会計業務を行う上で非常に重要であり、簿記の5要素の1つでもある費用。お金を使った=費用=マイナスではありません。正しく費用を計上することで所得を減らすことができ節税につながるからです。利益を最大限引き出せるよう正しい知識をつけていきましょう。
簿記の基本。知らないいと恥ずかしい減価償却費の会計処理とは?
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- 監査法人勤務者
減価償却費の会計処理
簿記の減価償却費や有価証券評価損・商品評価損は、”気づきにくい”からこそ、会計処理は要注意
今回は普段生活しているうえでは意識することのない会社経営ならではの費用、その名も【無音費用】について見ていきましょう。
※一般費用や無音費用は筆者のオリジナル用語です。
※勘定科目は簿記で一般的に使用されているもので説明していきます。複数の名称がある勘定科目もありますのでご了承ください。
ここでは各費用のイメージを持ちやすいよう、『一般費用』と『無音費用』という2つのカテゴリに分けてみていきたいと思います。
一般費用:
旅費交通費や通信費、保険料など何かを購入したりサービスを受けたりする際に発生するものや公的料金などがあります。こちらは家計簿でもよく使用されるのではないでしょうか。販売する商品を購入した時には(仕入)という勘定科目が使用されますがこちらも一目瞭然で費用とわかるので一般費用に分類しています。
無音費用:
現金や預金を使ったわけでもなく、掛けで購入したというわけでもないのにいつの間にか発生している費用が会計上ではたくさん出てきます。この無音費用をどれだけ正確に把握できているかが会社経営の成功を左右するといっても過言ではないでしょう。
今回は無音費用の中から代表的な3つの費用を解説していきます。
減価償却費は、会計処理上は設備購入タイミングと発生タイミングがズレる費用
この言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。減価償却とは固定資産の価値は年月が経つにつれ減少するという考えに基づき計上する費用です。ここでは、減価償却費を無音費用として考えます。
例えば、会社で使用する目的で300万円の新車を購入したとします。この車は5年後も300万円の価値があるといえるでしょうか。答えはNOです。いくら綺麗な状態で丁寧に使用したとしてもその価値は落ちていくものです。中古車として売った時購入した金額で売れることはほぼないと言えるでしょう。建物やパソコンなどの備品、特許権などの無形固定資産も同様です。※一部対象外の固定資産もあります。
この価値の減少を予め決められた耐用年数で費用として計上するのが減価償却費なのです。
例)車両300万円を定額法(毎年同じ金額を計上する方法)、耐用年数5年で残存価格(耐用年数経過後の帳簿価格)0円としたとき、300万円を5年で割った60万円を1年の減価償却費として計上します。
※耐用年数や償却方法については詳しく別記事で解説予定です。
有価証券評価損・商品評価損の会計処理は突然やってくる。気づかないうちに生まれている費用。
こちらはあまり馴染みのない言葉かもしれません。株式などの証券を保持しているという方はピンときているでしょうか。ここでは、有価証券評価損・商品評価損を無音費用として取り扱います。
有価証券は皆さんご存知の通り時価で取引されています。つまり購入した時の値段と売りたい時の値段は変化しており、この差額によって利益を出すのが証券取引の1つの目的でもあります。
有価証券評価とは毎年決算日の時点での保有株式の価額を購入価額と比較し損益計上するというものです。有価証券は保有目的によって大きく4つに分類されますが(詳しくは別記事で解説します)評価損益を計上するのはその中でも売買目的有価証券と呼ばれるものです。その名の通り売買してその差額で利益を出すことを目的としているので時価が非常に重要になってきます。
例)売買目的でS社の株式を1株あたり1000円で100株購入し保有している。本日、決算日となり、S社株式は1株990円となっている場合、1株当たり10円の下落×100株で計1000円を有価証券評価損として計上し、売買目的有価証券(資産)を減らします。
尚、逆に株式の価額が上昇していた場合は有価証券評価益(収益)として計上します。
商品も同様で市場価値が存在します。100円で仕入れた商品が決算時に90円の市場価値となっていた場合10円の商品評価損を計上し、商品(資産)を減らします。考え方は有価証券と同じですので一緒に覚えましょう。
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