会社は、労働基準法やその他企業運営に関わる法律・法令を守りながら経済活動を行う義務があります。そのためには、就業規則や今ある法律・法令を見直すことはもちろん、それに則った正確な労務管理が欠かせません。
今回は、労働基準監督署に寄せられる相談として多いものをピックアップしますので、リスクマネジメントに役立てていきましょう。
会社は、労働基準法やその他企業運営に関わる法律・法令を守りながら経済活動を行う義務があります。そのためには、就業規則や今ある法律・法令を見直すことはもちろん、それに則った正確な労務管理が欠かせません。
今回は、労働基準監督署に寄せられる相談として多いものをピックアップしますので、リスクマネジメントに役立てていきましょう。
労働基準監督署は、賃金・労働時間・解雇など法令違反に関する相談を受け付けている場所です。原則誰であっても相談できるため、相談そのものを止めることはできません。
一方、会社にとって「労働基準監督署に相談される」というのは、それなりのリスクを伴います。
法令違反の可能性があると疑われるとき、労働基準監督署は事前に予告なく「臨検(立ち入り監査)」ができます。雇用契約書や労働条件通知書、タイムカード、給与明細などをその場で全て調べる監査であるため、ほとんどの場合、通常業務の多くがストップしてしまうでしょう。
その後是正勧告書が出されれば、企業名が公表されてしまいます。ニュースになったり、取引先・顧客に多大な迷惑・損害を与えたりするリスクがありますから、日頃からの対策が欠かせません。
今回は以下のよくある事例について紹介します。
・残業代について
・パワハラ・セクハラについて
・休暇について
・賃金や待遇について
・採用・退職について
残業代に関する規定がない、残業代が正しく支払われないなど、残業に関する相談は特に多いといわれています。
サービス残業が当たり前に行われる社風であったり、タイムカードを押してから残業するような圧力があったりする場合は特に従業員の不満が高まりやすく、会社に改善を訴える前に直接労働基準監督署に相談するケースが増えています。
労働基準法第32条では、「労働者に1日8時間、週40時間を超える労働をさせてはならない」と定められています。これを超える場合は割増した賃金(残業代)を支払う必要がありますので、1分単位で労働時間を管理できるよう管理方法を見直しましょう。
パワハラやセクハラに関する相談も増加傾向にあります。
男女雇用機会均等法においてセクハラが防止されていることに加え、2020年6月に改正労働施策総合推進法(通常パワハラ防止法)が施行されたため、特に注目度が高まっています。
仕事のやり方や流儀を正しく教えているつもりでも、「過剰なプレッシャーをかけられた」「自分のやり方を全て変えようとするのは人格否定だ」と受け取られることもあるでしょう。業務マニュアルを整備して誰が教えても同じクオリティになるよう整備したり、1人の上司だけに依存しない人事評価体制を作ったり、会社を守る方策が必要です。
有給休暇が使いづらい、看護休暇や特別休暇の制度が形骸化している、などの相談もあります。
会社を休んだ場合はその分どこかで穴埋め出勤しなくてはいけない、代わりに出勤してくれるメンバーがいなければ絶対に休めないなど、会社ごとのオリジナル制度に疑問を持ち、相談してくるケースも多いものです。
有給は労働基準法第39条にて、介護休暇は育児・介護休業法台16条にて定められている制度ですが、特別休暇に関しては福利厚生の一環であるため、必ず設ける必要はありません。就業規則を見直すと共に、法律に違反するような内容でないか、取得を妨げる圧力がないか確認していきましょう。
2020年4月1日から、働き方改革の一環として「同一労働同一賃金制度」が適用開始されました。中小企業への適用は2021年4月1日を予定していますが、ニュースで頻繁に取り上げられたことにより、自分の待遇が適正なのかどうか疑問を持つ人も増えてきました。
結果として、「正社員と同じ仕事をしているのにパートの給料が低いのは何故か」「あの人より仕事をしているはずなのに賞与が低かった」などの相談が寄せられています。
正規雇用・非正規雇用に関わらず、人事評価制度をしっかり作っておくことが重要です。
内定取り消し、退職勧告や退職時期の調整などでトラブルになり、労働基準監督署へ相談に行く人もいます。
内定を取り消したり退職勧告したりするのであれば、労働基準法第20条に従い、30日前の予告もしくは30日以上の解雇予告手当を支払う必要があります。退職日をなるべく会社側の都合に合わせたい時も、「規則で決まっているから」と一蹴することなく、なるべく従業員の希望に寄り添う姿勢を見せましょう。社会保険料の請求タイミングや健康保険の切り替えなどを理由に「本人にもメリットがある」ことにフォーカスを当てれば、退職日交渉は無理なく進められます。
また、パワハラ・セクハラ・サービス残業などを理由に会社都合退職を求めてくるケースも想定できます。他の項目と併せてチェックしながら、予防策を取りましょう。
就業規則や法律のチェックを欠かさず行っていたとしても、労務トラブルを完全になくすのは難しいものです。
困ったときは社会保険労務士や弁護士に相談したり、会社側から労働基準監督署に相談したりするのも1つの手段です。「従業員からこのような相談があったが、会社としてどう対処すればいいか」と聞けば、法律・法令に則ってホワイトな線引きをしてくれるでしょう。
誠意ある対応を心掛ければ、労働基準監督署からの心証を悪くすることもありません。先回りして対処できるよう、スピード重視で動くことが肝心です。