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プロパー融資とは?メリットとデメリットをくわしく解説!

テーマ
プロパー融資とは?
監修
監査法人社員

プロパー融資とは金融機関が行う融資の1つで、銀行が保証会社を通さず直接融資をすることです。保証会社とは信用保証協会(以下、保証協会)等の保証会社を指します。融資にはプロパー融資と、保証協会付融資があります。プロパー融資が保証会社を通さないと言うことは全てのリスクを銀行が引き受けるということで基本は優良企業のみ対象となります。

プロパー融資と保証協会付融資

保証協会とは、万一企業が倒産したとき、その企業に代わって80%~90%程度の割合で借金を肩代わりしてくれる公的な団体です。中小企業にとって大変重要な団体であり、各都道府県に存在します。企業が融資を受ける時に、予め保証協会と保証委託契約を締結し、金利と別に保証料を支払います。保証協会は保証料を元に保険に入っていて、保証した会社が倒産した際にはその会社に代わって保険金で金融機関に代位弁済、つまり肩代わりします。

創業したばかりの企業や、業績が思わしくない企業は金融機関にとってリスクが高く、融資の審査が厳しくなり、リスクを抑えることが検討されます。リスクを抑える最も一般的な方法が担保です。担保にはいくつか種類があり、不動産担保・株式などの有価証券担保・広い意味で連帯保証人も含まれますが、最も利用しやすいのが保証協会です。金融機関にとって保証協会付融資は企業が倒産したとしても大部分を保証協会が肩代わりしてくれるのでリスクが抑えられることから、できれば保証協会付き融資を勧めたい面があります。企業にとっても、不動産や有価証券を持っていなくても保証料を支払うだけでお金を借りやすくなるメリットがあります。

プロパー融資・無担保融資・有担保融資

その他、融資には「無担保」と「有担保」と区別されます。担保の中で有名なのは不動産担保です。金融機関は企業(または役員などの個人)が持つ土地や建物に「抵当権」という登記をしてお金を貸し出します。万一お金が返済できないと、金融機関はこの抵当権を行使して担保不動産を差押さえ、売却したお金で融資を返済します。この抵当権は住宅ローンでも使われます。不動産や株式の値段は日々変化します。金融機関が抵当権を行使したとしても、通常は思った額で売れず、融資を全額回収できません。それに備えて例えば100の融資をするとき、担保の評価は時価の50%~70%程度にするなど初めから倒産した場合を想定して手を打っておくわけです。

企業にとって無担保で借入できればいいのですが、担保が必要となったとき用意することは大変です。仮に用意できたとしても不動産評価や差押えとなって実際に売却するときでも時間と手間が相当かかります。企業・金融機関ともに負担が大きいです。それに比べて保証協会付はそれほど事務が煩雑ではありません。よって金融機関の本音としては、まず保証協会、次にプロパーの有担保、その次にプロパーの無担保となります。

金利と保証料

ここまで「プロパー融資と保証協会付融資」「無担保融資と有担保融資」についてみてきましたが、一般的には次のように区別されます。プロパー融資・保証協会付融資それぞれに無担保・有担保があるのです。

企業にとって負担が少ないものから①→②→③→④となります。④は決算内容があまり良くない場合に使われ、③で金利・保証料があるのに更に保証協会に対し担保が必要で企業にとって大きな負担です。しかし金融機関にとって③であろうが④であろうが保証協会付であれは同じことでありそれほど違いを感じていません。

プロパー 保証協会
担保なし ①無担保融資(金利) ②保証協会付融資(金利+保証料)
担保あり(不動産・有価証券等) ③有担保融資(金利+金融機関へ担保) ④保証協会付融資(金利+保証料+保証会社へ担保)

 

プロパー融資と金融機関のビジネスモデル

現在はゼロ金利の時代ではありますが、金融機関は集めた預金をもとに貸出しをして利息で利益を稼ぐビジネスモデルが基本であることに変わりはありません。しかしこのビジネスモデルはすぐに利益になるものではありません。ある企業に期間10年の融資をして、そこから10年かけて元金に利息を添えて返済してもらい利益が確定するという息の長いものです。環境変化が大きいこの時代は10年の間に何がおこるかわかりません。万一、融資した企業が途中で倒産して返済出来なくなると、利息どころか返済がまだの元金分も損失となり、大赤字となります。これが保証協会付きなら元本の80%程度が戻ってくるものの、無担保のプロパー融資であれば、全て金融機関の損失になるのです。よって金融機関はプロパー、特に無担保はどうしても慎重にならざるを得ません。

更に引当金の問題です。銀行を含む企業は決算の際、貸出先のリスクを見積もって、そのリスクに見合った貸出金の一定割合を費用として計上する決まりとなっています。これを貸倒引当金といい、万一の際に備える準備金と言う意味合いがあります。貸倒引当金の額は貸出先のリスク大小によって異なります。同じ企業でもプロパー・担保評価・保証協会有無によって適用すべき金利が異なるのです。時々リスクの高い企業が世間体等よりプロパー融資でないと困るという希望があったりします。企業のリスクに見合っていない金利でプロパー融資を増やすと、その分引当金費用が増えて金融機関の利益が抑えられ、決算自体に大きな影響を与えるのです。その場合は金利の引き上げを検討しなければなりません。

どのような会社がプロパー融資を利用できるか

金融機関にとってプロパー融資とはリスクが高いので、必然的にプロパー融資を利用できるのは優良企業となります。何をもって優良かというと、決算書で返済に心配ないことが確認できることです。昔は自己資本比率が高いことなどが判断基準になっていましたが、最近は事業の不確実性が高まっており、財務の判断基準がより複雑化しています。一つの目安は、会社全体の借入返済額を上回るCFが毎期安定しており、事業の先行きに心配がなく、経営者自ら事業拡大意欲があり、しっかりした計画と説明ができることが重要視されるようになっています。実務ではプロパー融資100%よりも保証協会付融資を一定割合利用するなど使い分けがされています。プロパー融資は優良企業が利用できるので、自然と金利が安くなりますが、リスクが高く保証協会の保証料が無い分、若干割高の金利となっているケースもあります。企業と取引金融機関の話し合いにより、お互いにある程度許容しあう付き合いが上手な企業が長い目で見るとプロパー融資を利用できるのです。

プロパー融資のメリット

プロパー融資は保証料が不要でありコスト的に優位ですが、損得勘定以外にプロパー融資を受けているということは対外的に大きな信用にもなります。一般的に保証協会の保証料は融資時に一括して支払います(金利に上乗せの場合もあります)。決算書を見て、前払い費用として保証料の記載がなければプロパー融資と考えられます。このような企業は一定の信用力があると考えて大丈夫です。

プロパー融資のデメリット

プロパー融資の金利は二極化されます。一般的に優良企業が対象になるので金利が安い場合が多いのですが、それほど財務内容が良くなくてもプロパー融資となるときは金融機関にとってリスクが高いので、引当金に見合うように金利が高くなります。

またプロパー融資は全体的に貸出期間が短くなる傾向にあります。運転資金ですと3~5年までが多くいです。審査が厳しめになるので金融機関との交渉が増えてしまう手間が増えることもあります。

なお、途中で倒産した場合ですが、プロパーでも保証協会付きでも結果としては大差ありません。保証協会は肩代わりしてくれると言ってもそれは対金融機関の話しです。一旦は肩代わりしてくれますが引き続き保証協会に対し返済が続きます(求償権と言います)。決して融資が棒引きになると言うわけではありませんので注意して下さい。

Biz人 編集部

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