ブックレビュー

【要約】『もし部下が発達障害だったら』|特徴と職場での支援法

テーマ
部下が発達障害
監修
管理本部長補佐

発達障害、一度は聞いたことがある言葉です。私の職場にも発達障害ではないか?と思われる後輩がいます。『仕事が遅い』『ミスが多い』『急に休む』『上司に高圧的に反発する』こういった人物なのですが、この特徴をみてどう思いますか?私以外の人たちはこう言います。「仕事ができないヤツだ」と。

入社当初は周りの仲間も熱心に仕事を教えていたのですが、あまりにも覚えが悪い、言ったことを忠実に行わない、すぐ忘れる。その繰り返しで、教えても仕方ない、あきらめて放置。そんな状態になっています。

しかし、彼は発達障害ではないか?と考えることで、すべての行動に理由がつきます。

では、発達障害ではないか?と仮説を立てた後どのように行動していけばよいのか、本書を参考に発達障害への理解を深めていきまそう。

 

【著書情報】

タイトル もし部下が発達障害だったら
著者名 佐藤 恵美
出版社 ディスカヴァー・トゥエンティワン
ページ数 202ページ
発売日 2018/3/25

【章立て】

序章:もし部下が発達障害だったら

第1章:「発達障害と白黒はっきりさせることは難しい」

第2章:発達障害の特徴を理解する

第3章:職場で起こるさまざまな問題

第4章:【事例から学ぶ】上司はどう対応したらよいのか

第5章:職場として発達障害にどう関わるか

 

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発達障害の特徴とその活かし方

『発達障害は脳機能における発達のアンバランス』私たちの脳には、見る、聞く、言葉を話す、書くなどの機能、考える機能、感情をつかさどる機能など、実にさまざまな機能があります。また、論理的・科学的思考もあれば、直感や創造性、空間の把握など、考える機能もいろいろです。 人の顔が皆違うように、こうした脳の複雑な機能にもまた、それぞれ少しずつ違う特徴があります。それが時に「個性」と呼ばれることもあるでしょう。しかし、 これらの脳機能の発達におけるアンバランスが生まれつき顕著であるために、社会生活に様々な困難をきたしてしまうのが発達障害です。

この文をみてわかる通り発達障害とは『個性』と認識するのが良いです。発達障害は生まれ持った個性なので、他人からの指導で改善されるものではありません。ではどうするか?発達障害と思われる人の個性を尊重し、できることだけをやらせて、できないことはやらせない。これに尽きると私は考えます。また『上司に高圧的に反発する』という事例を出しましたが、これには理由があります。発達障害の人は、そのマイナス部分をフォローするためのスキルを身につけていきます。それを『代償的機能』といいます。代償的機能は、苦手なことを自分なりにカバーしようとして獲得したやり方ですから、本来の特徴を抑えることや、代償的機能を動員することは、本人が自覚している以上に多大な労力を要し、ストレスがかかります。 「過剰に適応」しようとして「適応できなくなる」というのも、こうしたことが影響していると考えられます。

このように、自分自身のマイナス部分を無意識にフォローするがゆえに疲弊し急に休むといったことが起きるのです。本人も無意識で行って疲弊し、周りの人も対応に困って疲弊していくので、どうにか解決策を見つける必要があります。

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職場における発達障害への対応策

発達障害の可能性があると仮説を立てた後、上司としてその部下にどう対応していくかが問題です。まず、部下は自分が発達障害であると自覚していない場合がほとんどです。

つまり「わからないことがわからない」そのような状態が続いていると考えていいでしょう。発達障害の人とその他の人とでは、確実に感覚と認識のズレが生じています。そのズレをお互いに理解していくことが重要です。具体的な方法としては、定期的にブリーフィング(定期報告会)を行うことが良いでしょう。

携わる業務によって期間は異なりますが、3時間ごと。半日ごと。1日ごと。1週間ごと。とにかく定期的に進捗の確認を行いましょう。また、その進捗が思わしくなかった場合は、『なぜ、そうなっているのか』というのを本人と一緒に考えましょう。

上司が「〇〇すべきだ」というべき論は部下には通用しません。より具体的に、本人が確実に理解できるよう、論理的に話す必要があります。「なぜこうなっているのか?」これをお互いに理解できるようブリーフィングを行いましょう。

 

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知っておきたい「合理的配慮」

「合理的配慮」とは、障害のある人から何らかの配慮を求める意思表示があった場合に、日常生活や社会生活で受けるさまざまな制限をもたらす原因となる社会的障壁を取り除くために、個別の状況に応じて行われる配慮を言い、事業所の自主的な取り組みを促しています。

障害のある人とは、知的障害、身体障害、精神障害に加え、発達障害のある人も含まれます。そして、障害者手帳を持っている人だけでなく、社会的なバリアにより日常生活や社会生活に制限を受けているすべての人が対象となります。これは、法律上の「安全配慮義務」に紐づくものです。「安全配慮義務」とは、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、使用者において配慮する義務のことです。

障害がうたがわれる場合は、本人も上司も職場の仲間も全員が疲弊する状態になります。なので、本人が自主的に発言して配慮してもらうようにするのがベストだと思いますが、発達障害の場合は自分自身で発達障害と気づくことが難しいですし、認めたくない場合もあります。その場合は、上司や周りの仲間が気づいて配慮を促すのが良いと考えます。『できないことはやらせない、できることを全力でやってもらう』これでいいのです。法律で定められていることなので、自信をもって行動しましょう。

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おわりに

『発達障害は個性』このような認識で皆が行動すればなにも問題はない、そう考えます。すべての人間がみな同じように行動できるはずがない、発達障害の人はできる出来ないの凹凸が激しいだけなのです。『できないことはやらせない』これをまず実行してみるのが一番簡単です。そのうえで、何が得意で何ができないのか、真剣に本人と向き合いましょう。上司も困っているように本人も困っているのです。また、大切なことは「配慮」をできるだけ「特別なことにしない」ことです。 「特別なことにしない」とはどういうことでしょうか。ひとつは「配慮することによって、本人の生産性が 上がる」というアウトプットを意識することです。上司は部下にアウトプットさせることが業務ですから「その部下に必要な方法でアウトプットさせることである」ととらえれば、配慮もマネジメントのうちであると腑に落ちることができると思います。さいごに、この本を読むことによって発達障害について理解が深まるとともに、自分は発達障害ではないのか?と気づく人もいると思います。自己理解が出発点です。その個性を理解し、長所を生かせるように行動しましょう。

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Biz人 編集部

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