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【要約】それっておかしくね?出前館のマーケティング思考|ビジネスマン・コンサルタントには必須の知識を解説!

テーマ
出前館のマーケティング思考
監修
読書マニア

出前館のTVCMを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。フードデリバリーサービスを展開する出前館は、テレビでも様々な広告を打っていましますが、その中でも2020年に放送されたダウンタウンの浜田氏が出演したCMは話題を呼びました。

「でっ、でっ、出前館、出前がスイスイスーイ♪」というフレーズを浜田氏が連呼するTVCMにより、出前館の認知率は大幅にアップしたと言います。しかし、このTVCMの企画段階では、費用がかかりすぎるという理由で社内では猛反対にあったようです。それでも出前館のCOOである藤原彰二氏はこの企画を推進し、大幅な認知率上昇、売上増加という成果を手にしました。

今回紹介する書籍、『それっておかしくね?「素朴な問い」から始める出前館のマーケティング思考』では、著者の藤原彰二氏が出前館で実践しているマーケティング思考について解説しています。

 

【著書情報】

タイトル それっておかしくね?「素朴な問い」から始める出前館のマーケティング思考
著者名 藤原彰二
出版社 ダイヤモンド社
ページ数 250ページ
発売日 2021/19/05

 

【章立て】

第1章:古い体質を一掃せよ

第2章:デリバリー戦国時代に立ち向かう

第3章:「再現性のない広告はいらない!」出前館のマーケティング

第4章:「それっておかしくね?」の原点

第5章:チャレンジする人が常に”正しい”

第6章:DX時代のフードデリバリー

 

著者のキャリア紹介考え方の原点

本書の著者である藤原彰二氏は、2020年から出前館でCOOを務めている人物です。著者の経歴は、元プロキックボクサーと非常にユニークです。高校生までは野球一筋、大学になって始めたキックボクシングでプロになったものの、22歳で引退しています。

その後はWEBマーケティングの世界に足を踏み入れました。広告運用担当として株式会社フルスピードに入社し、マーケターとして問題解決に邁進します。そしてフルスピードを退職後、トランスコスモスという大手広告代理店に転職し、ここでも広告運用担当として当時のトランスコスモスが弱い分野であった求人カテゴリーを開拓します。

トランスコスモス退職後は友人が経営する小さな会社に入社します。メディア事業と広告事業を担当し、売上1億円を約10倍の9億5,000万円にしたと言います。その後、大手広告代理店であるオプトに入社し、1年アメリカに赴任しています。様々な新規ビジネスを立ち上げたいという思いから、帰国後はLINEに入社し、ビジネスの立ち上げを手掛けました。そしてその後、出前館にCOOとして着任しています。

上記のようなキャリアの中で、著者が大切にしていることは、必死に考え続けることを辞めないことだと言います。マーケターとは問題解決業であり、頭の中にある疑問を無視してはいけません。著者は、毎日ひとつは問題を解決しなければ寝ないというルールを自分に課しているそうです。そのために、疑問を持ち続けること、すなわち「それっておかしくね?」と考える視点が大切であると言います。

出前館における挑戦

出前館のCOOに就任した著者は、「それっておかしくね?」の考え方で様々な改革を行います。その一つが組織改革です。著者の着任時、出前館はリーダーシップの強いトップダウン型の組織で、部署間の横の連携が一切なかったと言います。トップの判断がなくては何も決められず、社員がイキイキと働けていない環境に疑問を持ちました。

そこで著者は部署横断のプロジェクトを複数立ち上げ、部署間の横連携が可能な体制を構築しました。そうすることで、部署間で協力して競合に立ち向かうことができるようになったと言います。

また、人材採用の方向性や人材の評価制度にも改革のメスを入れていきます。IT化、デジタル化が進んだ現在では、「尖った人材をどれだけ抱えられるか」が競争に打ち勝つために重要になっています。そこで出前館では、尖った才能を持った人材を積極的に採用し、100回失敗しても1回ホームランを打つことを求めるようになります。

そして、人材の評価制度についても尖った人材を適切に評価する制度に変革を加えています。従来の出前館では、一般的なMBO(目標管理制度)を採用していましたが、これは「平均の人」を作り出す制度だと言います。出前館ではカリブレーションと呼ばれる手法を導入し、この方法の下で決まった給料の原資の配分を議論して決定します。従来は年功序列で給料が割り振られていましたが、社員の仕事の対価に応じて配分を決めるようになりました。

著者が出前館でこのような改革を実施したのは、出前館の属するフードデリバリー業界の競争が白熱しているからであると言います。ウーバーイーツを始めとした海外資本の競合が攻勢を強め、長年日本でサービスを展開する出前館は苦境に立たされていました。そんな環境下では、競争に生き残るために社員がイキイキと働く会社への変貌が必要でした。現状に対して「それっておかしくね?」と感じた著者は、人事制度や採用に対しても口を出し、変革に導いています。

出前館のマーケティング思考

著者はCOOとして出前館の人事制度改革なども行いましたが、本業はマーケターです。本書では、著者が出前館で実施したマーケティング施策についても紹介されています。

著者によると、令和時代におけるマーケティングのマストスキルはIDマーケティングであると言います。IDとは、各利用者の属性および利用データのことです。いつ、どの店で、どんなメニューを、どんな時間に注文したか、といったデータを徹底的に管理し、適切な販促施策を打つことがIDマーケティングです。出前館では、IDマーケティングに注力するためにデータ基盤を刷新し、あらゆる経営判断の基準を数字的根拠とデータに求めます。全ての施策の継続や中止についても感情や感覚ではなく、数字の良し悪しで判断が下されます。

また、出前館では「出前館」というキーワードをグーグルで直接検索してくれる人の数を増やすことに注力しています。「出前館」というキーワードで検索するユーザーは、他のキーワードで検索してサイトにたどり着いたユーザーよりも購入率が10倍高いというデータの裏付けがあってのことでした。そこで、「出前館」という指名キーワードの検索数を増やすための施策がTVCMです。

TVCMの大目的は、出前館という名前を消費者に覚えてもらい、ブランドの検索数を増やすことでした。そのため、「出前館」というブランド名が歌詞に入る、「うたもの」である必要があったと言います。そして、親しみやすい曲調である『スーダラ節』をダウンタウンの浜田氏が演出することで、世間の好反応を呼び起こしました。

このCMの結果、57.2%だった出前館の認知率は79.9%に増加し、指名検索数も飛躍的にアップしました。

DX時代のフードデリバリー

2021年8月期第2四半期決算の時点で出前館の決算は、売上高が前年同期比2.7倍の104億円、営業損益が83億円の赤字でした。しかし、出前館は売上を増やすための投資フェーズを続ける必要があると言います。TVCMなどに投資を行い、出前館の名前が日本中に浸透し、ほとんどの飲食店と契約を結ぶことができれば、投資額は減り利益が出る体質に変わります。

出前館がビジネスを行うフードデリバリー業界は、ドアダッシュ、ウーバーイーツ、グラブハブなどの海外企業がグローバルで強さを発揮しています。オンラインフードデリバリー業界が発達しているアメリカ、中国、インドなどの国で高シェアを誇るのもこれらのグローバル企業です。

しかし著者は、出前館はこれらのグローバル企業と戦い、世界一になることができるロジックはあると主張しています。海外勢は高い技術力を持っているにも関わらず、「なぜこれをやらないんだろう?」と感じることも多いようです。

出前館では、他社が持っていない強みを伸ばすことで、市場での戦いに打ち勝とうとしています。レビューの充実や、大手ピザチェーンに代表されるような自前の注文システムを持つ企業の仕組みに合わせられることは、長年日本市場でビジネスを行う出前館の強みです。それらの強みを充実させ、海外勢に劣らないデリバリー体制を整えることができれば、海外勢に負けないということです。

海外における市場を見ていると、フードデリバリー業界におけるプレイヤーは3社に収まっています。そこで、出前館は生き残りをかけて戦うために多額の投資を行い、社内文化の改革に手を付けています。本書では、そんな出前館における取組やマーケティング思考がより詳細に解説されています。

Biz人 編集部Biz人 編集部

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