うつ病で仕事が難しい社員へ会社は何をすべきか? 職場が配慮すべきことは?復職は?
うつ病などメンタルヘルス不調を原因として休職した従業員が、その後復職できなくなったり、復職しても短期でしてしまったりするケースは多いものです。
独立行政法人労働政策研究・研修機構による統計調査では、メンタルヘルスで休職した従業員の42.3%が退職に至っており、継続的な就業ができていない現状が浮き彫りにされています。
今回は、うつ秒で休職する社員への配慮ポイントと紹介したうえで、会社として打てる対策を解説します。
うつ病の特徴を理解し、社員に仕事を休ませる
まず欠かせないのは、従業員本人への配慮です。目に見えぬ辛さを抱えている人に無理なプレッシャーを与えないよう心掛け、会社としても本人としても無理なく休職・復職に入れるよう対策していきましょう。
休職にむけて、社会保険料の徴収方法を相談しておく
産前産後休暇や育児休暇中は社会保険料の免除制度がありますが、介護休暇やうつを始めとする私傷病休暇中は、これまでと変わらず社会保険料が発生します。
うつ病の人の一部には、「毎月決められた日付に決められた金額を振り込むのは難しい」と感じる人もいます。会社に振り込んでもらいやすい日付やフローを相談し、金銭的なトラブルが発生しないよう対策しましょう。
また、傷病手当金を受給するのであれば、会社の口座を受け取り先として指定するのもおすすめです。
健康保険協会から会社に満額振り込まれ、そこから社会保険料を徴収し残った額を会社から本人に振り込む、というルートを辿るため手間が1つ増えますが、確実に社会保険料を回収できるようになります。
仕事に復帰前の面談は欠かさずおこなう
嘱託産業医にも同席を依頼したうえで復帰前面談をおこないます。
正社員としての復職ができるのか、週何回・1日何時間働けるか、通院のペースに合わせて休みたい日はないかなど、総合的にヒアリングを重ねます。
しかし、うつ病患者のなかには、自分の特性や配慮してほしいポイントをどこまでアピールすればいいか分からず、聞かれたことにだけ答えて終了してしまうケースも少なくありません。
事前に聞きたい項目をリストアップし、Yes or No形式で答えてもらいながらヒアリングするのもよいでしょう。
また、産業医が用意できない場合でも、人事・労務の担当者や役員など、複数回の面談を行うのがおすすめです。
直属の上司に全て一任してしまうと、実は上司からのパワハラが原因でうつになった、特定の職務内容・勤務地・勤務時間帯が嫌なことを言い出しにくい、という場合にミスコミュニケーションが発生する恐れがあります。
うつ病の社員がでてしまったら・・・会社としての大事な準備とは?
なるべくトラブルなく復職し継続的に働いてもらうのがベストではありますが、「頻繁に休職と復職を繰り返されると困る…」という人事側の声も耳にします。同僚や後輩への影響やモチベーションダウンにつながるのではないかと悩んでしまうこともあるでしょう。
ここでは、従業員個人への対策だけに留まらない、会社としての対策を紹介します。
就業規則上で休職期間・回数を決める
休職の期間や回数の定めに法律上の縛りはなく、各企業が自由に設定できる項目として認められています。
「私傷病による休職の場合、会社が特に必要と認めた場合を除いて最大で3ヶ月までとする。また、同じ理由での再休職は1度までとし、期間を超えても復職できない場合は自然退職とする」
というように、あらかじめ就業規則にて定めを設けておきましょう。2年間休職し、1ヶ月だけ復職し、また1年休職する、というループを防ぐ目的もあります。
退職を促すのは避けるべき手段。それでも必要になるまえに、就業規則の見直しを!
「うつ病の社員はうちにそぐわない!」というように、うつだから退職、と強引に勧告することは労働契約法第16条に違反してしまいます。うつ病を抱えながら社会で働く人もたくさんいることを考えると、あくまでも「仕事ができなくなってしまったから退職」という道筋を作る必要があります。
就業規則上で明確に休職要件を定めていない場合でも、労働基準法大81条にもとづき、3年を超えた長期間療養している場合は打ち切り保証料を支払うことで解雇できますが、社会保険料含め、会社に大きな痛手が発生することは間違いありません。
どうしても復帰が難しそうな場合、就業規則や法律の定めをこえてから初めて退職勧告をおこない、損害賠償や労働基準監督署からの是正勧告対策としておきましょう。
まとめ
メンタルヘルス休職は、怪我や目に見える病気と異なり周りの人にとっては症状や辛さが分かりづらく、会社としてどこまで配慮したらいいか迷うポイントでもあります。
就業規則による定めを見直しながら、無理なく休職・復職してもらえるよう、社会保険料の徴収方法や復帰時の面談に配慮して手続きを進めましょう。
また、復職後の部署や仕事内容に無理が生じないよう、積極的に提案していくことも大切です。