローンで買った場合、ローンが払い終わる頃には、築35年の物件になります。
それまでには水回りや屋根、外壁などの修繕やリフォーム工事が必要になるでしょう。
建物が老朽化した10年後や20年後に、家賃収入がそのまま下がらない、空室がほとんどなく大体埋まっているといったケースは、首都圏内の中央部や都心部以外では、かなりレアです。
大概は2、30年も経てば、空室が目立ち、家賃も下げざるを得ない状況になっていて、出口戦略も場合によっては、取りづらい物件となってます。
確かに価格を下げれば、不動産はよほどのことがない限り、売れますが問題は売れるか売れないかではなく、いくらで売れるかです。
トータルでマイナスなら、投資としては失敗になります。
何十年もローンを払って、多くの手間と時間まで掛けた不動産投資の結果がマイナスなら、やらない方が良かったことになります。
実物資産であろうが、証券であろうが、いくらで売れるかが大事であり、価格変動が少ない土地や不動産だから安全というのは、過去はそうだったかもしれませんが、将来は分かりませんので、よほど不動産に精通していて、精緻な分析ができているなどではないかぎり、その見通しには、あまり意味がありません。
また、安全面でいうなら、不動産も地価変動リスクは常に存在しますので、価格変動が可視化できるREITの方が安心だとも言えるのではないでしょうか。
少なくとも出口戦略をよく考えないで買う不動産が、実物資産だからといって安心だというのは、買ったことに安心して思考停止に陥っているので、業者の「実物資産だから安心」という口車には乗せられないようにしましょう。
まとめ
いかがでしょうか?
不動産投資をこれからしたいと考えている方は、恐らく、多くの記事や動画などを参考に成功することを頭に描いて、この世界に足を踏み入れようとしてるのではないでしょうか。
ですが、今一歩立ち止まって、本当に不動産投資をしたいのか、他のことでそれは実現できないのか考えてみることをおススメします。
いずれにせよ、物件を買ったらもう後戻りはできません。
もし、この記事をみて少しでも不安に思うのであれば、もう一度、再考することをしていただきたいと思います。
この記事が、不動産投資家を志す皆様の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。